移転・閉店・再編――激動の“アキバ2007”を振り返る2007年アキバ総括 電気街編(1/2 ページ)

» 2007年12月31日 17時35分 公開
[古田雄介,ITmedia]

さまざま理由で姿を消したショップ

PC-Success本店に貼られた破産の告示書。2月中旬まで物めずしさに人だかりができていた

 1月30日、激安ショップとして有名なPC-Success本店が閉店した。突然のことで、店の前には債権者が集まったが、誰も事態を把握できない状態が1日中続く。そして翌31日に、運営会社のサクセスが破産手続きの開始を申し立てていると報告した。

 閉店の1年以上前から同店が破産するという噂が冗談交じりに流れていたが、タイミングがWindows Vistaの深夜販売直後だったこともあり、「Vistaマシンの予約代金を取るだけ取って姿をくらます計画だったのでは」(某ショップ)という憶測さえ流れた。

 異様な終わり方をしたPC-Success本店は例外としても、2007年のアキバは姿を消す有名ショップのニュースが特に目立った。“給水所”や“貸しチャリ”サービスなどで知られていた「ワンネス」は2月中旬に閉店。そして、一時は電気街のランドマークといわれたLAOX ザ・コンピュータ館も9月20日に15年の歴史を閉じた。この影響を受けて、同ビルに店舗を構えていたメイド喫茶「めいどinじゃぱん」も閉店している。

 個性的なショップが次々に消える現状に、あるショップの店長は「寂しいけれど、PCパーツショップは淘汰の時代に入っています。戦略を間違えると後戻りできなくなる。我々はとにかく生き残る道を探していくしかないんです」と複雑な表情で語る。

 現在営業を続けている複数のショップに“生き残る術”を聞いて回ったところ、返ってきた回答は大きく2つに分かれた。「大きなダメージを受けないように規模を小さくして、得意分野を伸ばしていくこと」と、「スケールメリットが活かせる巨大な母体を維持するため、徹底的に店舗を合理化すること」だ。

フラッシュメモリが安い店としても有名だった「ワンネス」(写真=左)。閉店セール中のLAOX ザ・コンピュータ館。ビル自体は12月末現在も残っている(写真=中央)。1月にMSIのローンチイベントを行ったことでも知られるメイド喫茶「めいどinじゃぱん」は、LAOX ザ・コンピュータ館の影響で9月9日に閉店した(写真=右)

各店舗の個性を際だたせて“深く&広く”をめざす大型ショップ

USER'S SIDE秋葉原本店は、3月に店内の入り口付近にゲーム体験コーナーも設置した

 前者の好例はUSER'S SIDE秋葉原本店だ。以前から強かったゲーム系デバイスの品ぞろえを充実させ、3月からはソフトの取り扱いも本格的に始めた。「いままでソフトを置かなかったのが不自然だったかも。PCゲームの本場、アメリカに支社があるので、最新の人気ゲームが入手できますよ」(同ショップ)と語る。

 一方、後者の作戦を取ったショップは、2007年後半に大規模な店舗再編を果たしている。その代表例はソフマップだ。「ソフマップ秋葉原本館」を軸に、既存の周辺系列店14店舗で構成する「ソフマップタウン」を9月に始動させた。偶然にもLAOX ザ・コンピュータ館の閉店とタイミングが重なったため、街のランドマークとしての機能もソフマップ秋葉原本館がそのまま譲り受けた格好となった。

 老舗家電量販店の石丸電気もアキバにある全11店舗をリニューアルし、10月末にグランドオープンを果たした。ワンストップで家電全般がそろう「秋葉原本店」を中心に、PCや家電など各分野の専門店を周囲に配置する。グランドオープンに際して、同店は「アキバの家電ショップは最近元気がないので、我々が盛り上げていこうと思います」と熱く語っていた。

 また、PCパーツショップとしては、フェイスグループの再編に注目したい。石丸電気と同時期の10月に「本社から突然リニューアルの指示が出ました。寝耳に水です」とのことで、店員さんは通常営業をこなしながら、合間をぬって在庫を移動させていた。そして、従来のフェイス 秋葉原本店が「フェイス カスタム館」に、PC-Success本店の跡地に入ったフェイス アキバ店が「フェイス パーツ館」に、じゃんじゃん亭が「フェイス PC館」にリニューアル。「カスタムマシンや液晶をお求めならカスタム館、PCパーツならパーツ館、即納PCはPC館にお越しください」(同ショップ)と、グループ内ですみ分けができていた。

9月に再スタートを切ったソフマップ。青い看板が目印だ(写真=左)。10月にグランドオープンした石丸電気。こちらは赤の看板が目立つ(写真=中央)。10月に大急ぎでリニューアルしたフェイスグループ(写真=右)

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