エプソンの“普通紙くっきり”プリンタを検証する全色顔料インクの効果は?(2/4 ページ)

» 2008年04月10日 18時45分 公開
[林利明(リアクション),ITmedia]

PX-A740/PX-V780の機能と使い勝手は?

 はじめにプリンタドライバや付属ソフトについて述べておくと、主要なものは2007年末の染料インクモデルとほとんど同じだ。詳細は「複合機07年モデル徹底攻略:第3回 複合機6モデルの付属ソフトを極める」を参照してほしい。

 また、PX-A740/PX-V780とも付属の写真印刷ソフト「EPSON Easy Photo Print」を使うことで、エプソンの複合機/単機能プリンタにおける2007年末モデルの注目機能「ナチュラルフェイス」を利用することが可能だ。ナチュラルフェイスは簡単にいうと、人物の顔が写った写真を印刷するとき、顔の輪郭を不自然にならないように小さく加工したり、美白効果を施して出力する機能である。

PX-A740は前面の左下にメモリカード各種とUSB 1.1ポート(USB DIRECT-PRINT/PictBridge用)を備えている

 PX-V780の機能は、基本的にPCから紙の用紙に印刷するだけだ。CD/DVDレーベル印刷、自動両面印刷、複数系統の給紙といった機能は持たない。また、PX-A740の機能も、現在の複合機としてはシンプルなものだ。コピー、スキャン、プリントが基本となり、メモリカードスロットとPictBridgeによるダイレクト印刷は行えるものの、染料インクのミドルレンジやハイエンドモデルと比べて、付加的な機能はばっさり省かれている。具体的には、CD/DVDレーベル印刷、自動両面印刷、複数系統の給紙、フィルムスキャンなどを備えていない。

 コピー機能も基本的なメニューに絞られており、1%単位の拡大/縮小、オートフィット(用紙に合わせた自動の拡大縮小)、フチなしコピーだけだ。コピー時の印刷用紙サイズがA4とB5しか指定できないのは、困る場面があるかもしれない。ただし、L判や2L判のプリント写真をコピーする機能はある。スキャナの原稿台に複数の写真を並べ、用紙種類や用紙サイズを指定してコピーすることが可能だ。その際、退色復元機能の有無を選べるのもうれしい。

操作パネルは上面の左側に縦位置で配置している

 操作パネルは、3つのモードボタンと4方向ボタン/OKボタンなどで構成された簡素な作りだ。モードボタンには、「コピー」「メモリカード」「写真」(プリント写真のコピー)という3つがある。モードを選択したのち、液晶モニタに表示されるメニューを見ながら4方向ボタンとOKボタン、「戻る」ボタンで各種設定を行い、最後に「スタート」ボタンを押して動作を実行する仕組みだ。

 コピーやメモリカードダイレクト印刷の枚数は「+」と「−」のボタンで設定し、詳細な印刷関連の設定は「印刷設定」ボタンで呼び出す。インクカートリッジの交換といったメンテナンス関連は、「セットアップ」ボタンから呼び出すメニューにまとまっている。機能がシンプルなので、メニューの構造や項目もすっきりしており、メニューの階層も深くない。全体的にメニュー構造の見通しがよく、分かりやすい操作性といえるだろう。

 メモリカードダイレクト印刷の機能については、「すべて印刷」「選んで印刷」「日付選択印刷」「オーダーシート(マークシート式のインデックス)」「スライドショー」というメニューが用意されている。よく使うと思われる「選んで印刷」では、「ズーム/表示切替」ボタンによって、液晶モニタ上の画像表示を変更できる。通常は画像の1枚表示で、用紙種類やサイズ、フチなし印刷の有無、印刷枚数なども1画面で確認することが可能だ。

 サムネイルは画面内に9コマを同時表示でき、4方向ボタンで各コマにカーソルを合わせながら、個別に印刷枚数を設定していける。印刷枚数は各サムネイルの右上に表示されるので分かりやすい。また、画像の一部分を拡大(トリミング)して印刷する機能もある。ただし、印刷品質の設定は「標準」のみの固定だ。

2.5インチのカラー液晶モニタはチルト角度を変更できる(写真=左)。写真データは9分割のサムネイル表示が可能だ(写真=右)

“普通紙くっきり”の実力は?

 ここからは、PX-A740とPX-V780の印刷品質をチェックしていこう。両製品がアピールする普通紙への印刷品質は、プリンタドライバの「レベル1」「標準」品質で出力したものをチェックした。印刷したデータは、JEITA標準パターンのモノクロ文書「JEITA J1」をMicrosoft Office Word 2003から出力したものと、Internet Explorer 6からカラー画像とモノクロテキストが混在したWebページ(PC USERのトップページ)を出力したものだ。

 モノクロ文書の出力結果を見てみると、両製品とも最速設定の「レベル1」では文字が若干かすれ気味だが、「標準」設定では顔料インクだけあって普通紙印刷でもにじみが目立たず、シャープな印刷品質が得られた。再生紙や紙厚など、印刷する用紙によってはにじみが大きくなるケースもあるが、それでも染料インク機よりははるかにくっきりしており、黒が引き締まることでコントラストも高い。

JEITA J1の印刷サンプル(クリックすると300dpiでスキャンした画像の一部を800×600ドットで表示)。左から、PX-A740の「レベル1」、PX-A740の「標準」、PX-V780の「レベル1」、PX-V780の「標準」だ。一見するとPX-A740とPX-V780はほとんど同じだが、PX-A740のほうがわずかにフォントが太い

 一方、カラーとモノクロが混在したWebページの出力結果だが、こちらは「レベル1」だとかなり読みにくい印象だ。「標準」設定では発色がぐっとよくなり、シャープに印刷できるので、「標準」を常用することになるだろう。

Webページの印刷サンプル(クリックすると300dpiでスキャンした画像の一部を800×600ドットで表示)。左から、PX-A740の「レベル1」、PX-A740の「標準」、PX-V780の「レベル1」、PX-V780の「標準」だ。「レベル1」と「標準」の印刷品位の差は大きい

 総じて「標準」設定での普通紙印刷は十分なクオリティで、インクジェット用の上質普通紙やコート紙に印刷すれば、仕事のプレゼン資料としても問題なく使えるはずだ。ただし、カラーレーザープリンタの出力と同等のシャープな出力結果とまではいえず、どことなく“インクジェットっぽい”シャープネスの甘い雰囲気は残る点を覚えておきたい。

 次のページでは、写真印刷の品質を確認する。

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