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AMD、45ナノ“Shanghai”Opteron発表──Denebは「Phenom II」に元麻布春男のWatchTower(2/2 ページ)

» 2008年11月13日 14時01分 公開
[元麻布春男,ITmedia]
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2009年のFioranoまで継承されるSocket F(1207)

 AMDは、2009年に次世代のプラットフォームとして“Fiorano”(開発コード名)の投入を予定している。クアッドコアのShanghaiに加え、6コアの“Istanbul”(開発コード名)をサポートするFioranoは、AMD製チップセット(SR5690 I/Oハブ、およびSP5100 サウスブリッジ)を用いたプラットフォームで、Hyper Transport 3.0に対応したものとなる。CPUソケットがSocket F(1207)のままであることから考えて、DDR2メモリ対応と推定されるが、ここがOpteronプラットフォームでDDR2-800メモリが本格的に普及するタイミングだとも思われる。Fioranoの主要な新機能としては、第2世代PCI ExpressとI/O仮想化への対応も挙げられる。

 6コアのIstanbulは、Shanghaiのアーキテクチャを6コアに拡張したもので、コア数の増加に伴い、共有3次キャッシュメモリが8Mバイトに増える。このほか、電力を含めたシステム管理機能が強化されることになっているが、それでも、マイクロアーキテクチャに大きな変更はないと考えられる。Hyper Transport 3.0は現行のHyper Transport 1.0に対し上位互換性を持つため、ShanghaiだけでなくIstanbulもFioranoと第2世代プラットフォームの両方で利用可能だ。

 AMDは、2010年にリリース予定のプラットフォーム“Maranello”でCPUソケットを「Socket G34」に変更する予定だが、対応するCPUの開発コード名(“Magny-Cours”および“Sao Paulo”)と“Fiorano”のチップセットを継承すること以外の詳細について明らかにしていない(DDR3メモリに対応することはほぼ確実だが)。

2011年にいたるサーバ向けCPUのロードマップでは、2009年のFioranoまでSocket F(1207)が継承され、2010年のMaranelloでSocket G34に移行する(写真=左)。AMDの資料で示されていたIstanbulのブロックダイヤグラムと予定されている機能(写真=右)

 このように複数世代にわたりプラットフォーム互換性を維持していることがOpteronの特徴の1つであり、プラットフォームの寿命が長いという点にメリットがある。その一方で、マイクロアーキテクチャなどの大幅な強化が難しかったり、新しいメモリデバイスへの対応が遅れるというデメリットもある。これらはトレードオフの関係にあり、どちらがよいと断言することはできない。

 Fioranoのシステム構成では、すべてのCPUが1ホップでほかのCPUに内蔵されるメモリコントローラへアクセスできなかったり、キャッシュメモリを参照すること(スヌーピング)ができなかったりという制限がある(対角のCPUへ直接アクセスするリンクがない)。これはエクスクルーシブキャッシュを搭載し、スヌーピングによるペナルティが大きいOpteronには有利ではないが、CPUのソケット互換性を守る以上、Hyper Transportのリンク数を増やすことはできないという事情があり、避けられない。本質的な解決は少なくとも“Maranello”世代まで持ち越されるだろう。

 インテルは、間もなく正式に発表される“Nehalem”世代でプラットフォームの一新を図る。プラットフォームを変えるというのは、性能や機能を強化するタイミングとしても適している。AMDが公開している“Shanghai”とインテルの“Penryn”世代Xeonとの比較では、Javaや浮動小数点演算の性能で“Shanghai”が上回るとしている(ただし、整数演算では“Shanghai”は必ずしも優位とは限らない)が、“Nehalem”世代では逆転されるかもしれない。

“Shanghai”Opteronと“Harpertown”Xronとのベンチマーク結果の比較。“Shanghai”Optreonは浮動小数点演算で優れた結果を示している

Denebのブランドは「Phenom II」に

 だが、プラットフォームの更新は当然のことながらコストがかかる。現在の金融危機において、コストのかさむプラットフォームの更新がユーザーからどのように受け止められるのかは予断を許さない。既存のプラットフォームの延命を図るAMDの戦略が受け入れられる可能性も考えられる。

 PCUSERにアクセスしている多くのユーザーにとって気になるのは、サーバ向けのOpteronより、やはりクライアント向けのCPUだろう。“Deneb”という開発コード名で知られるクライアントPC向けCPUについて公開されている情報は、登場が2009年第1四半期になること、ブランドが“Phenom II”になること、そしてAMD 790FXチップセットやAMD 790Xチップセットと“Deneb”を組み合わせたプラットフォームをドラゴンと呼ぶこと、である。クリスマスプレゼントには間に合わないが、2009年の春を楽しみに待ちたい。

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