「家電を買って明るい農村!」政策でPCが売れる?山谷剛史の「アジアン・アイティー」(1/2 ページ)

» 2009年03月18日 11時30分 公開
[山谷剛史,ITmedia]

 金融危機で、PCメーカー各社の決算が総崩れという状況で、中国政府は国内の内需を刺激すべく、農村部を対象にした家電購入政策「家電下郷」(発音はジャー ディエン シャー シャン)を本格的に取り組み始めている。テレビのニュースでも「ようやく、家に冷蔵庫がきた!」と満面笑顔の農村男性が紹介され、日本の企業も「この政策をきっかけに、中国の農村部に活路が見いだせるかも!」といった論調が出てきている。

 こうした日本企業の思惑通り、「家電下郷」政策で中国の農村部で家電とともにPCも一気に普及するのだろうか。

それはそうと、家電下郷ってなんですか?

家電下郷対象製品であることを示すロゴマーク

 「家電下郷」という言葉は日本企業の経営者にも耳にするようになっているが、この政策を詳しく解説した日本語の記事がほとんどない状況なので、まずは家電下郷がどういう政策なのかを解説しよう。

 家電下郷とは、「政策で指定された地域の農村住民が、政策参加ショップで対象製品を購入した場合に限り、役場の担当部署で農村在住を証明する身分証と購入証明を提出すれば13%のキャッシュバックがもらえる」というものだ。中国では十二分に予想される“購入証明のニセモノ”対策も実施済みだ。

 “対象製品”に限られるため、農村住民が買えば何でも割安になるわけではない。したがって、日本メーカーの製品が割安になってたくさん買ってもらえるわけでももない。

 この記事の冒頭で、中国政府が家電下郷に“本格的に取り組み始め”ていると書いた。家電下郷が政策として開始したのは2007年末からで、2008年の金融危機の対策として定められたものではない。山東省や四川省でテスト運用が先行して開始され、当時の農村でまず必要とされた「カラーテレビ」「冷蔵庫」「携帯電話」が“対象製品”としてリストに挙げられた。本格的に運用されることになって、対象地域が拡大し対象商品でも前述の3点に加え、PCやバイクなどが加えられている。

 家電下郷の公式Webページを見ると、キャンペーンに加わっている販売店舗と対象商品が登録制になっていることが分かる。登録されている製品のPCメーカーでは、レノボファウンダー神舟といった中国企業に加え、Hewlett-Packard、DELLなどの海外メーカー、それに中国人ですら聞いたこともない地域限定メーカーのそれぞれ一部機種が“家電下郷”の対象PCとして認定されている。

 零細な地域限定メーカーが登録されている一方で、登録申請をしたけれど、認定機関の「中国商務部」に認めてもらえなかったPCメーカーもある。中国各地に点在するご当地メーカーが多いが、中にはEee PCで最大手のノートPCメーカーとなったASUSや、中国ではPCメーカーとしても知られているBenQも含まれる。

 認定されたほとんどのPCメーカーが、既存のラインアップの中でも3000元(約4万2000円)前後のバリューモデルを“家電下郷”向けPCとして登録している。ただ、レノボだけは専用モデルをリリースしているようだ。

 せっかく政府が後押ししている「農村への家電普及政策」だが、「供給電圧が不安定なので、PCを買っても使えるのか?」というあたりがそもそも危惧されている。観光地として整備されていない“純度の高い”農村に行ったことのある筆者自身もそう思うし、知り合いの中国人に聞いても同じことをいう。さすがに中国企業のレノボが農村専用モデルとして用意したPCに関しては、電圧がそこそこ不安定でも使える電源を採用したといわれている。

 レノボは以前から奥地の農村に代理店を置いて自社の販売網を広げてきた。零細な地域限定PCメーカーを除けば、農村におけるPC市場をほぼ独占しているレノボにすれば、低所得層向けPCの開発は手なれたものといえる。コストをぎりぎりまで下げるために中国独自RISC CPUを搭載してLinuxを導入したPCをリリースしたことのあるレノボだけあって、今回も家電下郷政策に合わせて、意欲的な専用機種投入したわけだ。

 ただ、それが農村で売れるか否かは別な問題だ。

家電下郷対象PCリスト(写真=左)。レノボの農村専用モデルの1つで、液晶一体型の「C3」(写真=右)

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

最新トピックスPR

過去記事カレンダー