台湾製の“最強NAS”「QNAP TS-409Pro」を試す(後編)BitTorrent、RapidShare、eDonkey……(3/3 ページ)

» 2008年08月14日 18時00分 公開
[瓜生聖,ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

外部公開サーバとしての機能

phpMyAdmin付きWebサーバ/MySQLサーバ

 TS-409Proには、Webサーバ機能のほかオープンソースデータベースの主流ともいえるMySQLサーバまで標準搭載されている。Webサーバ機能は外部公開サーバとしてはもちろんだが、社内利用でも意外に重宝する。

 例えば、会社のWebサイトのステージングサーバとして利用すると、素材のアップロードと動作確認において、ファイル共有とWebサーバの両方のメリットを享受できる。実際、Webサイトではhttpでアクセスしなければ正常に表示できない仕組み(CGIなど)も多いが、そのために修正するたびにFTPでアップロードするのが面倒、というユーザーもいるのではないだろうか。

それ以外の特筆すべき機能

 以上、TS-409の12の機能について見てきたが、これらは「サーバ」としての機能だ。そのほかにも有用な機能が搭載されている。

Webファイルマネージャ

 NASを利用しているときに面倒を感じるのがファイル/フォルダの移動かもしれない。同じ共有フォルダであればデータ自体は移動せず、エントリの付け替えだけで済むため、ほぼ瞬時に移動することができるが、同じNASの同じボリューム上であっても異なる共有フォルダ間ではデータ移動が発生してしまい、コピー+削除分の時間がかかってしまう。それを解決するのがWebファイルマネージャだ。

 Webファイルマネージャはブラウザ上からフォルダ追加、名称変更、移動、コピー、削除を行う。操作性はそれほど良くないものの、ローカルドライブとして処理するため、同一ボリューム内での移動は非常に高速だ。

同一ボリューム内の異なる共有フォルダ間での移動。250Mバイトのファイルの移動に1分強かかる(画面=左)。Webファイルマネージャで同様の処理を行ったところ、5秒で完了した(画面=右)

リモートログイン

 ssh/telnetが用意されており、ログインして直接シェルで操作できるため、さまざまなハックに対するハードルをぐっと引き下げてくれる。ただし、標準で起動する/bin/shは日本語を受け付けないので/bin/ashを使うといいだろう。

ディスク追加前と後でmountコマンドの結果を比較。仕掛けが分かってくるとハックの道筋も見えてくる(画面=左)。標準のbusyboxは1.01。1.9.1に差し替えると利用できるコマンドもぐっと増える(画面=中央/右)

QPKG

 TS-409Proには、機能を追加するためのパッケージとしてQPKGが用意されている。QPKGで提供されているパッケージには、前述したMLDonkeyのほか、別のパッケージ管理システムであるIPKGもある。ユーザーによるパッケージはIPKGで提供されていることが多いので、ばりばり拡張したい向きは重宝する。

 また、QNAPフォーラムでの開発も盛んなようだ。英語のフォーラムだが、見出しを拾っていくだけでも興味深いトピックが散見される。

QPKGはそれほど数は多くない。しかし、IPKGをインストールすればパッケージ数は一気に増える(画面=左)。IPKGで提供されているTS-409Pro用のパッケージ一覧。gccもあるので「なければ自分でコンパイル」もOK(画面=右)

QNAPフォーラム。本来読み込みしかできないNTFSの書き込みをサポートする、なんてのもある(画面=左)。QNAPフォーラムで公開されていたモニタリングソフト「QlogR」(画面=右)

不満がないわけではない、しかしもっと評価されていい

 TS-409は日本語化されているとはいえ、ところどころあやしい翻訳が見られる。例えば、RAIDを構成するディスクの一部を切り離した、いわゆる「片肺状態」を表すDegrade Modeは通常「縮退モード」と訳されるが、TS-409では「格下げモード」となっている。また、ダウンロードステーションでタスクを削除するときには「ある本当にあなたが仕事を取り除きたいと思う?」という機械翻訳レベルになっている。

 さらにその選択肢の「ダウンロードファイルを予約」になると日本語として成立している分、ほとんど理解不能なのではないだろうか。原文は「Keep the file already downloaded(ダウンロード済みファイルは残す)」だった。技術系ではない翻訳者が、リソースファイルのみを見て翻訳したような品質の甘さを感じる。もっとも、これらは「/home/httpd/cgi-bin/」以下に点在する「lang_jpn.js」をユーザ自身が修正して対応することができる。

 BEEP音が耳障りなのも改善してもらいたい点だ。警告時などの鳴動をオフにすることはできるが、逆にディスクの利用準備ができたときなど、単なる情報の場合はオフにできないようだ。

 ソフトウェア面ではWebファイルマネージャで時間のかかる処理をタスク登録型にしてもらいたかった。USBドライブの丸ごとコピーであればコピーボタンを使えばよいが、フォルダを指定してのコピーではブラウザ上から操作する。しかし、そのページを閉じると操作がキャンセルされてしまう。

ダウンロードステーションのタスク削除確認画面。意味不明だ(画面=左)。多言語に対応するため、文字列はリソースとしてJavaScriptファイルで定義されている(画面=右)。2時間以上が経過している状態だが、IEがハングしたりするとその時点で終了なのかも。パーセンテージ表示がおかしいのも気になるところ(画面=右)

 ハードウェア的にはPCレスで接続されているにも関わらず、コピーが完了するまでPCを立ち上げっぱなしにしておかなければならない。PCを無駄に立ちあげておかずに済む、というコンセプトから考えれば残念な点だ。

5ベイ内蔵の新機種「S-509 Pro」もある。Celeron 1.6GHz/1Gバイトメモリ/デュアルLAN /デュアルOS/メンテナンス用RGB端子など、いろいろな意味で突き抜けてしまったモンスターマシン

 とはいえ、そのような“甘さ”を差し引いても、TS-409の機能と性能はあまりある。部屋に転がっているHDDの転用からスタートして、後から少しずつ容量拡大を図れるところや、RAID 5利用時のパフォーマンスの高さ、ダウンロードステーションの手軽さなど、ハック以外の部分でもギーク好みのスペックだと言っていい。

 日本ではマイナーなメーカーであるがゆえに「知る人ぞ知る」製品ではあるが、久々に「もっと評価されてもいい」と感じる製品に出会ったという印象だ。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

最新トピックスPR

過去記事カレンダー