“これはもう立派なオーディオ機器だ”――オンキヨー「APX-2」を鳴らすデジタルアンプ内蔵PCの実力は?(1/3 ページ)

» 2008年03月31日 16時50分 公開
[八木慎伍,ITmedia]

第2世代のHDオーディオコンピュータ現る

「APX-2」

 「APX-2」は、オンキヨーが手がける“音”重視のPC「HDオーディオコンピュータ」の第2世代に当たる製品だ。PCに蓄積した音楽ファイルを高品位に楽しむというコンセプトこそ同じだが、初代HDオーディオコンピュータの「HDC-1.0」とは、機器としての構成が大きく変化している。

 従来の「HDC-1.0」は簡単に言うと、オンキヨー独自のサウンドカードを付加しつつ、ノイズ対策を追求したデスクトップPCだった。スピーカーを駆動するアンプは持たない再生機で、セット販売されているアンプ内蔵のアクティブスピーカーを使うか、別途アンプを持ったオーディオシステムに組み込むことを想定していた。ボディのデザインもオンキヨーのハイコンポシリーズ(INTEC 205)に倣ったものだ。

 今回取り上げる第2世代の「APX-2」は、PC本体に100ワット+100ワットのデジタルアンプを内蔵している。つまり、APX-2単独でスピーカーを駆動できるため、システム構成がよりシンプルになり、使い勝手はよくなった。

 しかし、最も注目すべきは本体内のPC部とオーディオ部を徹底して分離した内部構成だ。通常はPCのサウンドカード側に搭載されるDACを別の基板に分離。DAC以降デジタルアンプまでのオーディオ部をPC部と別電源で駆動することで、PC側で発生する高周波ノイズの影響を極力避けている。

 もちろん、オーディオ部の構成はDACに高級オーディオ機器でも採用されているTI製のバーブラウン「PCM1792」を使うことや、プリアンプやパワーアンプになどにパルス性ノイズを除去するオンキヨーの独自技術「VLSC-2」を使うなど、回路構成もオーディオ機器並みだ。こうした特殊な設計の詳細は、製品発表記事を参照してほしい。

小型ながら100ワット+100ワットの出力を実現したデジタルアンプ部(写真=左)。パワーアンプの左側にはアンプ用の電源を設けて、PC用の電源と分離させている(写真=中央)。PC用の電源はACアダプタを採用しているが、アダプタのトランス部はボディに内蔵されており、設置時にじゃまにならない。サウンドカードはMini PCI仕様で、DACを搭載しない小型カードだ(写真=右)

 その思想はボディのデザインにも現れている。基本的にどれほど高級なPCでも、フロントパネルにアルミを採用する一方で、後ろはコの字型の鉄板となるのだが、APX-2は振動対策のため側板もアルミ製だ。本体はサイズが205(幅)×388(奥行き)×155(高さ)ミリと背が低いキューブ型だが、重量は約10.8キロと重い。オーディオアンプのようなボリュームつまみをあしらったボディは、フロントのUSB 2.0ポートがなければ、これをPCと思う人はいないのではないだろうか。

 逆にPC部の基本スペックは、ほとんど進化していない。従来機種も静音性を高めるために、発熱を抑えたノートPCのコンポーネントを採用していたが、APX-2もCPUやチップセットは、1年前に発売した従来機種と一緒なのだ。CPUはCore 2 Duo T5500(1.66GHz)、チップセットはIntel 945GM Express、メモリは1Gバイト(PC2-5300)を採用している。ボディ内部にはSO-DIMMスロットが1基用意されているが、購入時の段階で既に埋まった状態で、ユーザーによるメモリの交換は保証対象外だ(有償で増設サービスを実施中)。光学ドライブは、スロットイン式のDVD±R DL対応DVDスーパーマルチとなっている。

 唯一違うのは、HDDが2.5インチの120Gバイトドライブから、3.5インチの500Gバイトドライブとなったことだ。ジュークボックスとしての用途を考えると、HDDの容量増加は歓迎できるものだろう。そのため、後述のベンチマークテストの結果もHDDの転送速度が関係するテストで少々スコアが向上する程度で、ほとんど従来と変わらない。

 従来機種同様、PCが発するノイズや振動を防ぐため、ボディ内部にはさまざまな対策が施されており、静音性は非常に高い。カタログスペックの22dBは、本体のそばで耳を傾けなければファンノイズが聞こえないレベルだ。HDDが3.5インチになり、騒音は不利になったはずだが、独自のHDDケース(Super Floating HDDユニット)を用いるなどの対策が効いており、HDDのシーク音も本体から1メートルも離れれば聞こえないほど静かで、オーディオ機器としての節度が保たれている。

オーディオアンプのようなボリュームつまみはAVアンプ同様、リモコン操作や、APX-2専用ソフト「アンプコントローラー」上で変更したボリューム設定をそのままサーボモーターで回転して調節する本格派だ。また、デジタル入力2系統、アナログライン入力2系統を切り替えるスイッチも用意されており、電源を入れれば、PCが起動中でも外部入力の音楽を再生できる。アンプ部とPC部が完全に分離しているがゆえの離れ業が可能だ
音声入力は、RCAステレオのアナログ音声×2、光デジタル×1、同軸デジタル×1を用意。音声出力は、RCAステレオのアナログ音声×1、光デジタル×1、同軸デジタル×1、サブウーファ、スピーカーを備えている。映像出力はデジタル/アナログ兼用のDVI-Iを採用し、DVI-アナログRGB変換アダプタも同梱される。そのほか、6ピンのIEEE1394、USB 2.0×6、1000BASE-Tの有線LANを搭載している。欲を言えば、HDMI端子も欲しかった

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