大事なのは“正しい色”を表示できること――液晶ディスプレイの「色域」を理解しようITmedia流液晶ディスプレイ講座II 第1回(2/3 ページ)

» 2008年11月11日 10時00分 公開
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似て非なる「Adobe RGB比」と「Adobe RGBカバー率」

 ところで広色域をうたった液晶ディスプレイは、特定の色域(xy色度図の三角形)に対する面積比でアピールしていることが多い。「Adobe RGB比〜%」や「NTSC比〜%」といった表記を製品カタログで見たことがある人もいるだろう。

 注意したいのは、これらはあくまで「面積比」であって、Adobe RGBやNTSCの色域をすべて包含している製品は非常に少ないということだ。仮に「Adobe RGB比120%」の液晶ディスプレイがあったとしても、液晶ディスプレイの色域とAdobe RGB色域におけるRGB値のズレがどの程度あるのかは分からないという問題がある。非常に誤解しやすい表記なので、スペック上の数字に惑わされないようにしたい。

 こうしたスペック表記上の問題をなくすため、一部のメーカーは色域の面積比ではなく「カバー率」という表現を使っている。例えば「Adobe RGBカバー率95%」と表記してあれば、その液晶ディスプレイはAdobe RGB色域に含まれる95%の色域を再現できることになり、実に明快だ。

 ユーザーの側から見れば、面積比よりもカバー率のほうが親切で分かりやすい表記といえる。すべての表記がカバー率に変わるのは難しいと思うが、カラーマネジメントを想定した液晶ディスプレイでは色域がxy色度図で公開され、ユーザーが判断できるようになってほしいものだ。

液晶ディスプレイの色域を語る目安となる「面積比」表記と「カバー率」表記の違い。Adobe RGBを例にすると、面積比では「Adobe RGB比100%」でも、カバー率にすると100%を下回ることが多い。実用に即しているのはカバー率なので、数字が大きいほどいいと勘違いしないようにしたい

「広色域=高画質」という誤解

 液晶ディスプレイの色域をチェックするうえでは、必ずしも「広色域=高画質」とはいえない点も重要だ。これは誤解している人も多いのではないだろうか。

 色域は液晶ディスプレイの画質を図るスペックの1つなのは確かだが、色域だけで画質が決まるわけではない。広色域の液晶パネルから実力を引き出すには、それをドライブする制御系の優劣が問われる。要するに、色域は単に広いだけではなく、用途に応じて正確な「色」を出せることが大切なのだ。

 広色域の液晶ディスプレイを検討するときは、色域変換機能の有無をチェックするとよい。色域変換機能とは、Adobe RGBやsRGBといった目的の色域に合わせて、液晶ディスプレイの色域をコントロールする機能だ。例えば、Adobe RGBカバー率が高い広色域の液晶ディスプレイであっても調整メニューでsRGBモードを選択すると、画面に表示される色がsRGBの色域に収まるようになる。

 実際のところ、色域変換機能(Adobe RGB色域/sRGB色域に両対応)を備えた液晶ディスプレイは、まだまだ少ないのが現状だ。しかし、フォトレタッチやWeb制作など、Adobe RGB色域/sRGB色域の正確な発色が求められる用途では、色域変換機能は必須といってもよい。

 広色域をうたいながら色域変換機能を持たない液晶ディスプレイの場合、正確な発色が必要な用途では、広色域がマイナスに作用するケースも出てくる。こうした液晶ディスプレイは、基本的に液晶パネル本来の色域にRGB各色8ビットのフルカラーをマッピングして表示する。よって、sRGB色域の画像を表示すると、発色が鮮やかになりすぎてしまうことが多いのだ(sRGB色域を正確に再現できない)。

sRGB色域の写真をsRGB対応の液晶ディスプレイで表示した例(写真=左)と、広色域だがsRGB非対応/色域変換機能なしの液晶ディスプレイで表示した例(写真=右)。右は鮮やかに見えるが、写真の一部で彩度が不自然に高くなり、撮影意図や記憶色からの隔たりが大きい

広色域であるからこそ求められる高画質化技術

 液晶ディスプレイが広色域になって再現できる色の範囲が広がり、ディスプレイ上での色の確認や画像調整などの機会が増えることで、sRGB程度の色域ではさほど気にならなかった階調性の崩れや、視野角の狭さに起因する色度変移、画面の表示ムラといった問題が目立ってくることは少なくない。繰り返すようだが、単に広色域の液晶パネルを搭載しただけでは、高画質な液晶ディスプレイにはならないのだ。そこで、広色域を生かすための技術にも注目したい。

 まずは階調性を高める技術だが、多階調の内部ガンマ補正機能がキーになる。これはPC側からのRGB各色8ビット入力信号を、液晶ディスプレイの内部でRGB各色10ビット以上に多階調化して、再び最適と思われるRGB各色8ビットに割り当ててから画面表示する機能だ。ガンマカーブを整えることで、階調性や色相ズレが改善される。

 液晶パネルの視野角は、一般に画面サイズが大きくなるほど違いが見えやすくなるが、特に広色域の製品では色度の変移が気になってくる。視野角による色度変移は液晶パネルの駆動方式でほぼ決まり、多少は斜めから見ても発色が変わらないものほど優秀だ。液晶パネルの駆動方式について詳細は省くが、一般的に色度変化の少ない順に並べると、IPS系、VA系、TN系となる。TN系の技術は進歩しており、数年前と比べて視野角特性は改善されているが、VA系やIPS系との差は依然として大きい。発色性能や色度変移の少なさを重視するなら、やはりVA系かIPS系がベターだ。

 表示ムラを低減する技術としては、ユニフォミティ補正機能が挙げられる。ユニフォミティとは、画面の色や明るさ(輝度)の均一性を指す。ユニフォミティに優れた液晶ディスプレイは、画面の輝度ムラや色ムラが少ないということだ。高機能な液晶ディスプレイだと、画面上の各位置で輝度と色度を測定し、その誤差を内部で修正するシステムを搭載している。

ユニフォミティ補正の有無を比較。ユニフォミティ補正を搭載する液晶ディスプレイ(写真=左)は、非搭載の液晶ディスプレイ(写真=右)と比べて、画面の輝度や色の均一性が高い。上の2枚の写真は表示ムラを強調するために同一のレベル補正を行っており、実際にはこれほどムラが目立つことはない

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2009年3月31日