「Radeon HD 3870 X2」は1枚の価格で2個分の性能を発揮できるかイマドキのイタモノ(1/2 ページ)

» 2008年01月28日 14時01分 公開
[長浜和也,ITmedia]

Radeon初の「公式」デュアルGPUカードが登場

 2008年1月28日にAMD(ATI Technologies)が正式発表した、Radeon HD 3000世代の最上位モデル「Radeon HD 3870 X2」は、その型番からも連想できるように、従来の最上位GPU「Radeon HD 3870」を1枚のグラフィックスカードに2つ実装し、おなじ基板に用意されたPCI Expressプリッジチップを利用することで「1枚のグラフィックスカードでCrossFireを構成」している。

 同じような「デュアルGPU」グラフィックスカードは、これまでも新しいGPUが登場するたびにPCパーツベンダーからリリースされている(最近ではGECUBEの“Gemini3”が記憶に新しい)。イベントで披露されたときこそ多くのユーザーから注目を集めて話題になるが、なかなか実績として成功しているとはいいがたい状況がこれまで続いている。NVIDIAも、この種のモデルとしてGeForce 7950 GX2などの「ダブルデッカー」グラフィックスカードを投入している。「2枚使えば4つのGPUが連動するQuad SLIが実現する」という話題性で盛り上がりを見せたものの、高い価格とその次の世代となるGeForce 8800 GTXが、「1枚で従来GPU2枚分の性能」を実現したことで、実質的な存在意義を失ってしまった感があった。

 このように、デュアルGPUが“イマイチ”成功したとはいいがたい状況の中で、Radeon HD 3870 X2が登場した。Radeon HD 3870のCrossFire相当の動作をする「グラフィックスカード」ということで、2つのGPUを載せているものの、その実質的なスペックはRadeon HD 3870とほぼ同じになる。採用するプロセスルールは55ナノメートルで、実装する統合型シェーダユニットの数は320個×2=640個(5個ひとまとめとすると64単位×2=128単位)、今回評価で用いたグラフィックスカードが搭載するグラフィックスメモリの容量は512Mバイト×2=1Gバイトとなっている。DirectX 10.1、シェーダモデル4.1をサポートし、省電力機能である「ATI PowerPlay」を組み込んでいるのも、すでに発表されているRadeon HD 3000シリーズと同様だ。

 動作クロックは、Radeon HD 3870と異なっていて、コアクロックは825MHzと速めなのに対して、メモリクロックは900MHz(DDRのデータ転送レートで1.8Gbps相当)と、こちらは逆に遅めに設定されている。

実質的には“デュアルGPU”のRadeon HD 3870 X2
クーラーユニットの細長いフードのおかげで長大なカードに見えるが、実はGeForce 8800 GTXと同じ長さだったりする

裏面にはハイエンドRadeonシリーズでおなじみの「放熱用プレート」が用意されている。GPUを2つ載せたカードであることがよく分かる
クーラーユニットを取り外すと、PCI Expressブリッジチップをはさんで2つのGPU(Radeon HD 3870)が姿を現す

GPU2つ分のRadeon HD 3870 X2の実売価格はいかほどに

 NVIDIAの“デュアルGPU”ラインアップのGeForce 7950 GX2と、今回登場したRadeon HD 3870 X2で、その構成上大きく異なるのは、2枚の基板で構成されていたGeForce 7950 GX2に対して、Radeon HD 3870 X2は1枚の基板で構成されていることが挙げられる。プロセスルールが55ナノメートルと微細化したとはいえ、大柄な2つのGPUに加えて、こちらも設置面積が大きいPCI Express ブリッジチップといった、3つのチップを1枚の基板に載せるのには相当な苦労があったと思う。それが、影響しているのかどうかは定かでないが、Radeon HD 3870 X2を採用するグラフィックスカードの価格は「デュアルGPU」の製品としては、低めに設定されている。

 1月28日の正式発表を待たずして、一部のPCパーツショップで先週からRadeon HD 3870 X2製品の出荷が始まっているが、実売価格は6万円台前半と、GeForce 8800 GTXをわずかに下回る。基板に載せた2つのGPUが実力をフルに発揮するのは「CrossFireに対応したアプリケーション」という条件が付随するものの、「1枚分の価格でGPU2個分のパフォーマンス」となれば、そのコストパフォーマンスは著しく良好なものになると思われる。

 とはいえ、これまで数多くのデュアルGPU搭載グラフィックスカードで苦労してきたユーザーからすれば、「はたして、そううまくいくものだろうか」と、つい疑ってしまうのもやむを得ないところだ。AMD(ATI Technologies)初の公式デュアルGPUの実用度を3DMark06をはじめとするベンチマークテストで検証してみよう。

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