TS-409Proには、Webサーバ機能のほかオープンソースデータベースの主流ともいえるMySQLサーバまで標準搭載されている。Webサーバ機能は外部公開サーバとしてはもちろんだが、社内利用でも意外に重宝する。
例えば、会社のWebサイトのステージングサーバとして利用すると、素材のアップロードと動作確認において、ファイル共有とWebサーバの両方のメリットを享受できる。実際、Webサイトではhttpでアクセスしなければ正常に表示できない仕組み(CGIなど)も多いが、そのために修正するたびにFTPでアップロードするのが面倒、というユーザーもいるのではないだろうか。
以上、TS-409の12の機能について見てきたが、これらは「サーバ」としての機能だ。そのほかにも有用な機能が搭載されている。
NASを利用しているときに面倒を感じるのがファイル/フォルダの移動かもしれない。同じ共有フォルダであればデータ自体は移動せず、エントリの付け替えだけで済むため、ほぼ瞬時に移動することができるが、同じNASの同じボリューム上であっても異なる共有フォルダ間ではデータ移動が発生してしまい、コピー+削除分の時間がかかってしまう。それを解決するのがWebファイルマネージャだ。
Webファイルマネージャはブラウザ上からフォルダ追加、名称変更、移動、コピー、削除を行う。操作性はそれほど良くないものの、ローカルドライブとして処理するため、同一ボリューム内での移動は非常に高速だ。
ssh/telnetが用意されており、ログインして直接シェルで操作できるため、さまざまなハックに対するハードルをぐっと引き下げてくれる。ただし、標準で起動する/bin/shは日本語を受け付けないので/bin/ashを使うといいだろう。
TS-409Proには、機能を追加するためのパッケージとしてQPKGが用意されている。QPKGで提供されているパッケージには、前述したMLDonkeyのほか、別のパッケージ管理システムであるIPKGもある。ユーザーによるパッケージはIPKGで提供されていることが多いので、ばりばり拡張したい向きは重宝する。
また、QNAPフォーラムでの開発も盛んなようだ。英語のフォーラムだが、見出しを拾っていくだけでも興味深いトピックが散見される。
TS-409は日本語化されているとはいえ、ところどころあやしい翻訳が見られる。例えば、RAIDを構成するディスクの一部を切り離した、いわゆる「片肺状態」を表すDegrade Modeは通常「縮退モード」と訳されるが、TS-409では「格下げモード」となっている。また、ダウンロードステーションでタスクを削除するときには「ある本当にあなたが仕事を取り除きたいと思う?」という機械翻訳レベルになっている。
さらにその選択肢の「ダウンロードファイルを予約」になると日本語として成立している分、ほとんど理解不能なのではないだろうか。原文は「Keep the file already downloaded(ダウンロード済みファイルは残す)」だった。技術系ではない翻訳者が、リソースファイルのみを見て翻訳したような品質の甘さを感じる。もっとも、これらは「/home/httpd/cgi-bin/」以下に点在する「lang_jpn.js」をユーザ自身が修正して対応することができる。
BEEP音が耳障りなのも改善してもらいたい点だ。警告時などの鳴動をオフにすることはできるが、逆にディスクの利用準備ができたときなど、単なる情報の場合はオフにできないようだ。
ソフトウェア面ではWebファイルマネージャで時間のかかる処理をタスク登録型にしてもらいたかった。USBドライブの丸ごとコピーであればコピーボタンを使えばよいが、フォルダを指定してのコピーではブラウザ上から操作する。しかし、そのページを閉じると操作がキャンセルされてしまう。
ハードウェア的にはPCレスで接続されているにも関わらず、コピーが完了するまでPCを立ち上げっぱなしにしておかなければならない。PCを無駄に立ちあげておかずに済む、というコンセプトから考えれば残念な点だ。
とはいえ、そのような“甘さ”を差し引いても、TS-409の機能と性能はあまりある。部屋に転がっているHDDの転用からスタートして、後から少しずつ容量拡大を図れるところや、RAID 5利用時のパフォーマンスの高さ、ダウンロードステーションの手軽さなど、ハック以外の部分でもギーク好みのスペックだと言っていい。
日本ではマイナーなメーカーであるがゆえに「知る人ぞ知る」製品ではあるが、久々に「もっと評価されてもいい」と感じる製品に出会ったという印象だ。
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