これでGeForce 9600 GTと戦える──「Radeon HD 4830」は2万円GPU戦線を突破できるかイマドキのイタモノ(2/2 ページ)

» 2008年10月23日 13時01分 公開
[長浜和也,ITmedia]
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得手不得手がはっきり分かれる「4830」と「9600」

 従来のRadeon HD 4800シリーズと同4600シリーズの価格帯におけるすき間を埋め、パフォーマンス的にはGeForce 9600 GTクラスと互角の戦闘力が期待されているRadeon HD 4830だが、実際のパフォーマンスをベンチマークテストによって検証していこう。

 今回比較するのは、競合のGeForce 9600 GTは当然として、Radeon HD 4000シリーズにおける位置付けを知る意味で、Radeon HD 4850とRadeon HD 4670も取り上げる。評価システムは、一連の“イマイタ”レビューのGPU評価で用いている構成を今回も使用する。Radeon HD 4000シリーズのグラフィックスドライバは、AMDがRadeon HD 4830のレビュー用として配布したβ版のCatalystを、GeForce 9600 GTでは、最新の公式版となるForceWare 178.24をそれぞれ適用した。

 なお、ディスプレイ環境にはデルの30型ワイド液晶ディスプレイ「3007WFP」を用いているが、予備検証の段階で2560×1600ドットにおけるRadeon HD 4830のパフォーマンスが現実的なレベルではなかったため、今回の評価作業では解像度を「1280×1024ドット」「1600×1200ドット」「1920×1200ドット」の3パターンに設定した。そのほか、使用するベンチマークテストの種類、軽負荷重負荷のフィルタリング設定は従来と同様だ。

3DMark Vantage:3DMark Score
3DMark Vantage:Graphics Score

3DMark06 3DMark Score
3DMark06 SM2.0 Score

3DMark06 HDR/SM3.0 Score
3DMark06 Perlin Noise (SM3.0)

F.E.A.R.
Enemy Territory-QUAKE Wars Demo

Unreal Tornament 3 (vCTF-Suspense FlyThrough-PC)
Unreal Tornament 3 (DM-ShangriLa-FPS-PC)

Crysis 1.1 GPU_Benchmark
ワットチェッカーで測定した3DMark03動作時におけるシステムの消費電力

 Radeon HD 4830とGeForce 9600 GTのベンチマークテストの結果を比較すると、これまでもRadeonとGeForceの競合で確認されてきた「軽負荷時に有利なGeForce 9600 GT、重負荷時に強いRadeon HD 4830」という傾向が見えてくる。

 3DMark Vantageにおいては、プリセットされているテストモードの総合スコアで、最も負荷の軽い「Entry」モードでGeForce 9600 GTがRadeon HD 4830を上回るものの、ほかのモードではRadeon HD 4830がGeForce 9600 GTを抑えている。また、解像度と負荷条件をカスタマイズして測定した場合の「Graphics Score」は、すべての設定条件でRadeon HD 4830の結果がGeForce 9600 GTを超えた。

 その一方で、3DMark06では、個別テスト項目の「SM2.0 Score」でGeForce 9600 GTが有利であるのに対し、Radeon HD 4830は、総合スコアの「3DMark Score」の重負荷条件とShader Model 3.0が関係するテスト項目でGeForce 9600 GTを上回っている(記事掲載当初の3DMark06の値に誤りがありました。おわびして訂正いたします)。

 ゲームを利用したベンチマークテストでは、ゲームタイトルごとに、Radeon HD 4830とGeForce 9600 GTの有利不利が明確に分かれる。今回ベンチマークテストで使用したゲームタイトルのうち、Unreal Tornament 3とCrysis 1.1 GPU_BenchmarkではGeForce 9600 GTが、Enemy Territory-QUAKE Wars Demoでは、低解像度軽負荷条件以外で、F.A.E.R.では(なぜか)軽負荷条件で、Radeon HD 4830が、それぞれ一方を上回る結果を出している(なお、CrysisにおけるRadeon HD 4850の結果が突出しているように感じるが、繰り返して測定しても同様の傾向となったので、今回はその結果をプロットした)。

ともに「決定的勝利」にいたらず

 このように、価格帯的に競合するRadeon HD 4830とGeForce 9600 GTは、今回のベンチマークテストの結果で見る限り、片方が一方的に有利になることはないものの、解像度が高くなり、フィルタリング設定の負荷が重くなるにつれてRadeon HD 4830がやや優勢になる傾向が確認できる。

 Radeon HD 4850の実売価格は2万円台半ばから後半にかけて分布し、Radeon HD 4830の実売予想価格は1万円台後半から2万円前後、そして、Radeon HD 4670は1万円台半ばから1万円台後半となっている。この3者でベンチマークテストの結果を比べてみると、この価格帯の違いとほぼ同期しているように思えるが、それでも、Radeon HD 4670とRadeon HD 4830の差は大きい(Crysisの結果は例外でRadeon HD 4830とRadeon HD 4670はほぼ同程度で、両者ともRadeon HD 4850から大きく離されている)。

 グラフィックスカードの購入予算として2万円程度を確保できるのであれば、たぶん店頭で「Radeon HD 4830にするかGeForce 9600 GTにするか」と迷うことになる。「ミドルレンジとはいえ最新の3Dゲームタイトルをできるだけ高い画質設定でプレイしたい」と希望するユーザーならRadeon HD 4830を選択し、「画質設定よりいままでプレイしてきたゲームの絶対的なフレームレートを優先したい」のであればGeForce 9600 GTを選択するのが妥当であるように思える。

 一方で、Radeonファン(ATIファンと読み替えてもいい)は、ほぼ5000円間隔(あるいはより狭い間隔)でラインアップが並ぶことになるので、「あと5000円追加するか」「この5000円を節約するか」で迷うかもしれない。3DゲームよりHDコンテンツ再生の優先順位が高いならば、5000円を節約してRadeon HD 4670を選んで後悔はしない。しかし、3Dゲームもそれなりにたしなみます、というユーザーは、Radeon HD 4850にするかRadeon HD 4830にするかで大いに悩むだろう。Radeon HD 4830という選択肢が「増えた」ことは喜ばしいと同時に悩ましいというわけだが、5000円の追加予算に対して周囲(特に誰とはいいませんが)の理解を得られるならばRadeon HD 4850を、説得できなければ(個人的経験では、5000円といえど説得するのは非常に困難)Radeon HD 4830を選択するのが、(いろいろな意味も含めて)無難ということになるだろうか。

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