Eee PC 4G-Xの性能をベンチマークテストでチェックしてみたところ、旧世代のエントリークラス向けCPUとチップセットを組み合わせているため、全体的に控えめな成績だった。ベンチマークテストプログラムの結果を見ると、CPUにIntel A110(800MHz)を採用したUMPC「FMV-BIBLO LOOX U50WN」より若干劣る程度のパフォーマンスだ。
SSDの採用により、ディスク関連のベンチマークテストは悪くない成績だが、フラッシュメモリのライト速度が低速なためか、ノートPC用のHDDと比べて必ずしも優秀とは言えない結果となった。
しかし、SSDは耐衝撃性や消費電力の面で有利なので、ミニノートPCではメリットが大きい。例えば、電車の中などで使用していて、下車する駅に着く直前で液晶ディスプレイを閉じ、Windows XPがスタンバイに移行している最中にさっとカバンにしまって移動するといった場合でも、耐衝撃性に強いSSDならば安心感がある。
ちなみに、本体には冷却ファンが内蔵されており、左側面に排気口があるが、通常時はファンが停止していることも多く、高負荷時でのファンの回転による騒音は小さい。ただし、長時間駆動時にはパームレストを中心にボディ全体が発熱する傾向にある。
もっとも、実際の使用においてはWindows XP搭載のミニノートPCとして不足のないパフォーマンスを確保している。試しに無線LAN経由でYouTubeやニコニコ動画にアクセスし、ストリーミングの映像を連続再生してみたが、コマ落ちが目立つことはなく、十分実用できるレベルにあった。細かいところだが、ミニノートPCながら内蔵ステレオスピーカーの音量が大きめに出るのは好印象だ。
動画再生におけるバッテリー駆動時間も計測してみた。液晶ディスプレイのバックライトを最大、スピーカーの音量は真ん中に設定。この状態で平均ビットレート2.8MbpsほどのMPEG-4ファイル(CPU負荷率は50〜60%程度)を再生し続けたところ、約2時間48分の連続再生でバッテリー切れとなった。2時間程度の映画コンテンツならば、バッテリー駆動だけで視聴できそうだ。海外版での検証記事でも明らかなように、メディアプレーヤーとしての能力は侮れない。
以上、国内販売されるEee PC 4G-Xを試用してみたが、改めてコストパフォーマンスの高さに驚かされた。いくつかの苦言も呈したが、それは普段PC USERでレビューしている10万円や20万円はするモバイルPCとの比較という視点が入るからで、これだけのスペックを備えたゼロスピンドル構成のミニノートPCが5万円で入手できる事実には、文句の付けようがない。日本上陸で不当に値上がりすることなく、海外版に匹敵する低価格で提供された点は特筆できる。国内のモバイルPC市場にとって、黒船来港と言えるほどのインパクトがある1台だ。
Eee PC 4G-Xの購入直後には、ディスプレイの低解像度とSSDの容量不足に悩まされるだろうが、Windows XPの表示に関する設定を細かくチューニングしたり、余分なファイルなどを徹底的に削除するなどの工夫で、うまく付き合っていくことができるだろう。発売前から人気の製品なので、今後はトラブルシューティングやカスタマイズなどの情報が充実することも予想される。そういった背景も含めると、Eee PC 4G-Xはパワーユーザーだけでなく、幅広いユーザーに「モバイルPCの楽しさを知ってもらう最初の1台」として最適な製品ではないだろうか。
なお、Eee PCは海外で複数のカラーバリエーションモデルや8GバイトSSD搭載モデルがラインアップされているが、残念ながら国内への投入は検討中で、具体的な発売計画は未定という。これらに加えて、海外では8.9インチワイド液晶ディスプレイを採用し、プラットフォームを「Menlow」に世代交代した新型Eee PCが2008年半ばに投入される予定だ。今後もEee PCの動向から目が離せなくなるに違いない。
無論、Menlowを採用したモバイルPCはASUSに限らず、さまざまなPCメーカーから登場するだろう。特に国内の大手PCメーカーは、Eee PCに対抗できるような、アグレッシブな価格設定のモバイルPCをぜひ投入してほしい。2007年1月末にWindows Vistaが発売されてからというもの、小型軽量のモバイルPCはしばしばパワー不足が指摘され、買い控えしているユーザーも少なくないと思われるが、Menlowは1つのブレークスルーとして期待できる。2008年のモバイルPC市場が例年にない豊作となることを願ってやまない。
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