最初に、MSIの「N260GTX Lightinig」が企画された背景を紹介しておこう。型番からも想像がつくように、N260GTX LightinigはGeForce GTX 260を搭載している。発表から現在までほぼ半年がたち、途中、実装するシェーダ数が増えたり製造プロセスがシュリンクされたりとGPUそのものに大きな変更が加えられたが、名称を変えることなく、ハイエンドラインアップのミドルレンジモデルとして存在しつづけている。
G200コアによる高いパフォーマンスを持ちながら、このところ値段がこなれてきているため、自作PCユーザーの間では広く支持されている。最近ではグラフィックスカードベンダーが独自に設計した基板を投入して、品質の高さを競っている。しかし、N260GTX Lightningは、このような「延命化」ともいえる流れにある競合製品を超える、「オリジナル基板とオリジナルクーラーユニット」以外の付加価値をユーザーに提供するグラフィックスカードとして登場した。
N260GTX Lightiningの付加価値がユーザーをどのように楽しませてくれるのかを、パッケージから紹介していきたい。
N260GTX Lightningのパッケージは、MSIが出荷しているほかのGeForce GTX 260搭載モデルと比べて2倍の厚みがある。2段構造になっていて、上の段にはグラフィックスカードの本体と外付けチューニングユニット「Air Force」が、下の段には説明書やディスプレイ出力用の変換アダプタ、ケーブル、ドライバCDなどが収納されている。
N260GTX Lightningのカードサイズは通常のGeForce GTX 260とほぼ同じだ。後部に6ピンPCI Express補助電源コネクタを2つ備える点もそのまま。基板上部には2つのSLI用コネクタを持ち、2スロット厚のクーラーユニットを採用するなど、リファレンスデザインのGeForce GTX 260と共通している。ただし、一般的なGeForce GTX 260搭載グラフィックスカードのディスプレイ出力が、デュアルリンクDVI-Iを2基という構成であるのに対して、N260GTX Lightningでは、デュアルリンクDVI-Iが1基、D-Sub15ピンのアナログRGB出力が1基、そしてHDMIが1基という構成になっている。DVI出力対応でマルチディスプレイ環境を構築したいユーザーは、変換アダプタが必要になるので注意しておきたい。
クーラーユニットにはほかのMSI製品でも使用されているオリジナル設計の「Twin Frozr」を採用している。N260GTX LightningのTwin Frozrは2層構造であり、1段目のヒートシンクはメモリや電源回路などGPU周辺の熱を放出する。2段目は5本の極太ヒートパイプ(MSIでは、この8ミリ径ヒートパイプを“SuperPipe”と呼んでいる)で1段目とは切り離されており、搭載する2つのPWMファンによって冷却される。
MSIのラインアップで同じGeForce GTX 260を搭載した「N260GTX T2D896 V2」もMSIのオリジナル基板を採用している。ノーマル仕様の“T2D896 V2”と特別仕様の“Lightning”を比べて、それぞれの“オリジナル基板”の違いをチェックしてみたい。
まず、基板の形状で両者に若干の違いがある。裏面を見ると分かりやすいが、N260GTX LightningはSLIコネクタの後方上辺が削減されている。また、実装するチップ抵抗の数も多く、シンプルなN260GTX T2D896 V2に対しN260GTX Lightningは基板にギュッと高密度に配置されている。
基板表面では、メモリチップのレイアウトに加えて、電源回路部分の構成が大きく異なっている。N260GTX Lightningに採用されているメモリチップはSamsung「K4J10324QD-HJ1A」で、1チップあたりの容量は1Gビット(128Mバイト)になる。通常の512Mビットと比べて2倍の容量だ。これを14チップ搭載するのでグラフィックスメモリもトータルで1792Mバイトと定格仕様の2倍の容量を実装することになる。
MSIによれば、電源回路は10フェーズPWM構成で、確かに、フェライトコアの左列、および電源部裏面のHi-C Capを数えると、10個の組み合わせが確認できる(基板全体では11個)。Hi-C Cap(高効率ポリマーコンデンサ)は同社の上位マザーボードなどでも用いられており、高い信頼性と高性能を実現する。
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