ここで示したデータで、「性能向上レートにおけるnForce 780i SLIの相対値」は、nForce 780i SLIとnForce 680i SLIとで、グラフィックスカードの枚数が増えたときの性能向上の効率を比較している。この値が、nForce 780i SLIに実装されたnForce 200によるスイッチング処理や“擬似的に”実現している「3つのPCI Express x16」の影響を知る参考になるものと思われる。
ベンチマークテストの結果をその値で比較した場合、nForce 680i SLIは単体構成と2枚構成においてほとんどのテストでnForce 780iを上回っている。nForce 780i SLIが逆転するのは、「F.E.A.R.」や3DMark06の3DMarksで3-way NVIDIA SLIを構成したときで、この事例を見る限りは「3つのPCI Express x16」が「2つのPCI Express x16+PCI Express x4」より優位であることが確認できるが、ほかの多くのベンチマークテストでは3-way NVIDIA SLIを構築してもnForce 680i SLIの優勢は変わらなかった。
Unreal Turnament 3の一部の条件以外では、その違いは数%程度なので、それほど致命的な問題とはならないが、3-way NVIDIA SLIのために登場したともいえるnForce 780i SLIだけに、もう少しはっきりとした性能の違いが出てこないと、「気分」以外の理由でnForce 680i SLIからの移行は勧めにくい状況ではある。このあたりの事情はnForce 200周りのチューニングが進むと改善する可能性はあるだろう。
ベンチマークテストの結果を数値として重視するユーザーには、3-way NVIDIA SLIは期待を裏切らない能力を発揮してくれる。ベンチマークレースに参戦する猛者なら、購入コストに怯むことなく挑戦していただきたい。すでに、GeForce 8800 GTXとnForce 680i SLIでNVIDIA SLIを構築しているユーザーなら、現実的なコストとそのコストに見合った性能アップを体感できるだろう。ただし、そのためには、2560×1600ドットを表示できるディスプレイは必須となる。
2006年のCeBITでNVIDIAが提唱した「XHDゲーミング環境」で推奨されていた2560×1600ドットで実用的なパフォーマンスを発揮できるGPU環境が、3-way NVIDIA SLIによってようやく用意されたといえる。コンシューマーゲームデバイスが1920×1080ドットという表示能力を可能にしている現状で、PCゲームは差別化を図るために2560×1600ドットのゲーム環境を整備しなければならない状況であるのは理解できる。しかし、そのために必要なのはGPUだけではない。3-way NVIDIA SLI、ひいてはPCゲームが存在しつづけるためには、低価格でかつ性能が高い30インチクラスの液晶ディスプレイの登場がより一層望まれるようになったいえるだろう。
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