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常時待受の専用PHS内蔵、富士通製PCに世界初の盗難対策ソリューション搭載へ(1/2 ページ)

» 2009年05月07日 19時31分 公開
[岩城俊介,ITmedia]

「常時稼働」するPHSモジュールを内蔵し、PCを遠隔管理

photo セキュリティの意識は大変重要だが、モバイルPCを持ち出せなくなり、現場のビジネスパーソンの業務効率が低下している実情がある。このソリューションにより、この事情を打破できると信じている」富士通 経営執行役パーソナルビジネス本部の五十嵐一浩本部長

 「持ち運ばれないモバイルPCは、何のためにあるのか」──富士通とウィルコム、富士通研究所は5月7日、ウィルコムのPHS網を利用した法人向けノートPCの紛失・盗難対策ソリューションを開発したと発表した。

 同ソリューションはノートPCに常時通信する専用PHSモジュールと専用BIOSを内蔵し、万一の時に遠隔操作でHDD内のデータをすべて消去できるというもの。低消費電力の専用PHS通信モジュールがPCの電源状態に関わらず常時稼働し、PCの電源が入っていない場合も遠隔制御できることを大きな特徴とする。富士通によると、これまで有線LANや無線LAN、3Gデータ通信回線などを用いるセキュリティソリューションは存在したが、PCオフ時も制御でき、HDD内のデータを消去できる盗難対策ソリューションは世界初としている。

 内蔵するウィルコムの専用PHSモジュールはアンテナも内蔵するW-SIMの小型化技術を応用し、mini PCIモジュールサイズと低消費電力特性による長時間の常時待受性能(待機時消費電流は1ミリアンペア)を実現した。常時給電かつ常時待受状態で駆動し、ライトメール形式によるコマンドでPCを遠隔操作する仕組みで、消去指示(コマンド送信)からPC起動、HDDのデータ消去(暗号化HDD鍵を消去)、消去証明リポート返信といった流れで管理する。

 HDDは暗号化されたデータの暗号鍵のみを消去するため、消去が瞬時に完了し、かつ暗号鍵そのものがないので復号化は事実上不可能であるという(このため、発見した時の復旧も不可能)。データ消去以外にPCの操作ロックなども行え、ウィルコムの基地局情報をもとにした位置情報やPCへの最終ログイン発生時刻などを記録し、紛失や盗難発生からデータ消去を実施する間にPCが悪意利用されたか否かのリポートも残せるとしている。


photo ウィルコムと富士通研究所が共同開発した専用モジュールの試作機

 対象は法人向けPCとし、2009年第3四半期(2009年10月以降)のサービスインを予定する。発生コストは2009年5月現在は未定とするが「PCの導入コストは可能な限り現状より増えない額で、ランニングコストも1ユーザー当たり3ケタ台(1000円以内)に抑えたい」(富士通の五十嵐本部長)とし、法人向けPCは年間約10万台を目標にほぼ標準装備とする考えを示す。個人向けPCにはニーズの違いからサービスの提供は予定しないが、SOHOや企業の部署・グループ単位、小規模事業者などにも導入できるようサービス内容は考慮する。まずはグループ内で率先し、富士通グループ社員の業務用PC約10万台も順次同ソリューションを搭載するPCに入れ替える。

 ちなみに専用PHSモジュールは電話番号が入り、TCAが発表する月次の契約数にもカウントされるという。ただ、モジュールは原則としてWindows(などのOS)からは認識されず、通常のPC利用時における一般データ通信は行えない。PC電源オフ時の連続使用時間は「(PCのバッテリー種類や状況によるが)バッテリーが5割残っている状況で、1週間は常時待機できるのが目安」(富士通 パーソナルビジネス本部の足利氏)となり、サービスエリア外やPCのバッテリーが完全になくなった場合は機能しないが「バッテリーが切れても、例えば盗難されたらバッテリーを充電したり、ACアダプタを接続するなど“使われる”機会がある。このタイミングで機能を働かすといった制御も可能」(足利氏)であるようだ。


photophoto PCの電源がオフでも、管理サーバーから制御コマンドを送信するとPCが自動で起動し、HDD内容を無効するといった遠隔操作を可能にする。サービスエリアが広く、安価な低消費電力のモジュールで構築できる理由でウィルコムのPHS網が選ばれた
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