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» 2008年07月29日 11時20分 UPDATE

インク目詰まりゼロを目指して:エプソンが本気で作った“ビジネス”インクジェットプリンタ――「PX-B500」を試す (1/4)

「PX-B500」はエプソンがビジネス向けに投入したA4インクジェットプリンタだ。家庭向けモデルにはない試みを多数搭載し、信頼性を高めている。

[小川夏樹,ITmedia]

エプソンがビジネスに特化したインクジェットプリンタを投入

tm_0807b500_01.jpg オフィリオシリーズで新たに投入されたインクジェットプリンタ「PX-B500」

 セイコーエプソンは、ビジネス向けプリンタ製品群「オフィリオ」(Offirio)シリーズのラインアップを強化すべく、「PX-B500」と「PX-B300」の2モデルを追加した。いずれも4色顔料インクを採用したA4対応のインクジェットプリンタで、オフィスでの利用を想定し、印刷速度や耐久性、信頼性、低ランニングコスト、そしてエコロジーに配慮しているのがポイントだ。

 上位モデルのPX-B500(以下、B500)は、100BASE-TX/10BASE-Tの有線LANと自動両面印刷ユニットを標準で装備。オプションとして、大容量Lサイズのカラー4色インクカートリッジと、特大LLサイズのブラックインクカートリッジが用意されている。標準価格は8万3790円、実売価格は6万円弱だ。今回はこちらのモデルを取り上げる。

 一方、下位モデルのPX-B300(以下、B300)は有線LAN機能が省かれ、自動両面印刷ユニットもオプション扱いだ。そして、Lサイズのカラー各色インクカートリッジ、およびLLサイズのブラックインクカートリッジも利用できず、B500と差が付けられている。そのぶん、標準価格は5万2290円、実売価格は4万円弱と2万円程度安い。

ビジネス市場でレーザーとインクジェットを住み分ける新戦略

 エプソンが今回の新モデルを投入した狙いは、インクジェットプリンタでA4レーザープリンタ(カラー/モノクロ)の市場を大きく切り崩すことなく、レーザーよりもインクジェットの利用が適しているビジネスユーザーを掘り起こすことにあるという。

 具体的なターゲットユーザーは、まず「カラーで印刷したいが、高コストのため、仕方なくモノクロレーザーを使っているユーザー」、次に「大量のカラー印刷が必要なため、高コストを我慢しつつ、カラーレーザーを使っているユーザー」、そして「現在コンシューマー向けインクジェットや低価格ビジネスインクジェットを使用しているものの、信頼性や印刷速度に不満を持っているユーザー」だ。

tm_0807b500_02.jpg

 これにより、ビジネスユースでA4レーザープリンタが向く層に対しては、引き続きレーザープリンタ/複合機を提供し、インクジェットプリンタが向く層にはB500とB300を新たに提案することで、お互いがユーザーを奪い合うことのないよう住み分けに配慮していくという。

 しかし、エプソンが狙うレーザー機との住み分けはいささか難しいのではないだろうか。結論からいうと、B500はビジネスでA4カラーやA4モノクロの大量印刷が必要で、かつランニングコストをできるだけ低く抑えたいというユーザーに向いている。

 ということは、現在市場が広がりつつある低価格A4カラーレーザー市場から、ある程度のボリュームでユーザーを引っ張ってこられる製品であることを意味する。つまり、低価格A4カラーレーザーの対抗馬としての側面が強いように思う。

 こうした点を踏まえつつ、B500に搭載された数々の機能やスペック、使い勝手などをチェックしていこう。

インクノズル数の増強で印刷を高速化

 先述した通りB500は、A4対応のビジネス向け単機能インクジェットプリンタで、インクは4色顔料タイプだ。モノクロ/カラーともに約37ppm(最速モード設定時)という高速出力をうたう(実際の印刷速度については後述)。

 プリントヘッドはエプソンおなじみのマイクロピエゾ方式で、印刷可能な最大解像度は5760×1440dpiをサポートする。インクの最小ドロップサイズは3.6ピコリットルと個人向けのフォトプリンタに比べると大きめだ。内蔵メモリはメイン用が32Mバイト、ネットワーク用に16Mバイトの計48Mバイトで、増設はできない。

tm_0807b500_03.jpg 普通紙印刷の頻度が高い個人やSOHO向けの“普通紙くっきり”プリンタ「PX-V780」

 この説明だけでは、「カラリオ」シリーズにラインアップされている4色顔料インクの普通紙高速プリンタ「PX-V780」をベースに、各種機能を盛り込んだ製品と思えるが、決してそうではない。B500がPX-V780と大きく異なる点は、高速なプリントエンジンに加えて、同社のA4機では初採用となる機能をいくつか付加することで、ビジネスシーンでの印刷に必要な高速性や信頼性を向上させたところにある。

 例えば、PX-V780はブラックインクを2つ搭載し、これを180ノズル×2の計360ノズルで吐出することで、モノクロ約37ppm(最速モード時)の出力を実現したが、B500ではシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色を360ノズル(合計1440ノズル)に増強しており、モノクロ出力時だけでなく、カラー出力時にも最高約37ppmの速度を可能にした。

 プリントヘッドはノズル数を増やすだけでなく、動作周波数を向上させるなど細部にも手が加えられた新設計だ。普通紙出力の耐久枚数は10万枚をうたっており、この辺りもビジネス機ならではといえる。

単機能インクジェット機としては大柄なボディ

 そして、一目見て分かる大きな違いとしては、PX-V780に比べてはるかに大きな本体サイズを持つ。B500のボディは直線的な形状で、白黒のツートンカラーを採用した落ち着いたデザインだ。使用時の本体サイズは480(幅)×656(奥行き)×372(高さ)ミリで、重量は約10.7キロある。このボディサイズは、A4単機能プリンタとしては少し大きい。ここまで大きいのには、もちろん理由がある。

 1つは本体底面にA4普通紙を最大500枚セット可能なフロントカセットと呼ばれる給紙カセットを装着し、リアのオートシートフィーダ(ASF)と合わせて最大650枚もの大量給紙を実現するため。もう1つはLサイズのカラー各色インクカートリッジとLLサイズのブラックインクカートリッジの装着を可能にするため。そして、各色360ノズル、4色の合計で1440ノズルという大型ヘッドを無理なく収めるためだ。

tm_0807b500_04.jpgtm_0807b500_05.jpgtm_0807b500_06.jpg 前面はブラックで統一されており、インクカートリッジ装着部分が隆起しているのが目立つ(写真=左)。背面には各種インタフェースを配置(写真=中央)。ボディの奥行きは、収納時で489ミリ、使用時で656ミリとなる(写真=右)

 ヘッドの大型化は高速出力に直結するが、同社のコンシューマー機では「180ノズル×搭載インク数」や「90ノズル×搭載インク数」というスペックが多く、B500の各色360ノズルがいかに多いかは容易に想像できるだろう。

 ちなみに、LLサイズのブラックインクを装着した状態では、前面にあるインクボックスのフタを開けたまま利用するのだが、この部分はもう少しスマートに見えるように工夫してもらいたかった。

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