「Nehalem? もちろんウェルカムだ」――IDF目前にAMDが優位性をアピール(2/2 ページ)

» 2008年08月20日 00時00分 公開
[鈴木淳也,ITmedia]
前のページへ 1|2       

もう1つの柱“サーバ向けCPU”「Shanghai」と「Istanbul」

 GPUと並んで、AMDの主力となっているのがサーバ/ワークステーション向けCPUだ。2007年末に登場し、初のx86ネイティブクアッドコアCPUとなった“Barcelona”Opteronだが、当初は製造や設計問題から来る出荷目標の未達に悩まされた。だが、2008年に入りようやく製品供給も安定して、当初の困難を乗り越えつつある。AMDサーバ&ワークステーション部門ワールドワイド・チャネルマーケットデベロップメントのジョン・フリー氏は、「OEM市場で“Barcelona”は大きな成功を収めた」とコメントしている。

 同氏が挙げる成功を評価する理由の1つは、HPC市場における“Barcelona”採用事例だ。例えばスーパーコンピュータランキングの「Top500」でTAC(4位)、Oak Ridge National Laboratory(5位)、東京大学(16位)が“Barcelona”を採用しているという。このほか、8-wayのOEM向けシステムが登場したことで、単位システムだけで32コアのマシンを構築できるなど、高いパフォーマンスを要求するシステム市場において、AMDは大きなアドバンテージを持っていることも挙げている。低消費電力とパフォーマンス、特にメモリやI/Oスループットの面でユーザーは“Barcelona”のメリットを享受でき、これからも、低価格を実現するという点で競合相手に立ち向かっていくという。

 同市場におけるAMDの次のステップは、45ナノメートルプロセスルールへの移行となる。2008年の末から2009年の初頭にかけて、“Barcelona”の後継となる「Shanghai」(開発コード名)が登場する予定だ。Shanghaiの最大の特徴は、45ナノプロセスの採用による省電力と高パフォーマンスの実現だが、ほかにもいくつかの点でパフォーマンス改善に向けた取り組みが行われている。1つは3次キャッシュを従来の2倍となる6Mバイトにしたこと、そしてHyperTransport 3.0の採用で最大スループットが従来比2倍以上となる17.6Gバイト/秒にまで向上したことだ。メモリインタフェースはDDR2-800となっているが、ShanghaiでDDR3を採用しなかった理由としてフリー氏は「特に(DDR3メモリチップの)コストの問題」を挙げている。

 Shanghaiの次には、6つのコアを搭載したヘクタコアCPUの「Istanbul」が2009年後半に控えている。Shanghaiの基本デザインを踏襲し、コア数を増やしたバリエーションモデルとなるIstanbulが8コアではなく6コアとなった理由を、フリー氏は「(Shanghai対応システムと)同一のサーマルデザインでの運用を可能にするため」と説明する。CPUソケット上のShanghaiをIstanbulに載せ替えるだけで、そのままパフォーマンス向上を図れるようにするというのだ。

 2010年には12コアの「Magny-Cours」(開発コード名、フランスにあるサーキット名)と6コアの「Sao Paulo」といった2つのバージョンに分岐する。Magny-Coursはハイエンド・ビジネス市場を狙ったMP対応のCPUで、2〜4-way程度のプラットフォームを想定している。なお、この世代からメモリインタフェースでのDDR3採用が開始するとみられ、プラットフォーム向けの開発コード名として「Maranello」(イタリア北部にある都市の1つ)の名称が付与されている。

AMDサーバ&ワークステーション部門ワールドワイド・チャネルマーケットデベロップメントのジョン・フリー氏。2008年末にIntelがネイティブクアッドコアのCPU出荷を予定していることについて「もちろんウェルカムだ。メモリコントローラ採用など、Nehalemに対してAMDは技術で先行している」とコメントした
現行世代(65ナノプロセス)の“Barcelona”と次世代(45ナノプロセス)の“Shanghai”の機能比較

AMDのサーバ/ワークステーション向けCPUのロードマップ。都市の名前を用いた開発コード名が列挙されるなかで、サーキットコースの名称をつけた「Magny-Cours」だけが浮いている。採用した理由についてフリー氏は「速いCPUにふさわしいのは速い車だろう」と答えた
“Shanghai”世代に対応するマザーボードのリファレンスデザイン。これがそのまま出荷されるわけではないという。画像の左下に見えるAMDロゴのついたチップは同社のサーバ向けチップセットで、OEM向けに出荷される予定だ

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月25日 更新
  1. ワコムが有機ELペンタブレットをついに投入! 「Wacom Movink 13」は約420gの軽量モデルだ (2024年04月24日)
  2. 16.3型の折りたたみノートPC「Thinkpad X1 Fold」は“大画面タブレット”として大きな価値あり (2024年04月24日)
  3. 「IBMはテクノロジーカンパニーだ」 日本IBMが5つの「価値共創領域」にこだわるワケ (2024年04月23日)
  4. 「社長室と役員室はなくしました」 価値共創領域に挑戦する日本IBM 山口社長のこだわり (2024年04月24日)
  5. Googleが「Google for Education GIGA スクールパッケージ」を発表 GIGAスクール用Chromebookの「新規採用」と「継続」を両にらみ (2024年04月23日)
  6. バッファロー開発陣に聞く「Wi-Fi 7」にいち早く対応したメリット 決め手は異なる周波数を束ねる「MLO」【前編】 (2024年04月22日)
  7. ロジクール、“プロ仕様”をうたった60%レイアウト採用ワイヤレスゲーミングキーボード (2024年04月24日)
  8. あなたのPCのWindows 10/11の「ライセンス」はどうなっている? 調べる方法をチェック! (2023年10月20日)
  9. アドバンテック、第14世代Coreプロセッサを採用した産業向けシングルボードPC (2024年04月24日)
  10. ゼロからの画像生成も可能に――アドビが生成AI機能を強化した「Photoshop」のβ版を公開 (2024年04月23日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー