開発現場が教えてくれる「ワコムの技術」 (2/3 ページ)

» 2008年06月24日 20時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]

15.4インチでまるまる2日、12インチクラスでも1昼夜!

 小尾氏は続いて、電子ペンの性能を表す指標の1つである「動特性」と「静特性」について説明した。電子ペンの追従性を示す動特性では、電子ペンを高速で回転させて、その軌跡が描く円の半径が小さくなる回転数を性能の指標として利用しているが、小尾氏はその値の基準として「人間の筋肉が運動できる最大である12Hz」を示している。

 また、電子ペンを固定した状態で検知される座標の“ブレ”を示す「静特性」では、デジタイザが組み込まれた機器に実装されているパーツ(例えば液晶パネルのバックライトに使われるインバータなど)から発生するノイズが影響する。ワコムでは、クライアントからデジタイザの組み込みを依頼された機器に実際に搭載した状態で静特性の評価作業を行い、そこで測定されたブレ(これを「ジッタ」と呼ぶ)の分布を補正するプログラムを導入することで静特性をチューニングするという。

 説明会では、電子ペンが検知する筆圧カーブのデータも示された。ワコム製の電子ペンはなめらかなカーブを描き、30グラムの筆圧から検知して500グラムで最大筆圧となるのに対して、競合する製品では、カーブが段を描くほか、筆圧検知が60グラムから可能になって1キロで最大筆圧になるなど、細かい筆圧の変化を捉えられないという。この違いができる原因として小尾氏は電子ペンに搭載するバリアブルコンデンサの品質が大きく影響していると説明する。

動特性測定機(写真左)と動特性の指標を説明するワコムの資料(写真右)。円盤に取り付けた電子ペンを回転させて軌跡の描く円の半径を測定する。ある回転速度を超えると電子ペンの動きを追従できなくなって描かれる円の半径が小さくなるという。そのときの回転数を動特性を表す値としている

静特性測定機は1ミリ未満のピッチでパネルをタップしてジッタを測定する。測定時間は15.4インチクラスのパネルで2日、12インチクラスで1昼夜程度かかるという
実際に測定されたジッタ分布。赤いエリアでジッタが大きい。静特性は実装されているパーツが発するノイズに影響されるが、無線LANなどは「扱う周波数が異なるため影響はない」(小尾氏)
測定されたジッタの分布とその量にあわせて、補正するプログラムを開発してチューニングを施すと、このように静特性はかなり改善される

ワコム製電子ペンが描く筆圧カーブ(写真左)と競合製品の電子ペンが描く筆圧カーブ。なめらかな軌跡を描くワコム製に比べ、競合製品は段差や加圧時のカーブと減圧時のカーブの開きが大きい

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