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“解像度不問”の高速読み取りを実現――「ScanSnap S1500」を試すナンバーは3倍、速度は8倍!?(4/4 ページ)

» 2009年03月11日 15時00分 公開
[瓜生聖,ITmedia]
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管理ツールとしての完成度をアップした「ScanSnap Organizer」

 ScanSnapで取り込んだ文書の管理ツール「ScanSnap Organizer」もバージョン4.0L12となり、リボンインタフェースを採用した新しいインタフェースに一新された。中でも注目される新機能はマーカー切り出し機能とキーワード機能だ。

 マーカー切り出し機能は原稿の取り込みたい範囲を市販のマーカーで囲んでおくと、そこだけを別のファイルとして切り出す機能だ。新聞や雑誌の記事をスクラップする際に重宝する。マーカーはピンク、イエロー、ブルー、グリーンといった一般的なものが利用できる。

サンプル原稿はソフトバンク クリエイティブ「C Magazine」2006年4月号松浦健一郎氏の記事。マーカー切り出し画面。切り出される部分が赤い枠で示される(画面=左)。保存方法を「1つのファイルに保存する」を選択すると複数のマーカー範囲が一つのPDFファイルに束ねられて出力される(画面=右)

 また、重要なテキストにマーカーを引いておくと、「検索可能なPDFファイルに変換」を行った際に、その部分がキーワードとして登録される。キーワードもバージョン4.0L12の新機能の1つで、PDF文書情報の「キーワード」を編集、登録、表示できるようになった。これを利用してサムネイル上にキーワードを表示したり、フォルダへの振り分けを行ったりすることができる。キーワードの編集はマーカーによる読み取りだけではなく、手動で範囲を指定してテキスト認識したり、キーボードから手動で入力することも可能だ。

登録されたキーワードがサムネイル上に表示される(画面=左)。振り分け条件を設定して、特定キーワードが含まれるファイルをフォルダに振り分けることができる。ただし、対象となるフォルダはScanSnapフォルダのみで、振り分けタイミングは手動だ(画面=右)

キーワードは手動で設定することもできる。マーカー読み取り時に誤認識した場合もここから修正する(画面=左)。ScanSnap Organizerビューアからは範囲を指定してテキスト認識を行い、キーワードのほか、タイトルなどに登録することもできる(画面=右)

 キーワード機能の実装によって管理ツールとしての利用価値はかなり高まったように思う。だが、残念なことにキーワードをはじめとするScanSnap Organizerの有用な機能、検索可能なPDFに変換やオフィス文書への変換はScanSnapで出力したファイルでなければ利用できない。これは非常に残念な点だ。

 このような管理ツールの場合、「PC上にあるすべての(PDF)データを一括管理できる」ということが絶対条件だ。なぜなら超整理法にもある「ポケット1つ原則」、つまり、「ここを探せば必ず見つかる」「ここになければ絶対にない」という原則が成り立たなければ、「見つからなかったけれどたぶんどこかにある、でももしかしたらないかもしれない」ということになりかねないからだ。そうなると「探しても見つからなかったけれど、もっと探せば見つかるのか、それともそもそもないのか分からない」という不毛な(だが、日常生活においてはめずらしくない)状態に陥ってしまう。

 特にScanSnapの場合はオートシートフィーダを搭載したドキュメントスキャナだ。ScanSnapで読み取ることのできないもの、例えば厚紙やビニール素材のもののために複合機やフラットベッドスキャナを併用している人も少なくないだろう。あるいは電子データから作成したものや、ほかの人が作成したものをメールで受け取ったりと、ソースとなる紙媒体が存在しないPDFファイルもたくさんあるはずだ。おそらく「ScanSnap OrganizerはScanSnapで読み取った文書の管理ツールであって、PDF文書の管理ツールではない」ということなのだろうが、ScanSnap Organizerの完成度が高まれば高まるほど、PDF文書の管理ツールとして利用したいというユーザーのニーズは高まるのではないだろうか。

ScanSnapで読み取ったPDFでなくてもScanSnap Organizerに登録・表示はできるものの、キーワードの編集や検索可能なPDFに変換などの機能が適用できるのはScanSnapで読み取ったPDFのみだが……(画面=左)。実はこのPDFファイルは初代ScanSnap「fj-4110EOX」で生成したもの(PDF変換に「PFU Scanbox Pro」と表示されている)。ちょっとがっかり(画面=中央)。Acrobatでキーワード編集すればScanSnap Organizerでもキーワード管理することができる(画面=右)

「PDF InfoMaker」はPDF作成アプリケーションを変更することができるフリーソフトだ(画面=左)。PDF InfoMakerの作者であるpapy氏のサイト(画面=右)

まだあった「伸びしろ」に驚かされる名機

 ScanSnap S1500をトータルで見ると「4ケタのモデルナンバーは伊達ではない」と思わせるに十分な機能向上だと言える。特にHDDの容量単価が1ギガバイトあたり8円を切り、OSがハンドルできる限界以上にメモリを搭載している環境がめずらしくない現状では、低解像度モードでの読み取りを選択する唯一の理由は読み取り速度だったのではないだろうか。それがまさかの「解像度不問の高速読み取り」の実現により、ノーマルモードやファインモードの優位性を吹き飛ばしてしまった。

 もちろん、コンパクトな画像サイズが求められる局面や、メールに添付するためにファイルサイズを小さくしたい、というニーズのためには有用ではある。だが、逆にそういった利用方法のために、オリジナルのデータは高解像度のまま、メールで送信する際にファイルサイズを小さくしたり、画像を縮小するような機能がScanSnap Organizerに追加されれば、より便利に使えるのではないかと感じた。

 また、ScanSnapは世代を重ねた結果、ユーザーの利用方法にもノウハウが蓄積されてきている。「モアレを軽減する」というオプションを追加したり、あるいは「コミック」「雑誌(文字中心)」「雑誌(写真中心)」のような、原稿のタイプによる読み取り設定をプリセットで用意するなど、明確な目的を持って購入を考えているユーザーをターゲットにした機能強化という点ではまだ、今後のバージョンアップに期待できる部分も残されている。

 そのほか、Adobe Acrobatが同梱されているのも競合製品との差別ポイントではなくなってきているとはいえ、見逃せないポイントだ。同ソフトウェアは実売価格3万円前半だが、プラス1万円以下でS1500が購入できると考えるとお得感も高い。ただし、ScanSnap OrganizerとAdobe Acrobatは機能がかぶる部分もあったり、Adobe Acrobatで作成したPDFファイルはScanSnap Organizerでの利用に制限があったりといったちぐはぐさを感じることは否めない。Adobe Acrobatが付属していなかった過去には簡単なPDFの編集機能(ページ順の変更など)を提供するためにScanSnap Organizerを付属していたという側面もあったのかもしれないが、今となっては2つのソフトウェアの関係性は微妙になってしまった。

 Adobe Acrobatはバンドル専用パッケージであるため、これを省くことでS1500の価格が1万円弱になるということはありえない。だが、単に同梱されている、という以上の関係性が見いだしにくい現状では「Acrobatいらないからもっと安くして」というユーザーが増えることも考えられる。

 メーカーとしてはPDF文書の管理ツールであれば「楽2ライブラリ」を使う、というのが本来のあり方かもしれないが、完全に独自のデータファイルを採用している楽2ライブラリに対し、ScanSnap Organizerの場合は実際の保存フォルダ以下に.organizerというフォルダが作られる以外は、実際のフォルダ、ファイル構成をそのまま扱う。そのため、ScanSnap OrganizerをインストールしていないPCであっても、PDF文書は整理された状態で閲覧することが可能だ。このオープンなバランス感覚が優れているだけに、現在の閉鎖的な制限が悔やまれる。競合他社からの乗り換えを検討しているユーザーの受け入れのためにも、ぜひ検討していただきたいと思う。

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