こいつは意外と使えるかも──実売2万円台半ばに落ち着いてきた「Radeon HD 3850」を試すイマドキのイタモノ(1/2 ページ)

» 2007年12月04日 11時45分 公開
[長浜和也,ITmedia]

 先日、AMD(ATI Technologies)から発表された、Radeon HD 3800シリーズは、Radeon HD 3870とRadeon HD 3850でラインアップが構成されていた。すでに、Radeon HD 3870の性能はこちらのレビュー記事で紹介しているが、今回は、発表当初は3万円弱とやや高めだったものの、その後、実売価格が2万円台半ばまで落ち着き、ようやく“ミドルレンジ”と言えるようになってきた「Radeon HD 3850」の単体構成と、CrossFire構成におけるパフォーマンスを、DirectX 10対応のゲームタイトルを用いたベンチマークテストで検証する。

 なお、ほぼ同時期に発表された、Radeon HD 3800シリーズと、CPUの「Phenom」、そして「AMD 7シリーズ」チップセット(特に最上位モデルのAMD 790FX)で構成される新しいプラットフォーム「Spider」の特徴でもある“4つの構成まで対応可能な”マルチGPU技術「CrossFireX」に注目が集まるところだが、評価作業時点で利用できた評価用のCatalyst(現行の最新バージョン、7.11に準ずるものとされている)では、3GPU以上の構成に対応していないとのことで、残念ながら従来通りの2GPUによるCrossFire構成で測定している。

 Radeon HD 3850の構成と仕様は、Radeon HD 3870のレビュー記事でも紹介しているように、上位モデルのRadeon HD 3870にほぼ準ずる。Radeon HD 3800シリーズそのものが、従来のRadeon HD 2000シリーズのハードウェアを継承し、そこにDirectX 10.1への対応や、省電力機能のPowerPlayの導入といった機能を拡張させた構成といえる。

 55ナノメートルプロセスルールを導入したRadeon HD 3850の構成トランジスタ数は6億6600万個で、その内部には統合型シェーダユニットを320個実装する。メモリバスは256ビット、インタフェースはPCI Express 2.0に対応する。先に紹介しているように、DirectX 10.1とシェーダモデル4.1をサポートするほか、デスクトップPC向けGPUとしては初めてとなる省電力機能「PowerPlay」を導入して、駆動電圧を負荷にあわせて動的に変更する。

 以上の仕様は上位モデルのRadeon HD 3870と共通だ。構成トランジスタ数とプロセスルール、実装するシェーダユニットの数が同じであることから、チップレベルでは、Radeon HD 3870もRadeon HD 3850も同じと考えていいだろう。

 両者の仕様で異なるのは動作クロックと搭載するグラフィックスメモリの容量ぐらいだ。動作クロックはコアクロックが670MHz、メモリクロックが830MHz(DDRのデータ転送レートで1.66Gbps相当)と、コアクロックで8割強、メモリクロックで7割程度にそれぞれ抑えられている。Radeon HD 3800シリーズは、プロセスルールの微細化やPowerPlayの導入などによって省電力が進み、外部電源もRadeon HD 2900 XTで8ピン+6ピンのPCI Express外部電源コネクタを必要としていたのに対して、Radeon HD 3800シリーズではどちらも6ピン1つですんでいる。クーラーユニットはRadeon HD 3870で2スロット厚タイプを採用していたが、Radeon HD 3850では、駆動クロックが低くなったこともあって1スロットタイプを搭載している。

評価に用いたRadeon HD 3850搭載のリファレンスグラフィックスカード
チップの構成はRadeon HD 3870とほぼ同じだが、動作クロックを低くしたおかげで1スロット厚のクーラーユニットを採用している

唯一の新世代“2万円台半ば”ミドルレンジの性能は?

 ベンチマークテストは、Radeon HD 3870のレビューに準じ、3DMark06とDirectX 10に対応するゲームタイトルを用いる。評価用システムもCrossFire構成を配慮してIntel X38 Expressチップセットを搭載するMSIの「X38 DIAMOND」を組み込んだ。Catalystも評価用に配布された同じバージョンを適用している。

 ゲームベンチにおける負荷条件もRadeon HD 3870のレビューと同様に、従来のフィルタリング設定におけるサンプル数の大小ではなく、DirectX 9モードによる動作とDirectX 10モードによる動作とで分けた。ただし、ディスプレイも“イマイタ”レビューではおなじみとなっているデルの30インチワイド液晶ディスプレイ「3007WFP-HC」であるが、ミドルレンジクラスのGPUということで、測定する解像度は「1280×1024ドット」「1600×1200ドット」「1920×200ドット」と、ハイエンドGPUの条件より低くしている。

 比較対象は、エントリーハイエンドといわれる「GeForce 8800 GTS」(ただし、まもなく登場するといわれている“G92”コアではなく、従来の“G80”世代)を選んだ。世代的にはGeForce 8800 GTを、価格的にはGeForce 8600 GTSを、新旧比較としてはRadeon HD 2600 XTを期待するユーザーもいると思うが、結論から先に言うと、GeForce 8800 GTにはまったく歯が立たず、GeForce 8600 GTSやRadeon HD 2600 XTに対しては、明確な差をつけたパフォーマンスをRadeon HD 3850は発揮している。パフォーマンスの比較としては、GeForce 8800 GTSと「いい勝負」をしているといっていい。ただし、ベンチマークテストによって、その優劣が激しく入れ替わっているので、そのあたりをグラフでチェックしてみたい。

3DMark06 3DMarks
3DMark06 SM2.0

3DMark06 HDR/SM3.0
3DMark06 Perlin Noise(SM3.0)

F.E.A.R.
World in Conflict Demo

Unreal Tornament 3 (vCTF-Suspense FlyThrough-PC)
Unreal Tornament 3 (DM-ShangriLa-FPS-PC)

Company of Heroes 1.7.1
Enemy Territory-QUAKE Wars Demo

Crysis Single Play Demo GPU_Benchmark

 3DMark06、そして、各ゲームタイトルのベンチマークごとに、優劣は異なるが、ゲームのベンチマークで見えてくるのは「DirectX 9でGeForce 8800 GTSに大きく引き離されるが、DirectX 10でいい勝負が出来るようだ」という傾向だ。DirectX 9で動作している「F.E.A.R.」と「Enemy Territory-QUAKE Wars Demo」では、DirectX 9で苦戦するRadeon HD 3850の状況が顕著に現れているし、「World in Conflict Demo」では、DirectX 10で善戦するRadeon HD 3850の姿を見ることができる。Radeon HD 3800シリーズでVsyncが無効にできないといわれている「Company of Heroes 1.71」では、DirectX 10における値しか有効なデータとして扱えないが、それでも、DirectX 10の測定値を見る限り、Radeon HD 3850の成績は良好といえる。

 ただ、ゲームタイトルによっては、「DirectX 10で頑張るRadeon HD」ではなくなる場合もある。その典型的な例が「UnrealTornament3」で、GPU負荷が比較的低いといわれている(UT3のTweakサイトでは“CPUのベンチマークに向いている”と説明されている)「Flyby」でも、エフェクトを多用してGPUの負荷が比較的高いといわれている「FPS」(従来の呼称でいうところの“bot”)でも、DirectX 10を利用したゲームタイトルなのにGeForce 8800 GTSが優勢だ。「Crysis Single Play Demo GPU_Benchmark」になると、逆にDirectX 9における動作でGeForce 8800 GTSを上回り、DirectX 10における動作で逆転されている。

 このあたり、ForceWareもCatalystも、最新のメジャーゲームタイトルに対して個別にチューニングを施している段階だけに(ForceWareは1つのゲームタイトルに対するチューニングが施されるたびにバーションを上げている)、少なくとも、この評価作業を行っている2007年11月中旬において、Radeon HD 3850とGeForce 8800 GTSにおけるゲームタイトルごとの優劣は流動的に推移する可能性が高い。

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