“45ナノ時代”のハイエンドデスクトップ――「Endeavor Pro4300」の実力を検証2007年PC秋冬モデル連続レビュー(2/2 ページ)

» 2007年11月16日 17時40分 公開
[坪山博貴,ITmedia]
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QX9650で強化されたパフォーマンスを検証する

 今回は試用機としてCore 2 Quad QX9650搭載製品と一緒に、Core 2 Quad QX6850を搭載した製品も借りることができたので、比較をしながらパフォーマンスを検証していこう。

 CPU以外の主なスペックは両モデルともに共通で、メモリが2Gバイト(1Gバイト PC6400×2)、HDDが250Gバイト×4(RAID 0)、グラフィックスカードがNVIDIA GeForce 8800 GTS(グラフィックスメモリは640Mバイト)、光学ドライブがDVDスーパーマルチドライブとなっている。OSはWindows Vista Ultimateだ。CPUがクアッドコアで、さらに4台のHDDをパフォーマンス重視のRAID 0で組んだ、さしずめ変則の4×4構成といったところか。

 まず、Windows エクスペリエンス インデックスは、HDDがRAID 0構成ということもあって見事に全項目「満点」の5.9。ケチのつけようがない結果だ。HDD4台でのRAID 0構成は一般的ではないとも言えるので、試しにHDDを1台のみにしてみたが、それでもHDDが5.6へ落ちただけ。スペックを考えると当然とはいえ、Windows Vistaは起動から何から極めて快適に動作する。

 次に定番のベンチマークテストを見ていこう。PCMark05はCPUがどちらでも9500台とほぼ誤差の範囲。ここでも念のためHDD1台でのスコアを計測しておいたが、こちらも8429とPCMark05としては非常に高いスコアだ。3DMark06ではQX9650が9822、QX6850が9702とスコア差は120だが、サブスコアを見ればその差のほとんどをCPUが稼いでいることが分かる。おもしろいのはFFベンチの結果で、誤差とは言えない差が出た。このソフトはマルチスレッドに対応していないため、その分ストレートにL2キャッシュの差が結果に影響したようだ。

PCMark05(画面=左)、3DMark06(画面=中央)、Vana'diel Bench 3(画面=右)

 L2キャッシュの拡大は一般的利用やゲームなどでは劇的な効果はもたらさないが、プラスの材料こそあれマイナス材料はほんどないことが確認できる。付け加えておくが、PCMark05と3DMark06で叩き出した10000に迫るスコアは、言うまでもなく非常に優秀だ。日常利用からヘビーなゲームユースまでほとんどストレスなく利用できる。

動画エンコードで比較する

ハイビジョン解像度のMPEG2(3分間)からSD解像度のMPEG2へエンコードした際に要した時間。2ファイルでの同時エンコードではQX6850が時間がかかっているように見える。念のため2度目を実行してみても同様の結果だった

 それでは、クアッドコアCPUの“有意義な”使い道と言われる動画エンコードではどうだろうか。ここでは、すでにSSE4命令も対応済みの「TMPGEnc 4.0 Express」を用いた。ソースはHDビデオカメラで撮影したハイビジョン解像度(1440×1080ドット)のMPEG2ファイル(3分間の映像)で、これを720×480ドット/9MbpsのMPEG2ファイルへ「画質重視」(2-pass)でエンコードを行わせてみた。

 結果から言えば、QX9650のSSE4の恩恵はさほど大きくないものの、QX6850との2次キャッシュサイズの違いははっきりと出た。特に2ファイルの同時エンコードでは明らかで、ちょうど2次キャッシュの利用効率がツボにはまったようだ(一方、4ファイル同時エンコードはHDDアクセスがオーバーヘッドになった可能性が高い)。いずれにせよQX9650で新たに追加されたSSE4命令と2次キャッシュの増加は、エンコード利用においては間違いなく効果があると言える。

 またCPUを“ぶん回した”時の発熱を比べるために、4ファイルの同時エンコード時のCPU温度とCPUファンの回転数を「SpeedFan 4.33」で監視してみた(エンコード時間の計測とは別に行っている)。スペック上では、QX9650に関してはTDPやTCaseなどはスペック上QX6850と変わっていないものの、発熱の低下は当然期待されるところだ。

 下の画像は同じ設定で4ファイルを同時エンコードし、10分程経過した時点でのCPU温度とCPUファンの回転数の推移。CPU温度はQX6850がほぼ75度で推移しているのに対し、QX9650はほぼ60度で推移と15度も低く安心感は高い。静音性に関してはQX9650、QX6850ともにほぼ1000回転と変化はなくCPUファンの動作音はほとんど聞こえてこなかった。従来製品同様に高いパフォーマンスと静音性のバランスのよさは変わっていない。

左のウインドウがCPU温度、右のウインドウがCPUファンの回転数。QX9650のCPU温度は最終的に60度程度で安定しており、ファンの回転数もほとんど変化はない(画面=左)。QX6850の温度は最終的に75度程度で安定した。ベンチマークテストの結果などを見る限り、動作に悪影響は出ていないが、QX9650に対して15度も高いのが分かる(画面=右)

クアッドコア時代でも変わらない、ハイバランスなハイエンドPC

 本機はケースデザインを旧モデルから踏襲するなど、目新しさにはやや欠けるものの、プラットフォームの変更に加えて、冷却機構も刷新しており、中身は大幅に手が加わった形になる。さしずめ「脱いだらスゴイんです」的なモデルチェンジだ。

 試用機のスペックはかなりリッチであったが、本機の魅力はハイスペックなだけではなく、こだわり抜いたケースや内部構造にもある。このケース、あいかわらずケースだけでも欲しいと思わせるできであり、ここまで思える製品はちょっと見当たらない。小規模サーバ用途にもよいし、個人利用であれば(保証の問題はあるが)ひかえめなスペックで購入して、後々パーツ交換でスペックアップしていくという“素材”としての資質も高い。電源ユニットは現時点でハイエンドCPUとハイエンドGPUを問題なく動作させているのだから、しばらくは問題ないだろう。

 本機はグラフィックスカードの選択肢が広いこともあり、DTPなどの特定用途を除くと、一般ユーザーにはゲーム向けモデルとも言えるが、この視点で見るとサウンドカードがBTOに含まれていない点がやや残念だ。カタログスペックではオンボードサウンド機能でも特に不都合はないが、単体サウンドカードの市場が残っているのを見れば分かるとおり、CPU負荷率の違いや最終的に出力される音質の違いから、この部分にこだわるゲーマーは多い。保証の問題まで考慮すれば、BTOでサウンドカードが選択できれば本機はさらに魅力を増すと思う。

 本機はこれぞ直販PCと言わんばかりにプリインストールソフトなども最小限だが、代わりにBTOの自由度は極めて高く、スペックはもちろん、デザインやメンテナンス性まで含めて、基本ハードウェアとしての魅力が高い。デジタル放送がどうの、一体型がどうの、とPCを語るのではなく、とにかく基本がしっかりとしたマシンを欲する人にとって、Endeavor Pro4300は非常に有力な選択肢である。

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