AMDからのクリスマスプレゼント──「Phenom 9600 Black Edition」で遊ぶイマドキのイタモノ(2/2 ページ)

» 2007年12月25日 09時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]
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Black Editionの正体は「9900になれなかったPhenom」?

 オーバークロック設定における「動作認定」は、Athlon 64 X2 5000+ Black Editionのレビューと同じく、PCMark05のCPUテスト「Multithred #2」(File Decompression、File Decryption、Audio Decompression、Image Decompressionテストが4本のスレッドで同時に処理される)、Memoryテストの「Memory Read 16MB」、「Memory Write 16MB」、「Memory Copy 16MB」「Memory Latency−Random 16MB」、Graphicsテストの「WMV Video Playback」が完走したときとしたが、Phenom 9600 Black Editionでは、「CPU Mlutithred #2」が完走しない場合でも「System Multithred #1」(Video Encording、Audio Compressionが同時に処理される)をチェックし、さらに、これも完走しない場合は「System Multithred #3」(File Compression、File Encryption、HDD-Virus Sanning、Memory Latency−Random 16MBが同時に処理される)をチェックし、それぞれ「条件付完走」として段階的に結果を分けている。

 オーバークロックに関する手法については、Athlon 64 X2 5000+ Black Editionのレビューでも紹介した、OVERCLOCK WORKSに蓄積されている情報を参考にしている。Phenom 9600 Black Editionを購入してオーバークロックしたいユーザーは、ぜひ、OVERCLOCK WORKSのWebページを参照したいただきたい。

 この作業でも、そこで紹介されている「倍率を下げて、マザーボードのFSB限界を確認し、それから倍率を上げてFSBをちまちまと攻める」方法で、「今回評価で検証した」Phenom 9600 Black Editionのオーバークロック耐性を調べてみる。ただし、マザーボードが初期段階サンプルであることを考慮して、変更するのはFSBとクロック倍率のみとし、HyperTransportのクロック倍率やノースブリッジ、サウスブリッジ、PCI Expressバス、メモリバスなど、AMD OverDriveで設定できる細かい部位の設定は変更していない。また、駆動電圧も、CPUのコア電圧以外は手を出していない。

今回評価したPhenom 9600 Black Editionのオーバークロック検証の結果。動作が厳しいテストから完全不動まで、動作状況を色分けしている。細かいチューニングを施せば「色の薄い」レベルの条件で動作する可能性はある

 まず、倍率を定格の11.5倍から9倍に落とし、FSBを定格の200MHzから1MHz刻みで上げていったところ、早くも205MHz(CPUの動作クロックは1845MHz)あたりから限界が見え始めた。定格の駆動電圧におけるマザーボードのFSB耐性を205MHzと見当つけて、次はいよいよ倍率を上げてみる。12.5倍までは、FSB定格の200MHz設定で問題なく動作できるが、それぞれの倍率でFSBを上げていくと、ともに203MHz(CPUの動作クロックは、12倍で2436MHz、12.5倍で2538MHz)から「条件付完走」となり206MHz(CPUの動作クロックは、12倍で2472MHz、12.5倍で2575MHz)で再起動という状況になった。

 現在予定されている最上位モデルのPhenom 9900相当となる「13倍設定」では、Phenom 9600 Black Editionの定格電圧1.2ボルト、そして、Phenom 9900のレビューで用いたサンプルで設定されていた駆動電圧1.3ボルト(CPU-Zで表示した値は1.28ボルト)でもPCMark05は完走せず、やむを得ず、駆動電圧を1.45ボルトに上げることで定格FSB200MHzでは「完全完走」できた。

 電圧を上げた13倍設定でFSBを上げていくと、1.45ボルト設定でもPCMark05は「条件付完走」となる。そこで、駆動電圧を1.5ボルトに設定したところ、FSB202MHz(CPUの動作クロックは2626MHz)で「完全完走」、FSB203MHz(CPUの動作クロックは2639MHz)から「条件付完走」、FSB205MHz(CPU動作クロックは2665MHz)で「再起動」となった。

 なお、13.5倍設定であるが、電圧1.5ボルト設定でも、FSB200MHzで設定と同時に再起動しただけでなく、動作実績のあるCPUの動作クロック2498MHz(FSB185MHz)でも、設定と同時に再起動するなど、まったくまともに動く気配を見せなかった。そこで、今回使ったサンプルのクロック倍率限界は13倍と判断することにした。

PCMark05 System Multi#3 File Compression
PCMark05 System Multi#3 File Encryption

PCMark05 System Multi#1 Audio
PCMark05 System Multi#1 Video Encording
PCMark05 CPU Multi#2 File Decompression

PCMark05 CPU Multi#2 File Decription
PCMark05 CPU Multi#2 Audio Decompression
PCMark05 CPU Multi#2 Image Decompression


 マザーボードのFSB限界が202MHzとマージンが少ないこともあったが、倍率設定も定格電圧では12.5倍まで、1.5ボルトに上げることでなんとか13倍動作が可能だったというのが、今回評価したPhenom 9600 Black Editionの実情であったように思われる。

 記事の中で繰り返し「今回評価した」と述べているように、オーバークロック耐性は個体差が影響するものであるし、海外のWebニュースサイトでは「15倍設定の3GHz動作」も確認されているようだが、少なくとも、今回の評価作業で見せた挙動から考える限り、Phenom 9600 Black Editionは「定格の1.3ボルトで2600MHzが出せなかったPhenom 9900が、”9600 Black Edition”として生まれ変わったのかな」と思えなくもない。

 さらに付け加えるなら、この時期に登場したPhenom 9600 Black Editionは、B2ステップのPhenomに潜在している「TLB」(Translation Lookaside Buffer)の問題を、そのまま抱えている。

 それやこれやを考えると、Phenom 9600 Black Editonが登場した背景がなんとなく見えてきたりもするが、それはそうとして、Phenom 9600相当の価格で購入できるPhenomがPhenom 9900相当の性能を発揮できるのは間違いなさそうだ。「ミドルレンジ相当のコストでハイエンドクラスのパフォーマンス」というBkack Editionの法則は守られたわけで、エンドユーザーからすれば評価できるCPUといえる。

 Phenom 9600 Black Editionの登場で、既存のPhenomも実売価格を下げる動きを見せているという。B2ステップでもいいや、というユーザーなら、コストパフォーマンス狙いでPhenom 9600 Black Editonで2008年を先取るのもよし、Phenom 9500とRadeon HD 3850で、「パーツあたり2万円台半ばのSpiderシステム」を構築するもよし、と、年末になってようやくPhenomに食指が動くような価格設定が実現するきっかけとなったあたりにも、Phenom 9600 Black Editionの意義があるのかもしれない。

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