4枚差しは自作PC魂を刺激してくれるが、現実に目を向けると、その構築コストはただならぬものがある。+D Shoppingで、Radeon HD 3870の価格を調べると、2008年3月半ばでおおよそ3万円前半から3万円半ばで落ち着いている。現実的な4-GPU CrossFireXとしては、やはり、Radeon HD 3870X2を2枚使うユーザーが多いだろう。同じように、+D Shoppingで価格を調べてみると、5万円後半から6万円前後の製品が多い。
では、1×4枚差しと2×2枚差しとでパフォーマンスと効率に違いは出るのだろうか。そこで、Radeon HD 3870 X2を2枚使った構成とRadeon HD 3870を4枚使った構成とで、ベンチマークテストの比較を行ってみる。なお、性能向上の基準として、それぞれ、Radeon HD 3870X2を1枚組み込んだ構成、Radeon HD 3870を2枚組み込んだ構成で測定した結果も並べている。
多くのベンチマークテストで、デュアルGPUカードの形態をとるRadeon HD 3870 X2の結果がやや下回るものの、「1×4」構成と「2×2」構成にそれほど大きな違いはない。ならば、(“4つのGPU”にこだわるなら別だが)常識的なコストでできるRadeon HD 3870 X2の2枚組みで4 GPU CrossFireXを構築するのがコストパフォーマンス的にいいことになる。
しかし、2×2構成のCrossFireXにも弱点がある。ハイエンドGPUとしては省電力に優れているRadeon HD 3870を1枚ずつ増やしていったとき、そして、Radeon HD 3870 X2を2枚差したときのシステム消費電力をワットチェッカーで測定した値が次のグラフになる。
このように、2×2構成のシステムは、3DMark03のGT4実行時においてピーク値が500ワットを軽く超えている。1×4構成も500ワットを超えているがその差は大きい。また、対応する電源ユニットの数がまだ少ない「8ピン」のPCI Express 外部電源コードを2本必要とする事情も、2×2構成のハードルを高くしている。
プラットフォーム環境が異なるため、以前紹介した3-way NVIDIA SLIの構成とベンチマークテストの結果を直接比較することはできないが、2-GPUから3-GPUへのステップアップでも順調に性能を伸ばしたSLIと異なり、CrossFireXは枚数に見合った性能向上を見せているとはいいがたい。ドライバのチューニングによって改善される可能性があるとしても、正式に公開されたCatalyst 8.3で所定の性能が出せないのでは、2007年11月から期待して待ってくれていたユーザーの思いはどうなるのか。
(AMDもそうだが)“ATI”ユーザーは、同社の製品を長く愛用している場合が多い。製品が発表されてからどんなに長く待たされても、出荷開始と同時に購入してうれしそうにしているユーザーも少なからず見ているが、そういう熱心なファンの期待を裏切らないことが、競争相手を出し抜くこと以上に大事なのではないだろうか。
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