GPUをあらゆる分野で使えっ――CUDAで攻勢をかけるNVIDIANVISION 08(2/2 ページ)

» 2008年08月28日 13時30分 公開
[鈴木淳也,ITmedia]
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グラフィックスコンピューティングの可能性にどよめく

 映像表現の可能性を広げる例として登場したMicrosoftの「PhotoSynth」では、聴衆が思わずどよめくようなデモが行われた。NVISION 08の直前に正式発表されたPhotoSynthだが、その動作デモが紹介されるのはこのキーノートスピーチが初めてとなる。PhotoSynthはデジカメなどで撮影した2D画像を多数つなぎ合わせることで3D画像を構築するソフトウェアだ。ユーザーは2D画像の写真をつなぎ合わせて作られた3D空間をバーチャルツアーで体験できる。

 PhotoSynthとはアプローチの方向性が異なるものの、描画された3Dオブジェクトを専用眼鏡を使って立体視できる技術の活用も進んでいる。キーノートスピーチでは2種類のデモが紹介され、一方は映画の1シーンのような背景がステージになってそのなかで役者が演じているように見せるもので、もう1つは、RTSのAges of Empires IIIを3D化したものだ。映画制作会社のDreamWorksは、今後10年ですべての3D映画を立体視対応にすると表明しているように、映像産業では映像の立体化は大きなトレンドとなりつつある。

Microsoftの「PhotoSynth」は、デジカメで撮影した画像を組み合わせて3Dの立体空間を作り出す。2007年にβ版の技術が公開され、NVISION開催直前の21日に正式版が発表された。写真をつなぎ合わせる処理では個々のオブジェクトを点情報で認識し、それを使って3D空間を描き出す。また、画面を動かすときは個々の写真をつなぎ合わせてスムーズに空間を移動しているようなイメージを作り出している。例えば、ストーンヘンジをさまざまな角度から撮影し、それをPhotoSynthで組み合わせることで、あたかもストーンヘンジ内を歩いているかのような体験が可能になるという

PhotoSynthで描き出されるイメージは、このような、デジカメで何気なく撮影した画像を大量につなぎ合わせたものからも作られる。そのため、遺跡や建物のような立体構造物だけでなく、特定の閉じた空間をバーチャルツアーで再現することも可能だ。例えば、美術館や博物館で撮影した映像をつなぎ合わせれば、バーチャル美術館ツアーを実現できる

バーチャル美術館ツアーでは、写真のつなぎ合わせだけでなく、必要に応じてインターネットでアクセスできる画像データベースなどと連携させることも可能だ。PhotoSynthで再現した国立公文書館のバーチャルツアーで、展示されている独立宣言書を拡大すると、公式のデータアーカイブに収録されている詳細画像を表示できる。同様に、バーチャル美術館では、展示されている絵画を鮮明な画像で閲覧することも可能だ

 仮想世界をより身近にする技術として、ユーザインタフェース(UI)も重要だ。適切にデザインされたUIは、ユーザーに快適な操作環境を提供し、現実世界に近い直感的な操作を可能にする。キーノートスピーチのステージ上で紹介された大画面テレビは、ペンやマルチタッチ操作に対応しており、ユーザーが触れたままに線や点を描画し、オブジェクトの拡大や回転、縮小を簡単に行えた。

 NVIDIAが築き上げてきた強力なGPUパワーを、あらゆる領域に拡大していくことをアピールすることが、NVISION 08の目的とされているが、その冒頭に行われたフアン氏のキーノートスピーチは、その可能性を十分のアピールする内容だったといえるだろう。

キーノートスピーチでは高機能UIを持った近未来的な端末も紹介された。一見すると普通の大画面テレビだが、指やペンで画面に触れると線が浮かび上がってくる。また、メニューで地図を呼び出して、枠のサイズを指で変更したり、地図のズームインやズームアウト、回転などを自由自在に行える。

また、ペンを円を描くように動かすとメニューが出現する。そのメニューから検索窓を呼び出し、バーチャル・キーボードを使って文字を入力、インターネット検索することも可能だ。このように、ビジュアルコンピューティングでは、UIも高度な機能をそれを十分に動かせるグラフィックス性能が必要になることがキーノートスピーチで訴求されている

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