“農村部限定!家電13%引きキャンペーン”こと「家電下郷」が、政府の主導のもと中国全土で展開されている。日本の家電メーカーやPCメーカーもその動きを注視しているようだが、筆者は、これまで何度となく農村を訪れてきた経験から「家電下郷特需で、日本製のPCや家電が農村で売れると考えるのは甘いのでは?」とこの連載(「家電を買って明るい農村!」政策でPCが売れる?)でも述べている。
家電下郷政策が始まってそれなりの期間が過ぎているが、農村で家電やPCは普及したのだろうか。現地での盛り上がりっぷりはどうなのだろうか。政府の統計やWebページでの評判ではなく、自分で見て事実を把握するべく、筆者は中国の典型的な農村を訪れた。
超大雑把に都市部と農村部に分けられる中国だが、農村部のすべてが“田園広がる牧歌的風景”というわけでもない。それぞれの農村部には中心となる市街地が存在する。市街地には、家電販売店があり、複数の携帯電話販売店があり、そして、少なくとも1軒のPCショップがある。
家電販売店といっても、その形態は地域によって異なる。「国美電器」「蘇寧電器」といった全国規模の家電量販店が進出している農村はさすがに少ない。農村部にある一般的な家電販売店は、個人運営であったり、その地域だけに展開している中小規模の量販店だったり、「百貨大楼」と中国で呼ばれる、地域で唯一の百貨店にある家電売り場だったりする。ただ、規模や形態は異なっていても、すべての家電販売店で「家電下郷」をアピールする赤い横断幕を掲げている。
ちなみに、農村限定の家電下郷だが、これは、「住んでいる場所が農村に限られる」だけで購入する場所は規定していない。そのため、大都市部の家電量販店も家電下郷の対象になっている。大都市に店舗を構えながら家電下郷をアピールしている大規模家電量販店も少なくない。“大都市”といっても、農村部と隣接している大都市も少なくない。そういうところでは、農村に住む人々も気軽に買いにくる。農村部の中核となる市街地はさらにコンパクトで、バイクで5分も走れば一周できる。
筆者も農村の中核市街地に着くとすぐにタクシーに乗り、運転手に「この街にある家電販売店を回って」とお願いしたら5〜10元(100円前後)で市街地にある店舗をあらかた訪れることができた。小さな街なので、現地のタクシー運転手ならどの通りに何があるかに精通している。おかげで、その街にある家電販売店とPCショップはすべてチェックできた。
先ほど、家電下郷によって日本のメーカーが中国市場における売上増を期待していると述べたが、その中には、テレビ本体でなく、液晶テレビやプラズマテレビの部品を製造している日本メーカーも含まれている。彼らは、家電下郷による“薄型テレビ特需”を期待していると聞くが、大都市部にある家電量販店はさておき、それ以外の家電量販店では、冷蔵庫や洗濯機が主役で、中には白物家電しか扱っていない店舗も多数見かけた。
日本のメーカーは失望するかもしれないが、店舗に並んでいる製品のほとんどは中国メーカー製で、なかでも、ハイアールの製品が半数以上を占め、残りも著名中国家電メーカー数社の製品というのが実情だ。テレビを販売している店でも、その多くがブラウン管テレビで薄型テレビはごくわずかしかない。そのほとんどは中国製だ。
中国のPCショップは、レノボをはじめとするメーカー代理店が多い。しかし、それとは別に、ショップブランドPCを提供するPCパーツショップも少なからず存在する。PCパーツショップがある理由は、中国の奥地にある市街地ならどこにでもあるネットカフェの存在だ。ネットカフェに設置されたPCのメンテナンスのために、ネットカフェのある市街地には最低1軒のPCパーツショップが必要になるのだ。ただし、PCパーツショップでは家電下郷の対象となるメーカー製PCを扱っていないので、家電下郷をアピールする横断幕を掲げる店もない。
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