Titaniumシリーズは、PCI版のX-Fiシリーズの上位モデルと同様、ゲーム用オーディオAPIであるEAX ADVANCED HD 5.0のハードウェアアクセラレーションに対応している。これによって、ゲームに登場するオブジェクトの定位だけでなく、移動に伴う音の変化や反響などの環境音までも再現可能で、臨場感あふれるサウンドが体験できる。また、バッファとして64MバイトのX-RAMを備えることで、Quake4、BattleField2、Unreal Tounament 3といった対応ゲームのパフォーマンスを高められるとしている(最下位モデルのTitaniumのみ容量は16Mバイト)。
ただしWindows Vistaでは、従来3Dサウンド用のAPIに使われてきたDirect Sound HALが廃止され、Direct Sound 3DやEAXといったAPIが使えなくなっている。よって、Windows XP時代のゲームをVistaでプレイする場合はステレオのみの対応となってしまう。これを回避するため、TitaniumシリーズにはCreative ALchemyという仕組みが用意されている。PCI版X-Fiシリーズに用意されたものと同様に、Direct Sound 3DやEAXの命令をVista対応のOpenALに変換することでハードウェアアクセラレーションを可能にするものだ。設定ツールのALchemyはインストールされたゲームを自動的に認識し、手動でハードウェアアクセラレーションを有効にすることができる。ALchemyのデータベースにはすでに多くのゲームが登録されており、また、更新も行われている。自動認識しない場合は手動での設定も可能だ。すべてのゲームが動く保証はないが、気になる人は動作確認リストを参照してほしい。
エフェクトが強力かつ豊富というのは従来からのSound Blasterシリーズの特徴だが、Titanumシリーズでもそれは変わらない。PCI版のX-Fiシリーズと同様、ゲームやエンタテインメント、オーディオクリエイション(音楽制作)といった使用用途に合わせてシステムを最適化する「モードアーキテクチャ」が採用されており、エフェクトやスピーカー/ヘッドフォン構成も用途に応じて個別に設定が可能となっている。
例えば、音楽鑑賞時にはマルチスピーカーでホールやジャズクラブといった音場を再現するエフェクトにプラスして圧縮ソースに適したダイナミックレンジを拡大する「X-Fi Crystalizer」をオン、ゲームプレイ時には長時間でも疲れないイコライザー設定かつヘッドフォンでバーチャルサウンドといった具合だ。
モードの切り替えには一瞬音が途切れる(切り替え時はすべての再生を停止することが推奨される)ほか、動作が不安定になる場面も見られた(切り替え以降、アプリケーションを再起動するまで音が出なくなる)。設定項目が多く、モードごとに異なる内容の把握にも時間や慣れが必要なのもマイナス点だろう。X-Fiオーディオチップのパワーを最大限に使うための仕組みであり、オーディオクリエイションモードにおけるルーティングや出力バランスの調節機能などを考えればほかのモードと共用できない部分があるのもうなずけるのだが、もう少しスマートにできないかと思わないでもない。とはいえ、新たにアプリケーションごとにモードを切り替えるツールも用意されているので、一度設定してしまえば面倒は少なくなる。
ゲームからDTMまで活用可能なTitaniumシリーズを駆け足で見てきたが、いかがだっただろうか。MIDIコネクタこそないが、ASIO対応によりDTMにも十分使えるはずだ。モード切り替えなど一部動作が不安定な部分もあるが、そこはドライバなどのアップデートに期待したい。
なお、本製品の対応OSはWindows VistaとWindows XPともに64ビット版/32ビット版をサポートしている。最上位のFatal1ty Champion Seriesは同社直販のクリエイティブストア価格で2万2800円、Professional Audioは1万7800円と安くはないが、エントリー向けのTituniumならば1万2800円で購入可能だ。ゲーマー向けのサウンドカードとして名をはせたSound Blasterシリーズだが、Dolby Digital LiveやDTS Interactiveのサポートなど、従来の用途とは異なる提案を図っているのが興味深い。定番サウンドカードの最新版として、今後の進化の方向性にも注目したい。
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