日本AMD 代表取締役社長の吉沢俊介氏は、2008年の成果として、45ナノメートルプロセスルールを採用したCPUの積極的な投入や、デジタルテレビとハンドヘルド向け事業の売却によるCPUとGPUへの事業集約、そして、AMDがファブレスになったことで開発とマーケティングに集約できるようになったことなど、すべてを前向きに評価した上で、急激に悪化している世界経済の状況についても、AMDにはチャンスであるととらえ、2009年は「チェンジをチャンスにする年」とアピールした。
「明確な存在理由がない企業は消滅する」と語る吉沢氏は、AMDの存在理由について、将来唯一の汎用CPUとなると予測するx86系CPUを開発する技術を有する2社のうちの1つであり、最先端のGPUを開発できる技術を有する2社のうちの1つであると述べた上で、CPUとGPUの最先端技術をもつ唯一の企業であることがAMDの「存在理由」と説明する。
AMDの2009年における戦略としては、「ヘッドルームはかなりある」と吉沢氏が評価する45ナノプロセスルールCPUで新製品を積極的に投入し、AMDの強味であるCPUとチップセット、GPUで構成されるプラットフォームを提供していくとともに、「Netbookと通常のノートPCをつなぐ」(吉沢氏)製品のために投入されるプラットフォームである「Yukon」と「Congo」、そして、2008年に登場して好評だったAMD 780シリーズチップセットの後継となるRS880の名前が、特に期待されるものとして吉沢氏から紹介された。
また、実験的な段階から実用段階へ入りつつあると吉沢氏が分析しているGPGPUについても、「ATI Stream」の推進は当然として、いままでNVIDIAが強かったワークステーションの分野でも、「ATI FirePro」ブランドで切り込んでいく考えを示している。
2009年に予定されている新製品の計画については、Opteronなどのサーバ系プラットフォームが日本AMD マーケティング&ビジネス開発本部 エンタープライズプロダクトマーケディング部 部長の山野洋幸氏から、Phenomなどのコンシューマー系プラットフォームが日本AMD マーケティング&ビジネス開発本部 コンシューマープロダクトマーケディング部 部長の土居憲太郎氏から説明された。
どちらも、すでに公表されているロードマップから変更はなく、Opteronでは、2009年にSocket FとSR5690、SP5100で構成される“Fiorano”が登場し、それに対応するCPUとして2代目の“Shanghai”と6コアの“Istanbul”が登場、2010年にはSocket G34とSR5690、SP5100で構成されるプラットフォームの“Maranello”とそれに対応するCPUの“SanPaulo”が登場する。
山野氏は、6コアCPUのIstanbulとFioranoについて、「単にコアが増えるだけでなく6コアをフルに活用できる技術を導入する」と説明し、その1つとして新しい電力管理技術を開発していることを明らかにした。
コンシューマー向けでは、すでに登場しているDragonプラットフォームに続いて、メモリがDDR3対応となるDragon AM3が2009年に登場するほか、メインストリームデスクトップPC向けの「Pisces」、メインストリームノートPC向けの「Tigris」が2009年に予定されている。Piscesに対応するCPUとして名前が挙がっているのは“Propus”“Rana”“Regor”で、これらに対応するチップセットにはRS880が登場する。さらに、ノートPCプラットフォームでは2010年にクアッドコアCPUの“Champlain”を採用するプラットフォームの「Danube」が控えている。
また、Ultraportableのカテゴリーでは、「Athlon Neo」として発表されたばかりのYukonとその上位クラスとなるCongoが2009年に登場し、2010年にはCPUとして“Geneva”を採用する「Nile」プラットフォームが予定されている。また、YukonとCongoではデスクトップPC向けの低消費電力版が2009年に予定されていることも紹介された。
土居氏は、AMDのコンシューマー事業として重要な位置付けとなっているプラットフォームブランドの「AMD HD! エクスペリエンス」にも言及し、2009年では720pの動画撮影ができるようになったデジタル一眼レフとデジタルカメラも対象として拡大していくほか、AMD HD!エクスペリエンスのロゴを取得した富士通のFMV-BIBLO NF/C60HとNECのLaVie G タイプL(e)が2009年春モデルとして登場し、HDMIで接続した大画面テレビでハイビジョン映像がそのまま楽しめるようになるなど、その領域が拡大していることをアピールした。
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