インテル、「豪快で繊細なCore i7」の実力をアピール

» 2008年11月18日 17時36分 公開
[長浜和也,ITmedia]

 「これ以上の性能は必要なのか」とは、新しいCPUが登場するたびに聞こえてくる意見だ。しかし、インテル代表取締役社長の吉田和正氏は、Core i7の発表会冒頭で、「その特徴をひとことでいうならば、その“性能”です」といいきる。

 ここまで進化してもまだ性能が必要なのか、という疑問に対して、吉田氏は、「インターネットで提供されるリッチなコンテンツを、より快適に、よりスムーズに利用したいというニーズはなくならない」とその理由を述べるとともに、高い性能と優れた電力効率を実現する新しいアーキテクチャを投入していくと説明した。

 吉田氏は、ユーザーが高性能を求める理由として「いまや、PCを使って1つのことだけをやっている人はいない。 何かをしながら、ほかのアプリケーションやサービスが動いているのがごく当たり前に行われている」とマルチタスクの使い方が一般的になったことも取り上げている。また、Core i7のキャッチフレーズ「その速さ、ビックバン」が示すように、Core i7の性能が従来の40%増しになったことをデータとともにアピールしている。

ユーザーも高性能をまだまだ望んでいる、というのがインテルの主張。マルチタスク、応答性、処理速度の高速化で8割のユーザーが満足するという(写真=右)。それを受けて、Core i7のキャッチフレーズとなったのが「その速さ、ビックバン」だ。実際、Core 2 Extreme 9770から40%の性能向上をCore i7-965は実現しているという(写真=右)

 Core i7の具体的な特徴と機能を紹介したインテル技術本部 本部長の及川芳雄氏は、Core i7を「さまざまな技術的課題を克服したCPU」と表現し、その特徴として「大容量のシステム帯域幅」「先進のパワーマネジメント機能」「インテル・ターボ・ブースト・テクノロジー」「インテル・ハイパースレッディング・テクノロジー」の4項目を挙げる。

 大容量のシステム帯域幅を実現するために、Core i7では、メモリコントローラをCPUに内蔵、DDR3をサポートし(メモリバスクロックは1066MHz)、さらに従来のFSBから変わるバスとしてQuickPath Interconnect(QPI)を採用している。また、及川氏はコア間で共有できる8Mバイトの3次キャッシュメモリの搭載も紹介された。

Nehalemが紹介された当初は、柔軟なコア構成が可能になるスケーラビリティが訴求されていたが、発表会では、内蔵されたメモリコントローラや3チャネルのメモリバス、FSBに変わって導入されたQPIなどが、性能を向上させる要素として紹介されていた

 先進のパワーマネジメント機能では、コアごとにC6ステートに移行できることを紹介、パワーゲートを遮断することでリーク電流が大幅に削減されるとアピールしている。インテル・ターボ・ブースト・テクノロジーは、最後まで明らかにされなかったCore i7の新機能で、その詳細は8月に行われたIntel Developer Forum 2008で紹介されている。

「動的に最適な性能を実現する機能」として及川氏が説明するこの機能は、CPUに用意されたTDPのマージンや、システムにかかっている負荷の状態、走っているスレッド数の関係で休んでいるコアによってできたTDPの余白を利用して、動いているコアの動作クロックをさらに引き上げるものだ。すでに、モバイル向けのPenrynコアCore 2シリーズで導入されているが、Core i7では、デスクトップPC向けのCPUで導入されただけでなく、引き上げるクロックのステップをこれまでの1段階から2段階と増やされた。

省電力機能で注目されるのはコアごとにC6ステートまで移行できる強力な電力管理機能だ(写真=左)。また、システムの状態と動いているスレッドの状態に合わせて休止したコアの余白を用いたオーバークロック機能ともいえるインテル・ターボ・ブースト・テクノロジーも、この強力な電力管理機能によって実現されたといっていい(写真=右)

 インテル・ハイパースレッディング・テクノロジーは、Pentium 4で導入されていた、1つの物理的コアで2つのスレッドを一緒に処理する技術だ。Core i7でも1つ物理コアで2つのスレッドを処理できるので、今回登場したCore i7のクアッドコアでは、最大8つのスレッドが一緒に処理できることになる。

 発表会では、 インテル・ターボ・ブースト・テクノロジーとインテル・ハイパースレッディング・テクノロジーによって向上するパフォーマンスを紹介するデモが行われ、コーレルの「DVD MovieWriter 7」でエンコード処理にかかる時間を比較して最大18%の性能向上が実現するのが示された。

 また、ゲストスピーカーとして、カプコンからプロダクト製作部技術研究室室長の伊集院勝氏が招待され、ゲーム開発現場から見た高性能CPUの必要性について説明した。伊集院氏は、カプコンが開発環境として導入しているMTフレームワークが並列処理を重視してマルチスレッドに対応しているが、ゲームで処理するオブジェクトが大量になるにつれてマルチスレッドの重要性が増し、CPU処理に大きな影響を与えているという。

 伊集院氏によると、グラフィックス描画の精緻化はフィールドや地形を複雑にさせており、そのため、起伏にあわせた命中判定や遮蔽可否の判定などで、CPUの負荷が増大しているだけなく、リアルで、かつ激しいアクションをするキャラクターの登場によって、地形や状況判断でCPUに処理させる必要性も増しているそうだ。

 MTフレームワークはCore i7に対応する予定で、現在その最適化が進められているが、開発段階でもCore i7で動かすと従来から30%の性能向上が確認されたと伊集院氏は報告している。今後のゲームにおいても、状況に適したリアクションをキャラクターに行わせたり、これまで難しかった物理シミュレーションとAIの融合を進めて新しいゲームを提案したりするのに、さらなるCPUパワーが不可欠になると、伊集院氏はPCゲームの進化にCPUの進化が必要であることをアピールした。

 説明会では、カプコンのロスト・プラネット・ベンチマークテストでCore i7-965 Extremeを搭載したシステムがCore 2 Extreme 9650を搭載したシステムよりFPSで50%程度も値が優れているのが紹介されるデモや、日常生活に即した状況を再現して、HDムービーの再生とウイルススキャン、ビデオSkype、ビデオデータのトランスコードを同時に行ってもCore i7-965 Extremeのシステムは性能が落ちない状況などが紹介された。

ロスト・プラネットベンチマークテストで示されたFPSの値。左の画面はCore i7-965 Extremeを組み込んだシステム(ただし、メモリはDDR3×3Gバイト)で右の画面はCore 2 Extreme 965(メモリはDDR2×2Gバイト)で構成されている(写真=左)。インテルが発表会で示した各種ベンチマークテストの結果では、3DMark VantageのCPUテストの物理演算とAI処理でそれぞれ44%、55%の性能向上が確認された(写真=右)

一般的なユーザーの利用状況を再現したデモでは、HDムービーの再生とビデオSkypeとウイルススキャンとトランスコードを同時に行ってもCore i7-965 Extremeのシステムはパフォーマンスが落ちないことが示された(写真=左)。また、ハイパースレッディング・テクノロジーのデモでは、エンコード処理速度が18%程度向上する状況が紹介されている(写真=右)

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