Leopardへの助走――Mac OS Xの誕生からTigerまで林信行の「Leopard」に続く道 第6回(3/4 ページ)

» 2007年10月30日 12時00分 公開
[林信行,ITmedia]

美しい「Aqua」の誕生

 Mac OS Xがコンシューマー用OSとして姿を現したのは2000年からだ。Macworld Expo/San Franciscoで、ジョブズは初めてコンシューマーに向けてMac OS Xの概略を話した。そしてこの時に目玉となったのが新しいユーザーインタフェースである「Aqua」だ。

 ジョブズが「美しくて舐めたくなる」と言ったインタフェースだが、PCの歴史においてOSがその機能や仕様で語られることはあっても、美しさで語られたのはこれが初めてではないだろうか。OSに求める品質に大きな変化が出てきた時代の節目とも言える出来事かもしれない。そしてこのときヒラギノフォントを搭載し、美しい日本語の表示にも対応した。しかも、それまでのPCでは表現できなかった文字も表現できるようになっていたのだ。

 アップルは同年の秋、フランスのApple Expo/ParisでMac OS X Public Betaという公開β版を販売する。

 公開βのOSを「販売」するというのも異例だったが、たかだか公開βにあれだけちゃんとしたパッケージが用意されたのも異例のことだろう。同OSは日本でも7年前の2000年10月21日午前10時から販売が開始され、2日間だけ用意された新宿高島屋の特設販売エリア「iStyle in Times Square」に大行列ができた。

 このPublic Betaは「アップルの将来はユーザーの声にかかっている」として発売されたOSだが、いまのMac OS Xとはかなり違うところが多かった。

 例えばメニューバーの中央にはリンゴマークが表示されているが、これはメニューではなく、ただの飾り。また、Mac OSの象徴でもあったアップルメニューがなくなるなど、それまでのMac OSとも大きく変わっており、ユーザーからは不満や不安、改善要望などが相次いだ。

 そして2001年1月のMacworld Expo/San Franciscoで、ジョブズはそうした要望すべてに目を通したと語り、多数の要望に応える改良を施した「Mac OS X 10.0」の新機能を紹介する。こうして完成したMac OS X 10.0は、2001年3月14日に世界同時発売となった。

Public BetaからTigerまで

 Mac OS X 10.0は、Public Betaに比べればかなり使い勝手が向上したものの、DVD再生やSuperDriveによるディスクの作成など、旧OSで実現していた機能が一部利用できなかった。また、Final Cut Proなどアップル純正のソフトウェアも利用できなかった。

 このため「Mac OS X 10.0」をPublic Betaの延長と捉える向きが多数で、新しもの好きのユーザー以外は敬遠することも多かった。

 しかし、半年後の9月にリリースされたMac OS X 10.1で、旧OSで実現していた機能がすべてMac OS Xでもできるようになったのに加え、アップル製ソフトもすべてMac OS Xに対応したことから、安定した動作を好むユーザーが徐々にMac OS Xへの移行を始めた。

 そして、翌2002年8月には「Mac OS X 10.2 “Jaguar”」というOSが出た。いまでも踏襲されている、ネコ科の動物のコード名をそのまま製品名に採用した最初のOSで、これまでにない新機能を積極的に採用し、150の新機能を搭載していた。

 iChatやRendezvous(現Bonjour)といった機能が追加されたのもここからだ。また、グラフィックスカードに描画処理を手伝わせる「Quartz Extreme」の機能が搭載され、多くの新機能が追加されたアップデートであったにも関わらず、インストールするとMacのパフォーマンスがよくなる、というのも画期的だった。

 Jaguarはアップルがかなり本腰を入れたOSで、このOSの登場にあわせて、市販のMacの起動OSが旧Mac OSからMac OS Xに切り替わった(それまでアップルはMac OS Xを発売していたが、市販のMacはまずMac OS 9で起動し、オプションでMac OS Xに切り替える必要があった)。

 続く2003年10月には「Mac OS X 10.3 “Panther”」というOSが出た。これはMac OS Xの進化をさらに加速させたOSで、150の新機能を搭載していた。iChatはビデオチャットに対応したiChat AVになり、Exposeもこのバージョンから搭載した。

 基盤技術も大きく進化し、パフォーマンスをさらに向上させたが、それにあわせてUSBポートを搭載しない過去のMacのサポートを打ち切った。このPantherは、発売してすぐにアップル史上最も売れたソフトの1つになった。

 ここまで1年おきに行われてきたメジャーアップデートは、その度に追加される機能の数も増え、Mac OS Xの基盤が進化を加速させているのだと実感させてくれた。しかし、次のOSのリリースには少し時間がかかった。

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