現在のわが国のコンシューマー向けPCで、CPUに何を使うかが大きな話題になることはあまりない。話題の中心はデジタルTVチューナーであったり、液晶ディスプレイであったり、光学ドライブが扱えるメディア(HD DVDやBlu-ray Disc)であり、CPUについてはCeleonやSempronといった廉価版のシングルコアが用いられるケースが大半だ。
HPは、TouchSmart PCを「PC」としてではなく、コミュニケーションツールとしてアピールしたいとしている。にもかかわらず、コミュニケーションツールのほうがPCの基本であるCPUスペックにこだわっているのは、不思議な気がするが、これもHP SmartCenterのためだという。確かに同社が披露したデモやプレゼンテーションでも、画面に表示されているのはHP SmartCenterの画面で、Windows Vistaのシェル画面を見た記憶がない。さすがに本機を起動しても自動的にSmartCenterが呼び出されることはないが、前面に用意されたボタンを押すことでワンタッチでSmartCenterを起動できる。
コミュニケーションツールとしてTouchSmart PCをアピールする際に、最も大きな障壁となりそうなのは、本機の販路だろう。現在、日本HPの販路は、ビックカメラで展開中の「HP Directplus Station」といった一部の例外を除き、基本的に直販のHP Directplusに限られる。これでは、購入前に実機に触れることができず、コミュニケーションツールとしての魅力をターゲットの家族にアピールできない。
この問題を解決するために、まず量販店(ビックカメラ)に設置した専用のキオスク(HP Directplus Station)での展示を行い、同時に本機にふさわしい販売パートナーも探したいとしている。キオスクの展示では、従来型のPCと同列の展示となり、コミュニケーションツールとしての魅力を十分訴求できない可能性があるからだ。
もう1つの問題は、価格だ。詳細はこちらの記事に譲るが、すでに述べたように本機はデュアルコアCPU、ハイエンドモデルは標準で4Gバイトのメモリを搭載、19インチのタッチパネル付き液晶ディスプレイなど、「PC」でないにもかかわらず、PCとしての基本スペックが非常に充実している。そのおかげで、エントリーモデルでも17万8500円と安価とは言い難い。他社製品では、同価格帯で液晶ディスプレイのサイズが小さくなる代わりに地上デジタル放送対応のTVチューナーを内蔵したモデルも存在したりする。
こういった価格の問題はHPでも認識しているが、今回は最初のモデルということもあり、価格より高性能に裏打ちされた使い勝手を優先したのだという。将来的にはプラットフォームを変えたり、液晶ディスプレイのサイズを小さくするなど、価格を重視したモデルの展開も検討したいとのことであった。
TouchSmart PCは、先行して展開した北米やアジア太平洋地域で成功を収めており、その原動力となった製品の品質やデザイン、パッケージには自信を持っている。HP TouchSmart PCは日本のライフスタイル(特に都市部)に合っているし、こだわりの強い日本の消費者にも気に入ってもられると願っているとヤン氏は語る。
これまでの日本HP製品とは一線を画したHP TouchSmart PCが国内でどのように受け取られるのか、販売施策を含めてその動向には注目したい。
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