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» 2007年10月25日 11時55分 UPDATE

林信行の「Leopard」に続く道 第4回:System 7で幕をあけた激動の1990年代(中編) (1/4)

MacとWindowsのシェア争いがメディアの最大の関心事だった時代、アップルは新たな地平を求めて奔走し、やがて自らを窮地へと追い込んでいく。

[林信行,ITmedia]

新たなパラダイムを模索した時代

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 前回に続きSystem 7で幕をあけた1990年代のMacの状況を振り返りたい。

 この時代、アップルは初代Macが切り開いたグラフィカルなUIに続く、新しいコンピュータパラダイムを求めて奔走する。しかし結局のところ、何一つ形を残せずに終わってしまった。中編では、このときアップルが求めた次世代コンピューティングの姿を紹介していく。

 なお、書くと長くなりそうな技術や機能、ソフトなどは、各見出しの最後にキーワードの形で書き並べておいたので、興味がわいた人はApple Wikiなどを使って調べてみてほしい。

次世代のコンピューティングが見えかけた時代

 旧Mac OSの時代は、OSの未来が大きく変わろうとしていた時代でもある。Mac OSそのものの成長に限界を感じ始めていたアップルは、さまざまな新OS開発プロジェクトを立ち上げていった。

 最も有名なのは1990年代中頃にリリース予定だったSystem 7の後継OS「Copland」と、それに続いてリリース予定だった「Gershwin」だ。

 アップルはこのCoplandの開発に社運をかけ、数百人のソフトウェア開発者を関わらせていたが、この新OSはなかなか完成せず、やがてアップルを窮地へと追いやった。

 数々の新機能を搭載するCoplandだったが、それら数百の新機能を支える最も重要なカーネルがなかなかいい質に仕上がらない。そして1996年にアップルはカーネルの自社開発をあきらめ、他社と提携する道を模索し始めた。Coplandの開発プロジェクトもお蔵入りにした。

 主力製品を自社開発できないということで、アップルの信頼は地に落ちた。

 結局、アップルは新興のBeとスティーブ・ジョブズ率いるNeXTを天秤にかけ、最終的にNeXTを買収することで決着をつけた(このあたりの話は、ぜひ筆者の連載「ジョブズ&カンパニー」を読んでほしい)。

 そう、Coplandはアップルの運命を大きく狂わせたOSだった。

 もっとも、万が一Coplandが完成していたとしても、このOSが活躍するのは1990年代いっぱいの予定だった。その後の計画については、人によっても意見が違う。

 一時期、アップルのロードマップにはGershwinの先にあるOSとして「KN」というコード名が書かれていた。この2文字は1980年代、当時のアップルCEOであるジョン・スカリー氏が作った“未来のコンピューターのあるべき姿を描いたコンセプトビデオ”「Knowledge Navigator」を連想させる。

 その一方で、ある記者説明会では、ジョン・スカリー氏自身が、Mac OSは2000年以降はPinkなどの“次世代OS”上でエミュレータを通して利用することになり、だんだんと存在感を薄めていくだろうと予言していた。現在の状況を見ると、“次世代OS”を指すものがPinkかMac OS Xかという違いはあるが、スカリー氏はMac OSの行く末を正しく予見していたようだ。

 ちなみにアップルはPowerPC開発でIBM社と提携したときに、2つの合弁会社を作っている。1つはTaligentという会社で、これはアップルが開発中だったオブジェクト指向技術を全面的に採用したOS、Pinkの開発を進める予定だった。

 もう1つはKaleidaという名前で、CD-ROMブームで爆発的に増えたマルチメディアコンテンツのためのプラットフォームを作る会社だ。マルチメディアコンテンツの開発環境に加え、マルチメディアコンテンツのプレーヤー(ハードウェア)の標準化も行なう予定で、同社のScriptXという技術で作成したコンテンツは、MacでもWindowsでも、専用のプレーヤーでも再生できることになる予定だった。

 実際、工業デザイナーの川崎和男氏がデザインを手がけた「Popeye」や「Sweet pea」というプレーヤーの開発が進められ、日本でも何人かのクリエイターがコンテンツを作っていた。どちらもオブジェクト指向技術を全面的に採用したことが特徴で、アップルはやがてオブジェクト指向OSの時代が到来することを見据えていた。

 その後、TaligentもKaleidaも開発事業が行き詰まり、計画が頓挫してしまったが、代わって採用された――そしてMac OS Xの元になった米ネクストのNEXTSTEPというOSは、TaligentやKaleidaよりも前に、完全オブジェクト指向環境を実現していた。

 アップルとIBMは、ほかにPowerPC用のUNIXを標準化するPowerOpenと呼ばれる連合などを立ち上げていたが、こちらもほとんど功績を残すことなく消えてしまった。

関連キーワード

Taligent、Kaleida、ScriptX、Popeye、Sweet Pea、PowerOpen Association、Versit


関連サイト

川崎和男氏Webサイト(PopeyeやSweet peaの写真がある):http://www.ouzak.co.jp/archive/pro.html


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