では、「P5N7A-VM」に搭載されたGeForce 9300 mGPUの実力をベンチマークテストを用いて検証してみよう。比較対象には、ASUSのIntel G45 Express搭載マザーボード「P5Q-EM」を用意した。テスト環境はCore 2 Duo E6750を基幹に構成している。
項目 | テストシステムの構成 |
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CPU | Core 2 Duo E6750(2.66GHz) |
メモリ | DDR2-800 1GB×2 |
Graphics | 内蔵グラフィックス |
HDD | Seagate ST3320620AS SATA 320GB 7200rpm |
OS | Windows XP Professional(SP3)/Windows Vista Ultimate(SP1) |
最初に、チップセットとしてのパフォーマンスを確認しておこう。PCMark05を使った測定結果では、Intel G45 Expressの値に対して、PCMarksで175ポイント、約3.3%程の優位性が確認できた。MemoryのスコアはIntel G45 Expressが優勢であるが、GraphicsではGeForce 9300 mGPUがIntel G45 Expressに差を付けている。なお、CPUやHDDのスコアはどちらもほぼ同等だ。
3Dグラフィックスのパフォーマンスでは、DirectX 9対応の3DMark05(Windows XP Professionalで測定)の3DMarksで1.8倍、DirectX 10に対応する3DMark06(Windows Vista Ultimateで測定)の3DMarksでは2倍以上という大差でGeForce 9300 mGPUがIntel G45 Expressを上回っている。
なお、同じ統合チップセットで3Dグラフィックのパフォーマンスが優れているAMD 790GXとも比較してみたところ、CPUとしてPhenom X4 9350eを搭載した構成でほぼスコアが拮抗し、CPUをPhenom X4 9950に変更するとAMD 790GXがGeForce 9300 mGPUを3D性能で上回る結果となった。構成プラットフォームがまったく違うので、正確な比較にはならないものの、Phenom X4 9950の価格はCore 2 Duo E6750より高価であることを考慮するならば、GeForce 9300 mGPUのグラフィックス性能は、AMD 790GXと同レベルと見ていいだろう。
そこで、Phenom X4 9950とほぼ同じクラスのCPUとなるCore 2 Quad Q6600を用意して追加テストを行ってみると、PCMark05のCPUスコアは、Core 2 Quad Q6600が7726、Phenom X4 9950が7677と、ほぼ同レベルとなっている。その上で3DMark05、および3DMark06の3DMarksを比較すると、GeForce 9300 mGPUの結果はAMD 790GXにはわずかに及ばなかった。さらに、AMD 790GX側のCPUをPhenom X4 9350eに変更して測定した結果においても、GeForce 9300 mGPUはAMD 790GXを下回っている。
ただ、PCMark05のGraphicsテストやFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3のように、2D系およびDirectX 8.1レベルのベンチマークテストではAMD 790GXを大きくリードしている。
なお、解像度を変更して測定した3DMark06では、Intel G45 Expressの設定でアンチエイリアシングを有効にできなかったため、無効にした設定でのみテストを行っている。もっとも、Intel G45 Expressの3Dパフォーマンスは、ほかの統合型チップセットと比較できるレベルにはない。GeForce 9300 mGPUとAMD 790GXの比較においては、高解像度になるほどその差が少なくなってくるものの、GeForce 9300 mGPUが高解像度におけるパフォーマンスでAMD 790GXに優れることを示していた。
マザーボード | P5N7A-VM | P5Q-EM | P5N7A-VM | M3A78-T | M3A78-T |
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CPU | Core 2 Duo E6750 | Core 2 Duo E6750 | Core 2 Quad Q6600 | Phenom 9350e | Phenom 9950 |
Chipset | Geforce 9300 mGPU | Intel G45 Express | Geforce 9300 mGPU | AMD 790GX | AMD 790GX |
PCMark05:PCMarks | 5375 | 5200 | 5663 | 4720 | 5645 |
PCMark05:CPU | 6811 | 6823 | 7726 | 5917 | 7677 |
PCMark05:Memory | 5455 | 5603 | 4752 | 4046 | 4871 |
PCMark05:Graphics | 3100 | 2410 | 3175 | 2361 | 2776 |
PCMark05:HDD | 5265 | 5228 | 5231 | 4958 | 4915 |
PCMark05:HDD-XP Startup | 8.8 | 8.4 | 8.5 | 8.9 | 8.7 |
PCMark05:Video Encoding | 484.7 | 492.3 | 422.5 | 452.2 | 576.6 |
PCMark05:Image Decompression | 37.5 | 37.7 | 34.4 | 25 | 32.6 |
PCMark05:WMV Video Playback | 58.7 | 58.9 | 57.2 | 36.3 | 43.3 |
3DMark05:3DMarks | 3693 | 1968 | 3907 | 4135 | 4482 |
3DMark06:3DMarks | 1892 | 878 | 1914 | 2005 | 2117 |
FINALFANTASY XI Official Benchmark 3:High | 6313 | 3587 | 6005 | 4577 | 5109 |
FINALFANTASY XI Official Benchmark 3:Low | 9785 | 5155 | 9294 | 7436 | 8365 |
Intel 4シリーズは、Intel Clear Video Technologyによるハードウェア動画再生支援機能が実装され、それまでのIntel 3シリーズから動画再生環境が大きく向上した。その性能はRadeon HDシリーズに実装されているAvivo HDやGeForceシリーズが実装しているPureVideo HDに匹敵する。
GeForce 9300 mGPUには、PureVideo HDが実装されているので、HDコンテンツの再生でCPU負荷を大幅に軽減できる。そこで、Intel G45 ExpressとGeForce 9300 mGPUのそれぞれで、ハードウェア動画再生支援機能の効果を再生時におけるCPU負荷率で比較してみた。
GPUに用意されたハードウェア動画再生支援機能を利用するためには、その機能に対応した再生ソフトが必要だが、今回は「Corel WinDVD 9」を用いている。再生するコンテンツは、MPEG-4/AVCで圧縮されたもので、再生時の負荷はほかのコーデックを使った場合よりも重たくなる。CPU負荷率の測定は、1秒単位で60秒間行い、CPU使用率の推移をグラフにしている。テスト環境は、先のベンチマークテストと同様で、CPUにはCore 2 Duo E6750を組み込んだ。
測定した結果では、Intel G45 ExpressもGeForce 9300 mGPUもCPU使用率を5〜20%台まで下げていた。両者ともほぼ同じような効果だが、値を細かく比較するとIntel G45 ExpressのCPU負荷率が10〜20%で主に分布しているのに対し、GeForce 9300 mGPUでは5〜15%に収まっているなど、より効果的に再生支援機能が働いていることがうかがえた。
3D性能では、AMD 790GXをわずかに下回ったGeForce 9300 mGPUだが、その差はわずかで、従来の統合タイプのグラフィックスコア、特にインテルのチップセットと比べればGeForce 9300 mGPUの3Dパフォーマンスはまったく違う次元に達しているといえる。3Dゲームも軽く楽しみたいけれど、予算の都合でグラフィックスカードを追加できない自作PCユーザーにGeForce 9300 mGPUはとても適した選択肢となるだろう。
今回テストでは、Windows XPおよびWindows Vistaのインストール作業を何回となく行ったが、特にトラブルに遭遇することもなく、そのスムーズな導入作業はインテル製チップセットのマザーボードと比べてなんら変わることはなかった。ドライバの作り込みもしっかり行われているようなので、自作PCに慣れていないユーザーでも安心して使えるはずだ。
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