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» 2009年01月09日 11時00分 UPDATE

山田祥平の「こんなノートを使ってみたい」:時代を築くVAIOが現れた──「VAIO type P」開発者の証言 (1/3)

時代の流れに大きな変化を与える製品には、オーラのようなものを感じさせられる。VAIO type Pのオーラはどこから来ているのか。開発者の言葉にその手がかりを探してみた。

[山田祥平,ITmedia]

 ソニーはこれまでトランジスタラジオやウォークマン、そしてハンディカムなどなど、数多くの“イノベーション”を実現してきた。例えば「ウォークマン」は、身にまとうかのように音楽を鑑賞するスタイルを確立した製品としてあまりにも有名だ。

 そのソニーが2009年の初頭に投入した「VAIO type P」。そこには、パーソナルコンピュータの新たな時代を創造する、まさにソニーでなければ登場させることができなかった提案が感じられる。VAIO type Pには、ウォークマンのような1つの時代を作り上げるイノベーションを予感させるオーラがあるのだ。

 今回は、VAIO type Pの開発に携わったVAIO事業本部の伊藤好文氏(企画戦略部門企画部 Mobile PC課プロダクトプロデューサー)と鈴木一也氏(同事業部NotebookPC事業部シニアプログラムマネージャー)に話を伺い、VAIO type Pに何を持たせたのかを当事者から探ってみた。

kn_syohei_01.jpgkn_syohei_02.jpg VAIO事業本部 企画戦略部門企画部 Mobile PC課プロダクトプロデューサーの伊藤好文氏(写真=左)と同事業部NotebookPC事業部シニアプログラムマネージャー鈴木一也氏(写真=右)

AtomとVAIO type Pの出会いは必然だった

──私は、Atomでならなければならない必然性を持ったパッケージングをVAIO type Pで初めて見ました。ほかのPCメーカーが新製品をリリースするこの時期に満を持してソニーがAtom搭載ノートPCを登場させたという印象です。

伊藤 VAIO type Pの開発期間はほかのVAIOシリーズと比べても長いですね。1年半くらい前に、今の時代に求められる小型モバイルPCを根本から考えることから始めました。その中では、モバイル機器にとって今はどういう時代なのかを追求しています。

 いまでは、携帯電話で何でもできてしまいます。そういう時代だから、携帯電話やスマートフォンで十分と思っているユーザーも多いですが、フルファンクションのPCを外に持ち出したいユーザー層もいるはずだと考えたのです。そういうユーザーは、キーの打ちやすさやディスプレイの解像度で妥協するわけにはいきません。そういうことを考えているうちに、そのようなPCを実現するための最適なソリューションとして、インテルからMenlow(開発コード名、Atom Zシリーズとシステムコントローラハブで構成されるプラットフォーム)が登場したのです。

鈴木 私はもともとVAIO type Uの担当でした。VAIO type Uは、超低電圧版のCPUをベースとしてPCでしたが、その開発が終わって、次に何を作ろうかと議論しているなかで、Menlowプラットフォームの話が出てきたんですね。超低電圧版CPUをベースにした製品開発を長くやってきましたが、そのときにもインテルに対してもっとTDPが低いモバイル向けCPUが必要だとリクエストしてきました。Menlowの登場でそれがようやくかなったというところです。

 もし、VAIO type Pに超低電圧版のCPUを搭載することになったら、ボディの厚さが現在の19.8ミリが25ミリになってしまうでしょうね。ボディを薄くするのは難しいと思います。25ミリの厚さでも、いまのVAIO type Pに搭載できた機能のうち何かをあきらめることになります。例えば、非常に小さなバッテリーしか搭載できないとか、WWANやBluetoothも無理、ワンセグチューナーなんてとんでもないといったことになるでしょう。

kn_syohei_04.jpgkn_syohei_05.jpg VAIO type U VGN-UX71。液晶ディスプレイをスライドさせるとキーボードが姿を現す。その小ささが多くのユーザーに受け入れられなかったと評価されているが、ストロークや打鍵感など、別の要因もあるのではないかと、思ってみたりもする(写真=左)Menlowマシンとして2008 International CESで東芝が展示していた基板サンプル。MenlowはCentrino Atomというブランド名で立ち上がったものの、2008年の間は採用するデバイスが思うように伸びず、いつの間にかブランド名も消えてしまった。2009年になってようやく搭載する製品が増えつつある(写真=右)

最初に使いやすいサイズありき

──サイズに関しては、最初から目標があったのですか。

kn_syohei_09.jpg 開発において試作されたモックアップ

伊藤 多くのモックアップを作って、手に持ったときに最もしっくりするものを選んだ結果、いまのVAIO type Pで実現したボディサイズになりました。ちょうどダイレクトメールで使われる封筒と同じサイズです。

 一般的なノートPCは、カバンにいれて持ち運びます。平日のビジネスシーンなら、必ずカバンを持っているでしょうから、サイズのことをあまり考える必要はありません。でも、休日にビジネスで使うような大きなカバンを持ってでかけることはありませんよね。カバンを持つとしてももっと小さいわけです。その小さなバッグにも入る小さなサイズを実現したかったのです。そのサイズとペットボトルを少し超える程度の重量が実現できれば、個人が使うノートPCも外に持ち出すシーンが増えていくはずです。

 サイズと重さの条件が整った上で、ノートPCを外に持ちだしたくなるような楽しい使い方を提案するために、位置情報のアプリなどをインストールしてVAIO type Pという1つのパッケージにしました。

鈴木 OSでも、本当はWindows XP版とWindows Vista版の両方を投入したかったのです。でも、製品企画的にどちらかを選ばなければならないという事情がありました。もともと、VAIO type Pではコンテンツ再生という側面に力を入れる計画でした。チップセットに実装されたハードウェアデコーダーで実現する動画表示能力がAtomの処理能力に対してアンバランスなほど機能が高すぎたからです。この「アンバランスな高機能」を使わない手はないということで、コンテンツ再生により適したWindows Vistaが望ましいという結論に達したのです。

伊藤 その一方で、携帯電話と一緒に持ち歩く小型PCの付加価値として「位置情報」を重視しています。携帯電話と比較して高解像度を表示できるディスプレイによる一覧性のよさや、入力しやすいキーボードを装備していることを考えると、小型PCの付加価値として位置情報の利用は見逃すことはできません。地図を表示しつつ、スポット情報を表示する手軽さ、そして検索性のよさなどを合わせて考え、そこにたどりつきました。ワンセグモデルにはGPSレシーバーは内蔵されていないのですが、でもプレースエンジンを使ったりBluetoothのGPSレシーバーなどと組み合わせて位置情報をフル活用できます。

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