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第3回 写真も年賀状も高速印刷がいい――複合機7モデルのスピードは?複合機08-09年モデル徹底検証(2/3 ページ)

» 2008年12月12日 18時30分 公開
[榊信康,ITmedia]

PCからL判写真用紙にフチなし印刷

 続いてPCから独自の写真データ(容量は約1.8Mバイト/約600万画素)をL判サイズにフチなし印刷し、その所要時間を計測した。用紙はメーカー純正の最高級写真用紙を使用している。エプソン製品が「写真用紙クリスピア<高光沢>」、キヤノン製品が「キヤノン写真用紙・光沢プロ[プラチナグレード]」、日本HPが「アドバンスフォト用紙」だ。

 キヤノンの光沢プロ[プラチナグレード]は12月11日に発売されたばかりの最上級写真用紙となる。日本HPは光沢タイプの上級写真用紙として、プレミアムプラスフォト用紙も展開しているが、ここ数年の日本HPはアドバンスフォト用紙の使用を推奨しており、またプリントエンジンもアドバンスフォト用紙に最適化しているとのことなので、こちらを選択した。また、C6380は自動用紙判別機能を使用するとバーコードの読み取りに時間を要すため、用紙の種別はあらかじめ手動で設定してから印刷を行っている。

 プリンタドライバでの印刷設定は上位から2つのモードで、基本的には「最高画質」と「標準」の2パターンだ。C6380のみ「標準」と「最高画質」(最大dpi)に相当する設定の間に「高画質」という設定があるが、これは下のグラフでは割愛している。

PCから写真データをL判写真用紙にフチなし印刷した場合の速度。左が標準設定、右が最高画質設定の結果だ

 それでは結果を見ていくが、「標準」の設定で最も高速だったのはEP-901FとEP-801Aで、12〜13秒程度とほぼ同等の時間で印刷が完了した。これら2モデルはプリントエンジンが同等なことから、印刷速度は基本的にほとんど変わらない。これに小差で続くのがMP630とMP980、第3グループがPM-A840SとC6380となった。MP620は少々遅れたが、それでも35秒程度なので長時間待たされる印象はない。

 肝心の「最高画質」の設定では、MP630とMP980が36〜39秒程度と飛び抜けて高速だが、これは光沢プロ[プラチナグレード]を使用する場合、ほかの用紙では最高画質の設定となる「品位1」が選択できず、「きれい(品位2)」が選択できる上限だからだ。この新しい写真用紙とプリントエンジンのマッチングなどを考慮して、現状では品位1の設定を省いていると思われる。無論、画質は良好なので不満はないが、冒頭で述べたような厳密な横並び比較という意味では少々釈然としないものが残る(画質の検証は次回を予定)。

 MP630とMP980に続くのがEP-901F、EP-801A、MP620の3モデルで、いずれも1分強で印刷が完了した。以後は90秒でPM-A840S、約100秒でC6380の順だ。ここで賞賛すべきはエプソンの飛躍だろう。昨年のモデルは上位機もPM-A840Sくらいのスコアだったが、約1分で印刷が完了するようになった。

 逆に昨年のモデルよりも「最高画質」の設定で速度が遅くなったのがC6380だ。昨年のモデル「HP Photosmart C6280 All-in-One」は1分を切っていたが、今年は約40秒加算された。もっとも、C6380はプリントエンジンのコンセプトからして従来とはまったくの別物なので無理もない。速度は遅くなっても写真印刷時の階調性は向上しているのだから、納得はできる。

 ちなみにC6380は前述の通り、「標準」と「最大dpi」の設定の間に「高画質」の選択肢があり、この設定では45秒程度で印刷が完了した。アドバンスフォト用紙では「最大dpi」と「高画質」の画質差は小さいため、印刷品質とスピードのバランスを考慮すると「高画質」の設定でもいいだろう。

メモリカードからL判写真用紙にダイレクト印刷

 PCからの写真印刷に続き、ここではメモリカードを複合機に直接セットしてダイレクト印刷を行った場合の所要時間を計測した。使用した写真データは、PCからの印刷テストと同じものだ(約1.8Mバイト/約600万画素)。この画像ファイルを標準的なSDメモリーカード(東芝 SD-C02GTR/2Gバイト)にコピーし、複合機からダイレクト印刷を実施している。

 ダイレクトプリントでは、データの処理時間も複合機の性能のうちなので、印刷ボタンを押した段階で計測を開始した。つまり、PC環境でのテストとは違って、複合機で写真データを処理する時間も含まれている。印刷した用紙は、エプソン製品が「写真用紙クリスピア<高光沢>」、キヤノン製品が「キヤノン写真用紙・光沢プロ[プラチナグレード]」、日本HPが「アドバンスフォト用紙」だ。

 複合機の印刷品質は「きれい」と「標準」の2パターンだ。ただし、C6380はダイレクト印刷時に印刷品質が選択できないので、下の表では「標準」のほうに入れている。

複合機本体でSDメモリーカード内の写真データをL判写真用紙にフチなし印刷した場合の速度。左が標準設定、右がきれい設定の計測結果だ

 「標準」設定での印刷速度は、5モデルが10秒台後半から30秒台前半につけている。特にEP-901FとEP-801Aは15〜17秒程度、MP980とMP630は21〜22秒程度と速い。以後はPM-A840Sが32秒程度、C6380が40秒程度と続き、MP620は約1分と最も遅かった。MP620は染料インクのノズル数がMP630の半分という点が影響を与えている。

 驚かされるのは、単に印刷速度が速いだけでなく、PCからの印刷とそれほど差が出ていないことだ(印刷解像度がPCと同等とは限らないが)。PC経由の印刷ではスプール時間を含めていないにも関わらず、数秒の違いしかない。今回印刷したのが600万画素のコンパクトデジカメクラスの写真データだったとはいえ、処理性能の向上は目を見張るものがある。これならば、高画素数のデジタル一眼レフカメラで撮影した写真データでも、それほどストレスなく印刷できるだろう。

 次いで「きれい」の設定だが、MP980とMP630が42〜44秒程度と高速で、その後に1分40秒以内で残りの機種が続いている。C6380は「きれい」に該当する設定がないが、最高画質でダイレクト印刷をする場合も「標準」と同じ時間だと考えると、MP980やMP630並に高速だ。

 こちらのスコアも、PCからの印刷時間と大差ない。ダイレクト印刷は購入時の標準設定で用いることが多いため、高画質の印刷モードはオマケという印象がある。だが、処理速度が向上し、PCと遜色(そんしょく)ない速度を出せるようになったのだから、こちらをデフォルトの設定にしてしまうのも悪くない。ことにPIXUS MPシリーズなどは「標準」設定との差が15〜20秒程度なので、率先して最高品質に設定するのがベターに思う。

A4普通紙にカラーコピー

A4普通紙のカラーコピー速度。印刷品質は標準の設定だ

 カラーコピーのテストでは、「標準」の印刷品質でのみ計測を行った。印刷に用いたサンプルは独自の画像データだ。コピーボタンを押下してから排紙が完了するまでの時間を計測している。EP-901FはADFがあるので、これを用いた場合の時間も別途計測した。

 結果はご覧の通りで、EP-901Fが21秒程度(原稿台からのコピーの場合)と優秀な成績を残している。次いでEP-801A、MP980、MP630が24秒程度だった。忍耐力にもよるが、個人的に許容できるのはこの辺りまでだ。1枚の原稿をコピーするだけならば、30秒をオーバーしてもよいが、複数の原稿となれば、それなりの時間になってしまう。しかも複数枚の原稿では、原稿を交換するために機体のそばで待機しなければならないので、余計にストレスがたまってしまう。

 これを解消するのがADFなのだが、EP-901FのADFでのスコアが一番速いのだから皮肉なものだ。むしろ低速な機体にこそADFの搭載を求めたい。

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