GPUと並んで、AMDの主力となっているのがサーバ/ワークステーション向けCPUだ。2007年末に登場し、初のx86ネイティブクアッドコアCPUとなった“Barcelona”Opteronだが、当初は製造や設計問題から来る出荷目標の未達に悩まされた。だが、2008年に入りようやく製品供給も安定して、当初の困難を乗り越えつつある。AMDサーバ&ワークステーション部門ワールドワイド・チャネルマーケットデベロップメントのジョン・フリー氏は、「OEM市場で“Barcelona”は大きな成功を収めた」とコメントしている。
同氏が挙げる成功を評価する理由の1つは、HPC市場における“Barcelona”採用事例だ。例えばスーパーコンピュータランキングの「Top500」でTAC(4位)、Oak Ridge National Laboratory(5位)、東京大学(16位)が“Barcelona”を採用しているという。このほか、8-wayのOEM向けシステムが登場したことで、単位システムだけで32コアのマシンを構築できるなど、高いパフォーマンスを要求するシステム市場において、AMDは大きなアドバンテージを持っていることも挙げている。低消費電力とパフォーマンス、特にメモリやI/Oスループットの面でユーザーは“Barcelona”のメリットを享受でき、これからも、低価格を実現するという点で競合相手に立ち向かっていくという。
同市場におけるAMDの次のステップは、45ナノメートルプロセスルールへの移行となる。2008年の末から2009年の初頭にかけて、“Barcelona”の後継となる「Shanghai」(開発コード名)が登場する予定だ。Shanghaiの最大の特徴は、45ナノプロセスの採用による省電力と高パフォーマンスの実現だが、ほかにもいくつかの点でパフォーマンス改善に向けた取り組みが行われている。1つは3次キャッシュを従来の2倍となる6Mバイトにしたこと、そしてHyperTransport 3.0の採用で最大スループットが従来比2倍以上となる17.6Gバイト/秒にまで向上したことだ。メモリインタフェースはDDR2-800となっているが、ShanghaiでDDR3を採用しなかった理由としてフリー氏は「特に(DDR3メモリチップの)コストの問題」を挙げている。
Shanghaiの次には、6つのコアを搭載したヘクタコアCPUの「Istanbul」が2009年後半に控えている。Shanghaiの基本デザインを踏襲し、コア数を増やしたバリエーションモデルとなるIstanbulが8コアではなく6コアとなった理由を、フリー氏は「(Shanghai対応システムと)同一のサーマルデザインでの運用を可能にするため」と説明する。CPUソケット上のShanghaiをIstanbulに載せ替えるだけで、そのままパフォーマンス向上を図れるようにするというのだ。
2010年には12コアの「Magny-Cours」(開発コード名、フランスにあるサーキット名)と6コアの「Sao Paulo」といった2つのバージョンに分岐する。Magny-Coursはハイエンド・ビジネス市場を狙ったMP対応のCPUで、2〜4-way程度のプラットフォームを想定している。なお、この世代からメモリインタフェースでのDDR3採用が開始するとみられ、プラットフォーム向けの開発コード名として「Maranello」(イタリア北部にある都市の1つ)の名称が付与されている。
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