冒頭に述べたとおり、diNovo MiniはWindows Media Center用のリモコンにキーボードを搭載したものと言える。そのため、Windows Media Centerをリビングの大画面TVに映して視聴するスタイルを前提として使用感を評価した。
リビングルームと一般的なコンピューティング環境の違いの1つとして、部屋の明るさが挙げられる。現在のTVは映像に合わせた画質モードが選択可能になっているものが主流だが、映画モードの場合は部屋をやや暗めにすることで最適なセッティングになるらしい(参考記事:本田雅一のTV Style:薄型テレビの能力を引き出す「画質モードの使い分け」)。
このような場合、diNovo Miniのバックライト・イルミネーションが活躍することになるが、キー下のイルミネーションが有効なのはキートップの白字だけだ。つまり、青字で印字されている、FNキーとの併用による機能は光を透過しない。例えば、PAGE UP/DOWNキーのズームアイコン、ENTERキーのCTRL+ALT+DELは周囲のキーから漏れる明かりでかろうじて確認できるが、そのほかのキーは暗いところではまったく見えなかった。
もっとも、Windows Media Centerの一般的な使用ではFNキーを併用する必要はないため、大きな問題とはならないだろう。そういった意味ではWindows Media Centerの利用時は1キーで済むように考えられたレイアウトになっている。
実際にWindows Media Centerを使ってみると、メニューやコンテンツの選択などではクリックパッドを利用するために両手で持って親指で操作、いったん動画などのコンテンツ再生が開始されるとテーブルの上に置いたまま人差し指で操作することが多かった。diNovo Miniの底面カバーはゴム製になっており、滑り止めを兼ねている。ちなみにこのカバーを外すとリチウムイオン充電池、PC/PLAYSTATION 3の切り替えスイッチ、接続ボタン、それにUSBレシーバを収納するスペースがある。
これまでリビングに似合う高級感あふれるWindows Media Center対応リモコンはほとんどなかったのではないだろうか。その理由の1つは、(Windows Media Centerに限らず)そもそもリビングにあるTVなどのリモコン自体に高級感はあまりなく、ユーザーもそれに慣れているためにニーズが大きくなかったということがあるのだろう。
オーディオ関連では「Bang & Olufsen」や「Lantic Systems」などはあるものの、一般に高級リモコンと言えば学習型リモコンのような高機能な製品を指すことが多かった。PC周辺機器としては何も付加価値がないリモコンでは、価格面で受け入れられないにちがいない。そこを切り開いたのがクリックパッドだ。diNovo Miniは、新しいギミックを取り入れつつ、高級感を演出する質感やイルミネーションによって、その価格に見合うだけの満足感がある。
ただし、キーボードとしては中途半端な印象があることは否めない。FNキーとの併用でかなり無理がある入力環境に甘んじるくらいなら、はじめからリモコンと割り切ってキーボード部分を廃止し、同じサイズでゆったりとしたレイアウトのリモコンがあってもいいのではないかと感じた。
diNovo Edgeの右端にあるようなタッチパネル方式のボリュームコントロールと、本体の半分近くを占めるような巨大なトラックパッド、それにメディアコントロールキーのみ、というような構成でもいい。あるいはカバーを軽く触れると電動で開くような(ある意味むだな)ギミックでも、diNovo Miniの方向性が「高級リモコン」であれば進化の方向としてはおかしくないと思う。
diNovo Miniの高級感は机に置いたままで人差し指でぽち、ぽちと操作するようなシーンを想像させる。ポータブルゲーム機のコントローラーと同じように両手でホールドするのは、ちょっと違うような気がしてならないのだ。
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