“ネイティブ”は“ネイティブ?”に勝るか──Phenom出荷直前レビューイマドキのイタモノ(2/3 ページ)

» 2007年11月22日 09時00分 公開
[笠原一輝,ITmedia]

AMDの新しいプラットフォーム「AM2+」

CPU-Zで表示したPhenom 9600の情報。コードネームはAgena、3次キャッシュに2Mバイトといった情報に加え、名称は「Phenom “X4”」と表示されている

 Phenomでは、HyperTransportとメモリコントローラにも変更が加えられた。具体的にはHyperTransportの動作クロックが速くなり、メモリコントローラはDDR2-1066に対応した。

 AMDのCPUは、メモリコントローラをCPU側に統合しているが、PCI Expressなどの周辺バスと接続するチップセットとは「HyperTrasport」という高速なバス(HTバス)を利用して接続している。Athlon 64 X2では1000MHzのHTバスをサポートしていたが、Phenomではさらに高速なHT 3.0仕様に対応した。今回登場するPhenom 9600とPhenom 9500では、1800MHz(実際には上り下りのそれぞれで1800MHzなので、合わせると3600MHz相当になる)のHTバスをサポートしている。

 メインメモリも従来のAthlon 64 X2ではDDR2-800までとなっていたのが、Phenomではさらに高速なDDR2-1066をサポートする。ただし、メモリの標準化を策定するJEDECでDDR2-1066の仕様決定作業が現在中断しており、最終的なスペックは未だ決定していない。このため、Phenom発表時点で正式なJEDEC仕様のDDR2-1066はリリースされておらず、当面、モジュールベンダが独自に保証するオーバークロックメモリを利用するほかない。このため、AMDでも現時点で正式にサポートするのはDDR2-800までとなる。

 また、HT3.0やDDR2-1066を利用するには、プラットフォーム側、つまりマザーボードを最新の「AM2+」プラットフォームへ変更する必要がある。AM2+プラットフォームというのは、CPUソケットに「Socket AM2」を採用したマザーボードで、かつ、HT 3.0やDDR2-1066などのPhenom以降でサポートされる新機能を搭載したプラットフォームのことで、CPUソケットそのもののことをさす言葉ではない。(前述のようにCPUソケットはSocket AM2のままだ)。

AM2 AM2+ AM3
Hyper Transport HT1.0/2.0 HT3.0 HT3.0
電力供給 シングル デュアル デュアル
VIDs パラレル パラレル/シリアル シリアル
温度監視 ダイオード ダイオード TSI(Thermal Sense Interface)
最大電力供給 95A(コアとNB) 110A(コア)/20A(NB) 110A(コア)/20A(NB)

 AM2とAM2+は互換性があるので、PhenomをAM2プラットフォームで、Athlon 64 X2をAM2+プラットフォームで利用することもできる。ただし、後者の場合には、AM2+でサポートされるHT 3.0やDDR2-1066などは使えないないので注意したい。それでも、すでに以前のCPUやマザーボードを所有していて、どちらか一方だけをアップグレードしたいというユーザーにはこうした互換性は価値があると言えるだろう。

各世代のCPUとプラットフォームの互換関係

 なお、AM2+プラットフォームではこのほかにも、CPUに供給する電力線が2つになったこと、VID(CPUの駆動電圧を決定する信号線)が従来のパラレルだけでなくシリアルにも対応したこと、さらには供給される電力容量が増えたことで、より高性能なCPUにも対応できるようになった。

 2009年に投入される予定の次世代プラットフォーム「AM3」では、DDR3がサポートされるなどさらに機能が強化され、45ナノメートルプロセスルールで製造される次世代CPUのDeneb(開発コード名、2009年に投入される予定)にも対応することになっている。なお、AM3に対応したCPUではDDR2に対応したバージョン、DDR3に対応したバージョンといった2種類の製品がリリースされる見通しで、DDR2バージョンのAM3プロセッサを利用すれば、AM2+マザーボードのみならず、AM2マザーボードでも将来のCPUを利用できる予定だ。

 このAM2+プラットフォームに完全対応(つまりDDR2-1066やHT 3.0を利用できる)したチップセットは、今後マザーボードベンダーからリリースされる予定だが、その最初となるのがAMDが自ら開発した「AMD 790FX」だ。AMDでは「Phenom」「AMD 790FX」「RADEON HD 3800シリーズ」といった3種類のコンポーネントからなるプラットフォームを「Spiderプラットフォーム」と呼んでいる。Spiderプラットフォームでは、専用のオーバークロックツールなど、新しい機能が提供される予定となっている。なお、Spiderプラットフォームに関しては別記事で詳しく紹介する予定なので、そちらも参照していただきたい。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月25日 更新
  1. ワコムが有機ELペンタブレットをついに投入! 「Wacom Movink 13」は約420gの軽量モデルだ (2024年04月24日)
  2. 16.3型の折りたたみノートPC「Thinkpad X1 Fold」は“大画面タブレット”として大きな価値あり (2024年04月24日)
  3. 「IBMはテクノロジーカンパニーだ」 日本IBMが5つの「価値共創領域」にこだわるワケ (2024年04月23日)
  4. 「社長室と役員室はなくしました」 価値共創領域に挑戦する日本IBM 山口社長のこだわり (2024年04月24日)
  5. Googleが「Google for Education GIGA スクールパッケージ」を発表 GIGAスクール用Chromebookの「新規採用」と「継続」を両にらみ (2024年04月23日)
  6. バッファロー開発陣に聞く「Wi-Fi 7」にいち早く対応したメリット 決め手は異なる周波数を束ねる「MLO」【前編】 (2024年04月22日)
  7. ロジクール、“プロ仕様”をうたった60%レイアウト採用ワイヤレスゲーミングキーボード (2024年04月24日)
  8. 「Surface Go」が“タフブック”みたいになる耐衝撃ケース サンワサプライから登場 (2024年04月24日)
  9. わずか237gとスマホ並みに軽いモバイルディスプレイ! ユニークの10.5型「UQ-PM10FHDNT-GL」を試す (2024年04月25日)
  10. あなたのPCのWindows 10/11の「ライセンス」はどうなっている? 調べる方法をチェック! (2023年10月20日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー