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“家庭も仕事もこれ1台”な複合機を求めて――キヤノン「PIXUS MX850」実力診断人気モデルをより多機能に(2/3 ページ)

» 2008年06月20日 17時30分 公開
[榊信康,ITmedia]

家庭向けの人気モデルと同等のプリントエンジンを装備

染料4色と顔料ブラックによる5色独立インクカートリッジを採用

 次はプリンタ機能の詳細を見ていこう。プリントエンジンの仕様は昨年発売した家庭向けのインクジェット複合機「PIXUS MP610」と同等だ。MP610は2007年の年末商戦で好調なセールスを記録した売れ筋モデルで、家庭向けのPIXUSシリーズでは印刷速度が最速となっている。高速なプリントエンジンはビジネス向けのMX850において、より威力を発揮するに違いない。

 インクシステムは、CMYKの染料インク(BCI-7e系)に顔料ブラック(BCI-9BK)を加えた4色+1色タイプを採用。このため、フォトクオリティのカラープリントと、頑強かつ美麗なテキストプリントの両立を果たしている。計4608ものノズル(C/M×各1536ノズル、Y/染料BK/顔料BK×各512ノズル)や、1ピコ/2ピコ/5ピコリットルのインク滴を併用する3サイズドロップレット技術の採用などにより、L判フチなしの写真印刷(キヤノン写真用紙・光沢ゴールド使用)は約18秒の高速印刷をうたう。

L判のプロフェッショナルフォトペーパーに最高品位で印刷したものを600dpiでスキャンしたサンプル。クリックすると、一部を1024×768ドットで切り取ったものを表示

 印刷品質については、左の印刷サンプルを参照していただきたい。簡単に感想を述べると、カラー印刷については、色設計の思想が家庭向け複合機からの流れにあるためか、よくも悪くも色が濃厚でメリハリのある絵作りになっている。このため、淡い色調ではトーンジャンプが発生することもあったが、全体的な発色やカラーバランスに問題はなく、フォトプリンタとして十分通用する印刷品質といえるだろう。

 MP610譲りのプリントエンジンはフォト光沢紙の写真印刷で見栄えのする出力結果をもたらしてくれるが、普通紙へのカラー印刷は、カラーレーザープリンタのようなシャープさというわけにはいかず、粒状性が若干あることに加えて、染料インクということで少々にじむ。

 MX850はMP610と同様、写真印刷時にシーンを自動判別して適切と思われる補正を行ってから印刷する「自動写真補正」機能を持つが、これが濃厚でメリハリのある発色を生んでいる。同機能は写真印刷ソフト「Easy-PhotoPrint EX」の利用時とダイレクト印刷時に適用される仕組みだが、オフにできるので、状況に応じて使い分けることは可能だ。テキストの出力については、顔料ブラックの色濃く締まった描写で文句はない。

 カラーマッチングの機能は、プリンタドライバによる補正のほかに、OSなどが持つカラーマネージメントモジュール(CMM)を用いる設定も用意している。また、カラーマッチングを行わない設定もできるので、アプリケーション側で色補正を行う場合にも不都合はない。

 なお、キヤノンは本機の発売と同時に、インクのマルチパックも拡充している。追加されたのは「BCI-7e 4色+BCI-9BKマルチパック」(4980円)および「BCI-7e 3色(C/M/Y)マルチパック」(2980円)の2種類だ。これまではBCI-7e 4色しか存在しなかったため、フォトとテキストをしっかり使い分けている人でもないと不都合だったが、今回の拡充により、環境に応じて買い分けられるようになった。

 そのほか、プリント機能でハイライトといえるのは、自動両面印刷機構の存在だろう。これにより、A4、A5、レター、はがきなどのサイズで両面印刷が行える。各種の書状を大量に出力するにも手間が最小限で抑えられる。

プリンタドライバは目的別にタブが並んでおり、「基本設定」タブで用紙の種類や給紙方向、印刷品質などの設定、「ページ設定」タブで印刷の向きや割り付け印刷などのページレイアウト、両面印刷の指定などが可能だ(写真=左、中央)。「基本設定」タブから呼び出せるマニュアル色調整のカラーマッチングの項目は、ドライバ補正、ICM、補正なしの3種類が選べる(写真=右)

CISスキャナの搭載でボディの高さを削減

原稿台とADFを使ったスキャンが可能。フィルムスキャンには対応していない

 続いてスキャナ機能を紹介しよう。解像度は原稿台上では4800×9600dpi、ADF使用時は600dpiを確保している。階調性能は入力/出力とも各16ビットで、最近では標準的な仕様といえるだろう。

 ただ、先にMX850は、MP830の後継モデルと記したが、スキャンエンジンについては根本から異なっている。MP830がCCDによる縮小光学系のエンジンを搭載していたのに対して、MX850はCISによる密着光学系のエンジンを採用してきたのだ。要するにMP610と同等のエンジンになったわけである。

 オフィスユースにおいて、被写界深度の深さが重要か否かは、用途によって異なるだろうが、MP830が好評を得た理由の1つが、そのスキャンエンジンだっただけに少々残念な気はする。ボディサイズの削減とのトレードオフといったところだ。

 TWAINドライバは、おなじみのScanGearを採用している。ScanGearは、「基本」「拡張」「マルチスキャン」の3モードを搭載しており、目的やスキルに応じた使い分けが可能だ。タブによって自在にモードの切り替えが行えるので使い勝手がよい。

 基本モードは自動補正機能を前面に押し出した設計になっており、シンプルな操作性が特徴だ。各設定にしても、ドロップダウンやチェックボックスによる簡易な操作系を採用している。一方の拡張モードはスキャン時のパラメータの詳細な設定が可能だ。また、カラーバランス、明るさ、コントラスト、ヒストグラム、トーンカーブ、モノクロ設定といったメニューも用意されており、色の細かな補正が行える。

 そのほかでは、マルチクロップ機能も搭載。透過原稿をサポートしていない本機では、使用頻度はそれほど高くはないだろうが、1つの原稿から別のファイルとして複数のデータを取り込みたい場合や、原稿台の上に配置した複数の原稿を一回の作業で取り込みたい場合には有用だろう。

 ただ、複数のデータをざっと取り込みたい場合には、マルチスキャンモードの方が手っ取り早い。マルチスキャンモードでは、原稿台上の原稿を自動認識、クロップして、スキャンする。数回のクリックで作業が完了するため、非常に手軽だ。もちろん、スキャンパラメータはあらかじめ設定できる。

ScanGearの基本モードは、チェックボックスとドロップダウンメニューが主体となっており、左側のバーにある項目を上から順に設定していけば、作業が完了する(写真=左)。拡張モードは、入力と出力の細かな設定が行えるのが特徴で、下部のアイコンは、別ウィンドウで開かれる各種調整メニューのスイッチになっている(写真=中央)。マルチスキャンモードは、設定項目が原稿種類と用途のみで、クロップや傾き補正などは自動的に行われる(写真=右)。「スキャン結果を確認する」をチェックすると、サムネイルがリストアップされる

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