まず、“Shanghai”の発表記事で紹介したロードマップからアップデートされた情報を紹介しておこう。Analyst Dayで公開されたロードマップによると、やはり“Maranello”はDDR3のプラットフォームとなることが確認された。Shanghaiと“Istanbul”が現行の第2世代プラットフォームと“Fiorano”(第3世代プラットフォームというより、第2.5世代という感じだが)で共用できること、FioranoがDDR2メモリのプラットフォームであることも同じく確定したようだ。サーバの運用で重要となりつつある仮想化の次世代技術ではI/Oにフォーカスがあてられているが、その実現のためにはチップセットが重要な役割を果たすことになる。それを反映して、Fioranoにおいても仮想化に関する機能が強化される。
クライアント向け製品のロードマップでは、2008年でブームとなった低価格ミニノートPC/ULCPC(Ultra Low Cost Personal Computer)市場に対して、AMDがどのような対応を図るのかがAnalyst Dayで最も注目されていた。現在、この市場はインテルのAtomがほぼ独占した状態にあり、そう遠くない将来、VIAのNanoが再挑戦すると考えられている。
Analyst Dayにおける結論をいえば、短期的な将来において、AMDにAtomやNanoに対抗する製品は登場しない。2009年までを見渡したクライアントPC向けプラットフォームのロードマップでは、“Mini Notebook”のところだけプラットフォームの開発コード名が記されていない。AMDは、この理由について「ボリュームゾーンのメインストリーム事業に経営資源を集中させるため」としているが、Mini Notebook市場が無視できないものになりつつあることは、ロードマップにわざわざ自社プラットフォームのないMini Notebookを書き入れていることでも明らかだ。
2011年までのクライアントPC向けCPUのロードマップでも、Mini Notebook専用のCPUは存在しない。Ultra portableからMini NotebookのハイエンドをカバーするCPUとして、“Conesus”(65ナノプロセスルール)と“Geneva”(45ナノプロセスルール)が用意されているが、両方とも低価格市場のセグメント向けに開発されたものではない。インテルのAtomに相当するものではなく、ULV版のCore 2 Duo、あるいはCore 2 Solo(もっといえば、Celeron ULV)に相当するモデルになる。
これを補うかのように、ノートPC向けプラットフォームのロードマップには、Conesus対応のプラットフォームである“Congo”の下に“Yukon”プラットフォームが書き込まれている。Yukonは、Conesusのシングルコア版CPUである“Huron”に、Congoより1世代前のチップセットを組み合わせることで、コストを引き下げることを目指したと考えられるが、これでも低価格のミニノート市場を完全にカバーできないと、AMDはロードマップで自ら認めたと見ることもできる。
本来、AMDはこの市場向けに“Bobcat”というAtom対抗のコアを開発すると、2007年7月のAnalyst Dayで示していた。しかし、Bobcatの構想を語った当時のCTOであったフィル・へスター氏は2008年の4月に辞任している。AMDに限らず、マイクロソフトやインテルを含め、米国の会社では基本的に個人に責任と権利(予算)が与えられる。Bobcat構想の責任者が辞めたということはBobcatの運命を暗示しているといえるだろう。
ただし、Bobcatが完全にキャンセルなのかというと、これは解釈によって変わってくる。おそらく、へスター氏が語っていたBobcat(マイクロアーキテクチャの実体を伴った製品企画)は存在しない。しかし、低消費電力で低価格のx86系CPUの構想としてのBobcatはおそらく生きている。それが、今回のAnalyst Dayで示したロードマップにMini Notebookというジャンルが書き込まれていることの意味だと考えられる。
ノートPC向けプラットフォームのロードマップで、もう1つ注目しておきたいのが、2009年のメインストリームノートPCのプラットフォームとして“Tigris”が書き込まれていることだ。2007年秋(といっても開催されたのは12月だが)のAnalyst Dayでは、ここに“Shrike”プラットフォームが書き込まれていた。
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