PCの性能を落とさないセキュリティソフトは?ミニPCに最適なセキュリティソフトを選ぶ 第4回(1/3 ページ)

» 2008年08月28日 12時00分 公開
[瓜生聖,ITmedia]

 低価格なミニPCは、現在のメインストリームをなすデスクトップPCやノートPCと比較すると、やはり性能面での非力さは否めない。また、現在のソフトウェアが要求するスペックも年々高くなる傾向にある。特にセキュリティソフトの場合、常に監視を行うという性質上、システム全体のパフォーマンスに大きく影響するうえ、どのような監視アルゴリズムを用いるのかによって影響を受ける処理内容も異なってくる。

 特集の第4回では、各種ベンチマークテストを行い、セキュリティソフトのインストールによって、実際のパフォーマンスがどれほど低下するのかを確認した。未インストール時とまったく同じパフォーマンスの場合は低下率0%、処理時間が2倍になると低下率100%になる。なお、これらのベンチマークの結果は、OSやCPUアーキテクチャ、メモリ容量などによっても変化する可能性が高いため、すべてのプラットフォームで同じ傾向になるとは限らない。あくまで、EeePC 901-Xでの結果として読んでいただきたい。

ファイルアクセス

 まずはファイルアクセス関連のベンチマークを試してみることにする。

鵜呑みにできる数字ではないものの、この結果は衝撃的だった
  • TPCSBenchmark - FileI/O

 かなり古い話になるが、2006年9月10日、ThePCSpy.comに非常に興味深い記事がポストされた。「What Slows Windows Down?」(Windowsを遅くするのは何だ?)と名付けられたこの記事は、各種ソフトウェアや大量のフォント、コーデックをPCにインストールすることで、どれほど起動時間が遅くなるかをテストしたものだ。これはGIGAZINEでも紹介されたとおり、見たことのある方もいるのではないだろうか。

 この記事はその12日後に「What Really Slows Windows Down?」(本当にWindowsを遅くするのは何だ?)というサブジェクトで、起動時間だけでなく2種類のベンチマークテストの結果を追加した記事にアップデートされた。このうちファイルI/Oに関しては、ノートンインターネットセキュリティ2006の2369%低下をはじめ、衝撃的な結果となっている。

 だが、実際にこの評価に使用されたベンチマークテストプログラムのソースを見ると、ファイルI/Oのテストはファイルオープン、テキスト1行追加書き込み、ファイルクローズ、を20万回繰り返すというもの。そのため、もともとの1回分の処理の単位時間が短く、ウイルスチェックによるオーバヘッドの割合が高くなる傾向にある。例えば、なんらかの処理の際に一律0.1秒の遅れが生じるような場合、その処理自体が10秒かかる処理であれば速度低下率は1%だが、0.01秒しかかからない処理だと1000%になってしまう。同サイトの結果だけ見て「ノートンを入れるとPCの速度が24分の1になる」と早合点しないように。

 今回取り上げたバージョンで試した結果は以下のとおり。


TPCSBenchmark - FileIOの結果。最もソフトウェア間での結果がばらけるテストでもある。ただし、5回試行した結果のばらつきはそれほど大きくなく、各ソフトウェアの傾向を示していることは確か(単位は秒)

 ThePCSPY.comで実施された過去のテスト結果によると、ノートンインターネットセキュリティ2006で2369%だった速度低下は2007版で1515%へと改善されたが、今回のNIS2008ではわずかな改善にとどまる1500%という結果となった。

 一方、2006年にワースト2位だったマカフィーは、今回のトータルプロテクションでなんと5104%というワーストスコアを記録した。実際、経過時間でいえば未インストール時に43秒で完了した処理が37分以上かかるようになり、5回の平均を取るためには3時間以上を費やすことになった。

 G DATAはカスペルスキーとAVAST!のダブルエンジンであるにも関わらず、今回の製品群の中では最も優秀な55%という結果だ。次いでESET、ウイルスバスター、カスペルスキー7と続く。ちなみに、ウイルスバスターは海外ではPC-Cillinという製品名で知られる。ThePCSpy.comの結果ではTrend Micro PC-cillin AV 2006は1288%だったが、それに対して今回のバージョンでは394%となり、大躍進といったところだ。

 もっとも、ThePCSPY.comでテストを行ったプラットフォームはVirtualPC 2004 SP1なので、今回実施したテスト結果と連続性のあるデータとして見るべきではないのも事実。あくまで参考情報として見てもらいたい。

  • 大容量ファイルコピー

 続いて、4Gバイトほどの動画ファイル(正確には4,279,523,332バイト)をClass6の16GバイトSDHCカードからDドライブにコピーする時間を計測した。ファイルオープンは2回(読み込みと書き込み)、シーケンシャルリード/ライトという挙動であるため、パフォーマンスの低下はそれほど大きくはないと予想される。


TPCBenchmarkで好成績だったG DATAが一転して最下位に。ファイルオープン時よりもリード時のオーバヘッドが大きいと思われる(単位は秒)

 結果は、先ほどとは逆にG DATAが最も悪く、22.8%の速度低下となった。最も良かったのはESETの0.6%で、ここまでくるともはや誤差の範囲だろう。NIS2008、トータルプロテクションもそれぞれ2.3%、3.2%と、悪くないスコアだ。一方、ウイルスバスター2008、カスペルスキー7はそれぞれ13.6%、15%と、トップ集団からは1ランク落ちるものの、平均的な結果となっている。

  • 大量zipファイルコピー

 次のテストはトータル約1Gバイトのzipファイル、5096ファイルをSDHCカードからDドライブにコピーするというもの。ファイルサイズは151バイトから1.12Mバイトまでさまざまだ。大容量ファイルコピーのテストに比べるとトータルサイズは4分の1程度だが、ファイルオープンの回数が多くなるために処理時間への影響は大きくなると予想していた。

 実際にはESETが1.5%と最も好成績で、次にThePCSPY.comのテストで散々な結果だったトータルプロテクションが僅差の1.9%、NIS2008が2.6%というトップ集団を形成している。その後を追う形でカスペルスキー7、G DATA、ウイルスバスター2008が続いており、ThePCSpy.comのファイルI/Oテストよりは、むしろ大容量ファイルコピーに近い傾向を示した。


NIS2008、ESET、トータルプロテクションが好成績(単位は秒)

演算処理への影響を調べる

  • 素数計算

 TPCSBenchMarkには10万以上20万未満の素数を求めるテストも含まれている。こちらはファイルアクセスがないため、純粋に演算処理、メモリアクセスの低下率を見ることができる。

 結果はTPCSBenchmarkの精度が低い(秒単位)という理由もあるが、ほぼ誤差の範囲といっていい状態だ。NIS2008が最も悪い結果となっているものの、1回だけ63秒(未インストール時のスコアは56秒)というイレギュラーなタイムが出たのが足を引っ張っている。これはウイルスバスター2008にも言えることで、最短・最長を除いて平均をとればほぼ拮抗した状態になる。


一応グラフにはしてあるが、さらに回数を重ねるとほとんど平均化されていくようだ。カスペルスキー7がほんの少しだけコンスタントに遅いが、誤差の範囲かもしれない(単位は秒)

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