医療現場の要求に応えるため、CF-H1では、ボディラインから凹凸を極力排除し、ボディにかかった液体のぬぐい残しがないように工夫されている。また、キーボードが搭載されていないだけでなく、コネクタやスロットなどのインタフェースも本体にはほとんど用意されていない。スイッチ類もフラットパネル形式のものが採用されている。さらに、ホディ内部を冷却する排気や吸気用のスリットも設けられないため、ファンレスを前提とした熱設計が施されている。
使う機器が必要なときにはいつでも使えることを要求される医療現場のヒアリングでは、長時間のバッテリー駆動を求める声も多かったという。そのため、CF-H1では、CF-U1で導入された2つのバッテリーパックの搭載とホットスワップ対応が採用されている。片方のバッテリーパックが切れても、もう片方のバッテリーパックでCF-H1を動かしたまま交換ができるため、継続したCF-H1の運用が可能になるとパナソニックは説明している。
保持しやすい構造という要求に対しては、背面に用意されたパームストラップと丸くカーブを描いた背面形状が紹介された。片手で持って使うことが想定されていたCF-U1の背面にも両手で使えるパームストラップが用意されていたが、CF-H1ではふき取り清浄が行いやすい形状が新たに考案され、より使いやすくなっているほか、CF-H1のホディを机に置いたときでも画面が見やすい角度がつけられるような工夫が施されている。
このほか、医療用機器との接続を容易に、かつ、清潔に行うため、無線インタフェースが求められるが、CF-H1はIEEE 802.11 a/b/g/n(nはドラフト2.0準拠)とBluetooth(Ver.2.0+EDR)に対応するだけでなく、医療現場で患者や薬品、点滴などの認識のために普及しているバーコードリーダやRF-IDリーダを内蔵できる。
製品説明会では、インテル事業開発本部 本部長の宗像義恵氏が、インテルが進めているMCAについて説明を行った。MCAは医療現場で実際に使える端末としての要求を実現するために提案されたプラットフォームで、耐衝撃性能や耐薬品性能を持たせるだけでなく、使いやすいエルゴノミクスデザインを取り入れたボディ、スタッフが交換を考えないですむ長時間バッテリー駆動などが求められる。宗像氏からは、MCAの運用試験を行った各医療機関で、投薬ミス、カルテの転記ミスが減少し、患者のバイタルサインの記録時間や当直スタッフの引きつぎで行われる関連情報の確認時間が短縮されたといった導入効果が紹介された。
また、医療現場でCF-H1の導入試験を行った国立成育医療センター 医療情報室長の山野辺裕二氏は、政府が推進する「ITによる医療の構造改革」は診療報酬請求のオンライン化などの医療現場の外に限られていると現状の問題を述べたうえで、医療現場におけるPCの利用状況を説明した。現在、国立成育医療センターでは、ナースセンターのカルテ棚がPC端末に置き換わり、患者のベッドには「ベッドサイド端末」が導入されている。また、いくつかの病院ではスタッフがPDAをベースにした情報端末を利用しているという。(記事掲載当初、山野辺氏の氏名とPDAに関する記述に誤りがありました。おわびして訂正いたします)
しかし、PDAは、落として壊してしまうケースもあるほか、画面が小さい、バッテリー駆動時間が短いなどの問題があり、ベッドサイドの端末はベッドごとに導入しなければならないためコストが高くなるといった問題を抱えている。これを解決するために、手押しのワゴンにノートPCを設置した「ワゴンPC」も導入されているが、医療スタッフの機動性が損なわれるなどの新たな問題が出ている。
山野辺氏は、重さ1.5キロのCF-H1について、「取っ手があれば重くても大丈夫」という見解を示したほか、指で行える操作性を評価。CF-H1を導入することで可能となる今後の医療現場のIT化については、ナースステーションに設置された端末との兼用や、治療行為中に困難なコミュニケーション端末としての活用といった例を示した。
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