移転・閉店・再編――激動の“アキバ2007”を振り返る2007年アキバ総括 電気街編(2/2 ページ)

» 2007年12月31日 17時35分 公開
[古田雄介,ITmedia]
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今後の“アキバ”はどうなっていくのか

 アキバは変化の激しい街と言われて久しいが、ここ1年の激しい動きを目の当たりにすると、どうしても先が見えない不安を覚える。

 現状を踏まえたうえで今後のアキバの道筋を知るべく、2007年は「アキバPick UP!」と併行して、アキバ関係者へのインタビュー「5年後の秋葉原を歩く」を掲載してきた。さまざまな分野の識者の発言を借りて、少し乱暴だが、街が変化しうる大まかな選択肢を予想してみよう。なお、各人が語った総合的な意見や考えについては、各インタビュー記事を参考にしてほしい。

メイドさんの打ち水イベント「うち水っ娘大集合!2007」には、多数の外国人観光客の中に“帝国軍歩兵”の姿も見られた。アキバの観光地化は宇宙規模か

 現在、秋葉原の街を歩いていても肌で感じられるのが観光地化の流れだ。日本ツーリズム産業団体連合会(TIJ)の田所氏は、「我々の推計値では、秋葉原だけの外国人来訪者は2006年で約56万人くらいです。いまから5年後にはまず間違いなく倍増されて、120万人に達していると思います」と語る。

 千代田区議会議員の小林たかや氏も「以前に比べて、観光地化していることは確かです。観光客ありきの商売が出てくる可能性も高い」とみており、これから数年は街の訪問者はさらに増えていくと考えられる。

 一方で、メイド喫茶「くろすろ〜ど」の店長が「行政のさじ加減で変わってくるでしょう。街の再開発によって、オフィスビルの数が増えていますが、そうなるとアキバの客層も変わってきます。サブカルチャー系の産業が成長しにくい街になるでしょうね」と語るように、ビジネス街化が進むという懸念もある。

 ただし、その変化がすべてにおいて悪影響を及ぼすわけではない。ソフマップの米澤氏は「TXにより東京とつくば方面を結ぶハブとしての機能が高まり、秋葉原クロスフィールドや旧日通ビルの影響でビジネス街としての色も出てくるでしょう。それらを含めて、今よりも街の価値が高まっていると思います」とビジネス街化の肯定的な面についても言及している。

 アキバの“行政”である千代田区は「行政としては多様な用途を想定してます。用途を掲げながらも、機能を行政で制限するということではありません」と話す。このスタンスで街を見守り続けるのであれば、東京工業大学の小山氏が語る「秋葉原は消費者主導で進化していくめずらしい街。いままでのカラーを残しながら、変化していくと思います」というコメントが、一応の答えとなりそうだ。

中央通りに停まる観光バス。アキバでは平日でも外国人観光客をよく目にする(写真=左)。街の再開発の起点になったといわれる「秋葉原クロスフィールド」(写真=中央)。写真の総武線高架下付近は人通りが少ない。近年、電気街のエリアが縮小傾向にあるとも言われている(写真=右)

 PCパーツショップの将来はどうだろう。秋葉原はWindows 3.1の時代から自作PCの街として栄えてきたが、USER'S SIDE 小林氏は「Windows 95が登場した前後に“自作は安い”と知れ渡り、安売り攻勢を仕掛ける店が進出してきました。そこからおかしくなり、まともに利益がとれる業界ではなくなってしまった。もう自作PCに未来はないですよ」と、将来を悲観する。

 しかし、「Windows XPが登場してまもなくの2002年ごろから、当店を含めて安売りから方針を変えるショップが増えてきました。価格競争をしていると先がないと、業界全体で気づいたんでしょうね」(ツートップ秋葉原本店 柿田氏)と、低迷期を経験したのちに、生き残りをかけてさまざまなショップが方向転換を行っている。

 そうして存続したショップは、「今後、PCパーツショップがものすごく儲かるということはないんですが、PCパーツは必要なものなので、なくなることはない。それを踏まえて地に足のついた経営をするようになるのではないでしょうか」(U&J Mac's plus店長 芳野氏)と、“明るくも暗くもない未来”を予想する声もある。

 ツートップ秋葉原本店は「ユーザーは趣味でマシンを組むのだから、店は売れ筋だけでなく、多彩なパーツを用意すべき。面白いデモ機も展示して、自作PCの楽しさを伝えていく店が増えると思います」と、5年後のアキバを語った。そうした“地に足のついた”サービスを提供する店舗が2008年には増えていくのかもしれない。

USER'S SIDEでは、スタッフの知識や接客を含めた、PCショップとしての高品質をモットーにしている(写真=左)。ツートップ秋葉原本店は、デモ展示の充実を図る(写真=中央)。芳野氏は閉店した「じゃんく屋わんねす」の店長だった。“給水所”サービスも芳野氏のアイデア。「別にコストもそんなにかからないですし。アイデアがあれば今後もどんどん提供していきます」という(写真=右)

著者:古田雄介

毎週2〜3日は必ず電気街か家電量販店に姿を現すライター。職歴とアキバ取材歴はぴったり同じ。プライベートでは「古田雄介のブログ」を運営している。


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