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» 2008年08月07日 18時00分 UPDATE

どうしてボタンは上にある?──ワコムの製品デザインはこうして決まる

ワコムは自社のラインアップ構成とブランド展開を大きく見直しつつある。その一環として登場した「Bamboo」ブランドのコンセプトを決めるまでの過程が紹介された。

[長浜和也,ITmedia]

一般ユーザーへの普及を目指した「Bamboo」のコンセプト

 「Bamboo」シリーズは、新しいペンタブレットユーザーを掘り起こすために、ワコムが2007年に立ち上げたブランドだ。Windows Vistaがペンタブレットデバイスを標準でサポートするタイミングで、ワコム製品のユーザーをクリエイターなどのプロユーザーから家庭のホビーユーザー、そして、ビジネスの現場にもっと普及させようとしたBambooは、「Bamboo Fun」「Bamboo ArtMaster」「Bamboo Comic」「Bamboo」といった4つのシリーズを展開している。

 ワコムが行ったユーザー調査では、「Bamboo Fun」「Bamboo ArtMaster」「Bamboo」は30〜40歳台の会社員を中心に、「Bamboo Comic」は10歳台の女性ユーザーに多く使われているという。「Bamboo Fun」「Bamboo ArtMaster」「Bamboo Comic」は、イラスト作成や漫画製作といった「絵を描く道具」として使われている(Bamboo Funのユーザーではデジタルカメラで撮影した画像の加工をするユーザーも多い)ケースが多いが、低価格のBambooでは、ポインティングデバイスとしてマウスの代わりに使ったり、プレゼンで手書き文字を挿入するのに使ったりといった、ビジネス用途における利用が多かったことは、ワコムの期待通りにBombooブランドがユーザーに受け入れられたことを示している。

 そのBambooブランドのコンセプトと製品デザインが決定するまでの流れを、同社商品企画部ジェネラルマネージャーの西野秀樹氏が紹介した。

ビジネスユーザーのためのペンタブレットとは

 Bambooブランドのコンセプトを決定する作業には、世界中に展開するワコムの各リージョンが参加している。企画プロジェクトのマネージメントを行う商品企画部のリーダーはドイツ人が務め、Bambooのデザインは米国に本拠地を置くZiba Designに依頼している。また、製品に対する各国のリクエストやパッケージの開発は、各リージョンのチームが関わっているという。

 先ほども紹介したように、新しいブランドの立ち上げには、タブレットデバイスを標準でサポートするWindows Vista(ただし、Home Basicだけはサポートされない)の登場が1つの契機となっているが、それ以外にも、欧州とアジア市場におけるメーカー間の競争を有利に進めるために新ブランドの投入が必要とされていたと、西野氏は説明している。

 コンセプトを決定する作業では、PenPartner(欧州向けブランド)やBizTablet(日本向けブランド)のユーザーに対する調査結果から新しいブランドがターゲットとする市場のセグメンテーションを決定し、その市場を構成する主なユーザーの属性やペンタブレットに対する要望などをまとめた結果を製品のコンセプトや製品デザインに反映している。

 ワコムでは、こうして調べた結果を満足させる製品デザインとして4パターンの候補を考案し、さらに考察を重ねて、最終的な製品デザインを決定した。

kn_wacom_01.jpg Bambooのコンセプトは世界中のリージョンが協力して考案されている
kn_wacom_02.jpg 製品コンセプトとデザイン案が策定される作業フロー。この過程で5カ月ほどの時間を要する

ユーザー意見を細かく分析して決まる仕様

 ワコムでは、コンシューマーにおけるペンタブレットの市場を「画像加工やイラスト作成などにタブレットを使うユーザー」「プレゼンテーションや電子署名などの用途に使うユーザー」「教育の現場で使うユーザー」「ホームマルチメディアを楽しむために使うユーザー」という4つのカテゴリーに分類している。ワコムは、「画像加工やイラスト作成などにタブレットを使うユーザー」のために「Bamboo Fun」「Bamboo ArtMaster」「Bamboo Comic」を、「プレゼンテーションや電子署名などの用途に使うユーザー」のために「Bamboo」を用意したことになる。なお、教育現場とホームマルチメディア向けのラインアップは用意していないが、意外と教育現場におけるBambooユーザーが“日本以外”で多いと説明する。

 このうち、ビジネス用途が中心のユーザー(これが、PenPartnerやBizTabletユーザーになる)に調査した結果から、新しいブランドで用意するペンタブレットでは「机上で使いやすく、かつ、可搬性がある」「多機能であるがデザインに優れている」「1人のユーザーが使う」という仕様が決定された。

 製品デザインの作業では、ペンタブレットを使う用途ごとに「マウスのようにポインティング操作で使うのか」「文字や絵を入力するのに使うのか」を分析したうえで、ペンタブレットとキーボート、ディスプレイの位置関係やペンタブレットのボディに搭載するスイッチとホイールのレイアウトが異なるアイデアパターンごとに、使い方や志向が異なるユーザーが、どのような使い方やレイアウトパターンを評価するのかを調査している。

kn_wacom_03.jpg 各リージョンで調査した既存ユーザーのアンケート調査から「最大公約数」的に必要とされる機能が抽出された
kn_wacom_04.jpg ビジネスユーザーがペンタブレットを使う用途ごとに、「ポインティングデバイスとして使うのか」(マウスのアイコン)、「入力デバイスとして使うのか」(ペンのアイコン)を分析する

kn_wacom_05.jpg ワコムの調査によると、ポインティングデバイス的に使う場合と入力デバイスとして使う場合とで、ディスプレイとキーボード、そしてペンタブレットの位置関係が異なるという
kn_wacom_06.jpg 考案された複数のレイアウト案を志向が異なるユーザーに評価してもらう。その中から評価ポイントが高いレイアウトパターンを製品サンプルとして作成した

 その結果、最初に考案されたデザインでは、ボタンやホイールを製品版と異なるパッドの「左脇」に配置していた。西野氏の説明によると、このレイアウト案はユーザーの調査結果でも評価が高く、有力な候補と考えられていたが、欧米人に多い左利きユーザーに不評であることと、ペンタブレットに搭載されたボタンやホイールを利用しないユーザー(既存ユーザーの調査では半数近くが利用していなかった)が、ペンタブレットを使うときにじゃまと感じていたために、製品版では「パッドの上」になったという。

kn_wacom_07.jpgkn_wacom_08.jpg 残ったレイアウト案で大きく異なっていたのがボタンとホイールの位置だった。左脇に配置したレイアウトは左利きユーザーに不評だった。その解決策として「上下を逆にする」というアイデアもあったが、ケーブルの取り回しが困難で断念したという。コストを抑えるためにワイヤレス接続は導入できなかったそうだ

 西野氏は、ホイールやボタンを必要としない「ジェスチャー」(ペンの動きでズーム機能や各種機能を呼び出す)オペレーションについて言及している。それによると、現在、技術的には実現可能なところまできているが、実際の製品に実装する場合はTablet PCへの実装が優先されるだろうという見方を示した。単体のペンタブレット製品への実装は、現在のところは考えていないとしている。

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