基本スペックはそこそこだが、エントリーモデルながら音質に配慮しているのはVAIOらしいこだわりだ。VAIO独自のDSD録音/再生対応サウンドチップ「Sound Reality」を搭載し、サラウンド音響技術の「Dolby Home Theater」もサポート。コンパクトなボディながら、2.5ワット+2.5ワットのステレオスピーカーを内蔵しており、動画コンテンツの再生時などに音声が貧弱すぎて興ざめしてしまうことはない。
VAIOオリジナルのアプリケーションが充実している点も触れておきたい。ショートムービー作成ソフトの「VAIO Movie Story」、DVDオーサリングソフトの「Click to Disc/Click to Disc Editer」、映像管理ソフトの「PMB(Picture Motion Browser)」、音楽CDやWAVファイルをDSD形式に変換しながら高音質に再生できる「DSD Direct Player」、12音解析技術を利用したおまかせ音楽再生ソフト「VAIO MusicBox」など、市販の単体ソフトに見劣りしないどころか、より使い勝手に優れた部分も少なくないアプリケーション群を備えている。
市販のソフトをよせ集めたようなオールインワンPCでは、インタフェースや操作感がまったく違っていたり、ソフト間の連携がうまくできないことも多いが、VAIO type Jは核となるAV系アプリケーションを自社製で固めているのが強みだ。ハードウェアスペックだけを見れば、同じような構成で安価な製品は見つけられるが、こうした「VAIOならではの楽しみ」といった付加価値はほかでは味わえないだろう。
ただし、本当のライバルはWindows機ではなく、iMacかもしれない。VAIO type Jのデザインを見れば、iMacを少なからず意識したことは明らかだ。確かに、アップルがコストをかけずに自社のMac OS Xをプリインストールして発売できるのに対し、マイクロソフトがOSを供給するWindows機はコストパフォーマンスの面で確かに分が悪い。
とはいえ、奥行きが16センチを切る省スペースと、画質や音質へのこだわり、そして繰り返すようだがVAIO独自のAV系アプリケーションを加味して考えると、VAIO type Jは価格以上に満足度の高い液晶一体型PCといえる。この秋、低価格のオールインワンPCを探している人は、ノートPCだけでなく、同じ予算で大画面かつ高解像度が得られるVAIO type Jもチェックしてみてほしい。
ちなみに、VAIOオーナーメードモデルでは、直販限定カラーとして落ち着いたブラックとブラウンを用意している。仕様については、CPUがCore 2 Duo E8400(3.0GHz)や同E7200(2.53GHz)、メモリが最大4Gバイト、HDDが最大500Gバイト、光学ドライブがBlu-ray Disc、アプリケーションが動画編集用の「Premiere Elements 4」と独自プラグイン「VAIO Edit Components」などを選べる。これらのカスタマイズメニューを利用すれば、予算に合わせた構成が可能だ。性能面で不安な人は、積極的に活用するといいだろう。
ただし、個人的にはデジタルテレビチューナーや秀逸な録画ソフト「Giga Pocket Digital」、ワイヤレス通信機能、ワイヤレスのキーボードやマウスといったメニューも欲しかった。これらがあれば、「VAIO type Lの中位/上位モデルは22型ワイド液晶以上で大きすぎるが、テレビ機能は捨てがたい」といった層にも対応できるだろう。今後のメニュー拡充を望みたい。
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