MacBook Airから見える新しい風景MacBook Airレビュー前編(3/4 ページ)

» 2008年02月13日 11時00分 公開
[林信行,ITmedia]

MacBook Airはコンピューティングスタイルを変える

 いまから9年前に、初代iMacが登場してレガシーフリーの時代が始まった。それまでのPCは、美しさと簡単さを志向したMacでさえ、FDDやSCSIポートを引きずっていた。SCSIはケーブルが太く、接続できる機器が少ないうえに、チェーンの最後の機器に終端抵抗(ターミネータ)と呼ばれる装置を取り付ける必要があるなど、およそコンシューマー向けの技術ではなかった。しかし、それでも多くのPCユーザーは、それまでのPCに必須だったからという理由で、この技術の存続を望み続けた。

 初代iMacはそれらすべてを切り捨て、代わりにただ1つ、まだほとんど普及していなかったUSBポートを採用した。多くのPCマニアはそのことで大騒ぎをしたが、技術のトレンドを変えたのは、そんなことをものともしないコンシューマーの力だった。いざiMacが発売されると、USBだけで何とかなるようにサードパーティメーカーもさまざまな製品を用意した。

 MacBook Airを見ていると、なんとなく初代iMacを思い出す。

 MacBook Airから光学式ドライブがなくなった点を挙げ、これが不便だという意見をよく耳にする。ほかのユーザーのことは分からないが、これまで使ってきたMacBookで筆者が光学式ドライブを使うことは、月に数回あるかないかだ。

 筆者は毎月ソフトウェアを買うわけでもないし、DVDもできればTVで楽しみたい。取材でもらう資料も、最近はCDやDVDではなくUSBメモリで配られることが増えてきた。探していたDVDがずっと見つからないと思っていたら、実はMacBookの光学式ドライブに入っていた、という経験があるくらい、光学式ドライブの存在は意識の外にある。

 もちろんこれは、筆者個人の限定された例ではあるが、MacBook Airですごいのは、光学式ドライブを省くと同時に、光学式ドライブを必要とする理由自体をなくしたことだ。

 MacBook Airを購入する人の多くは、すでにほかのPCを持っていると思うが、そのPCの光学式ドライブを(ネットワーク越しに)まるでMacBook Air内蔵ドライブのように利用できるRemote Disc機能が使える。

 またアップルは、映画を鑑賞する際にDVDを使わなくても済むように、「iTunes Movie Rental」というサービスを米国で開始した(日本ではまだ同サービスは始まっていないが、年内には国際展開したいとジョブズCEOは語っている)。

 こうしたアップルの努力だけではない。最近では余計なケーブルを使わずに済む技術が増えている。例えば、米国で人気を呼んでいる「Eye-fi」という無線LAN機能内蔵のSDメモリーカードを使えば、デジタルカメラで撮影した写真をワイヤレスでPCに転送できる。

 さきほど触れたTime Capsuleを使えば、外付けの大容量HDDもIEEE802.11nの無線LAN接続で利用できるようになる。筆者はMacBook Airが11n普及の推進力になるのではないかと期待している。

 また、周辺機器だけでなく、容量無制限で写真をバックアップできる「Flickr」といった有料サービスや、ワープロ、表計算、プレゼンテーションの書類をインターネット上に置いておける「Google Docs」のようなサービスが増えてきたことも、この新世代のコンピューティングの実現を後押ししている。

 これまで筆者のカバンの中には、数種類のUSBケーブルやFireWireのケーブルなど、各種ケーブルが雑然と詰め込まれていたが、MacBook Airは、こうしたケーブルの束もなくす、もっとスマートなモバイルのスタイルを提案してくれているような気がしてならない。

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