「Eee PC 901-16G」で電脳航海に挑む勝手に連載「海で使うIT」(2/3 ページ)

» 2009年01月05日 10時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]

縦方向168ドットの不足は航海に影響するか

 次に気になるのが、画面の表示エリアの狭さだ。多くのPC用航法ソフトは1024×768ドットを最小解像度として想定しているため、1024×600ドットのNetbookでは、縦方向に168ドット不足することになる。また、(これは人にもよるが)航海中におけるPCの操作はマウスをメインに使うため、ツールバーのクリックで機能を呼び出すことが多くなるが、そのツールバーが隠れてしまったり、航海データの表示枠が画面から切れてしまったりすると使い勝手が大きく損なわれることになる。

 今回評価で用いた「Software On Board」と「SailCruiser」では、ツールバーもデータ表示枠も切れることなく、画面のレイアウトは通常のノートPCと変わることはなかった。もちろん、表示される海図の範囲は狭くなるが、航海で海図を参照する分にはそれほど不便を感じることはない。航海中に参照するのは、針路、速度、WayPointまでの方位と距離といった数値データであることが多いし、海図で自船の位置を確認したい場合も自船の周囲が把握できれば十分なので、「168ドットの不足」があっても航海計器としての使い勝手に、特に不便を感じることはなかった。

左側のThinkPad X40は12.1型ディスプレイで1024×768ドット表示、右側のEee PC 901-16Gは8.9型ワイドディスプレイで1024×600ドット。多彩な画面レイアウトを持つSailCruiserで海図と航海情報を表示させて比較する。第二海塁を右端中央に表示すると、1024×768ドットで中央下寄りに表示される猿島が1024×600ドットではスケールに一部が重なってしまう

SailCruiserで4分割表示をしてみる。ハイウェイビューやツールバー、ステータスバー、航海情報表示枠などに違いは見られない

「重い」ENCとC-MAPはスムーズに表示できるか

 電子海図とPC用航法ソフトをすでに使っているスキッパーがNetbookで気になるのは、性能に制約のあるハードウェアで海図表示のスクロールやズーム変更がスムーズに行えるか、ということと、GPSデータをプロットしながらログデータの保存や自船追尾に対応した海図のスクロールなどが正しく行われるのか、ということになるだろう。

 ENCにしてもC-MAPにしても、航法ソフトは複雑なデータベースに収録された情報を海図に表示しながら、ルート、WayPoint、GPSで取得した位置情報に方位、速度といった航海情報をリアルタイムで処理しながら表示を更新していかなければならない。高機能の航法ソフトになると、コンパス表示やふかんのハイウエイビューといった複数のアニメーションも同時に処理して表示する機能を有していたりする。CPUとグラフィックス性能がローエンドクラスで、システムメモリも1Gバイトといまの水準としてはやや少ないNetbookで、そのあたりの挙動は使い勝手に影響していないだろうか。

 今回の実験航海は、海図に収録されているオブジェクトが比較的多い城ヶ島から三浦半島の西岸に至る海域で、Software On Boardに導入されているC-MAPのレベルEと、SailCruiserで導入したS-57形式ENCの入港図や沿岸航海図を同時表示できる設定で行った。

 Software On BoardもSailCruiserも海図データと一緒に収録されている膨大なオブジェクトをすべて一括して読み込んでしまうので、海図ファイルを開くときには時間がかかってしまう仕組みになっている。ただ、この段階の待ち時間は単純にデータの読み込みにかかっているので、SSDを使っているNetbookが1.8インチ厚のHDDを搭載するモバイルノートPCより速かったりする。これは、海図をスクロールして別な海図セルを開くときに顕著で、航法ソフトの多くはその都度新しい海図セルを読み込んで表示しているが、その待ち時間が通常タイプのノートPCよりSSD搭載のNetbookが短く、かえってスクロールがスムーズに感じることもあるほどだ。

Netbookの処理能力で電脳航法に問題なし

 その代わり、Netbookでは、海図のスクロールにおいて収録されているオブジェクトやテキストの表示で通常タイプのノートPCより待たされることが多かったが、その体感的なタイムラグは通常タイプのノートPCで1秒程だったのがNetbookでは2〜3秒かかる程度だ。

 ただしこれは、航海準備段階で行われるルートのプランニングで、広範囲の海図を移動してスクロールやズームの変更をすると待たされると感じるが、航海中に自船の周辺をチェックしたりルートの変更や方位と距離を確認したりする狭い海域を扱う操作ならNetbookでもスムーズに処理を行える。

 GPSプロッターとしての挙動にも、とくに異常はない。今回の実験航海では、GPSをBluetoothで接続して2秒に1度の割合で4時間ほどログデータの書き込みを行ったが、GPSデータの取りこぼしや、航海情報表示の遅延などは確認されず、自船位置の変更に伴なう海図のスクロールも問題なく表示されていた。

 今回行った実験航海において、Netbookでも処理速度や表示速度、海図データの読み込み速度などに起因する使い勝手は通常タイプのノートPCとほとんど変わらないことが確認できた。画面サイズが小さいために海図データや航海情報の表示が小さくなることに抵抗を感じるスキッパーもいるだろう。これも、画面のカスタマイズで表示フォントや表示エリアを大きくしたり、海図の表示設定で表示させる情報を選択する(水深は表示しない、重要な情報はボールドにするなど)ことで、対策は取れる。

コックピットからキャビンテーブルに設置したEee PC 901-16Gに表示したSailCruiserの画面を見る。このレイアウトはSailCruiserにプリセットされているものだが、ユーザーがカスタマイズしてデータ表示領域を大きくすることも可能だ

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