PCの不調の原因はさまざまだ。ウイルスなどに感染して動作が不安定になるということもあれば、正規のソフトウェアであっても「相性」問題で特定のドライバと同時に使用すると落ちるということもある。だが、このような問題が生じたときに原因となっているソフト、ドライバを特定することは簡単ではない。インストールした途端に不具合が出るのならまだ分かりやすいが、「そういえば最近よく落ちるようになった」と、振り返ってみて初めて気づくことも多い。また、関連しそうにないソフトウェアやドライバが実は関係しているということもある。例えば、ギガバイト製の省電力ユーティリティと仮想CDドライブソフトの「相性」が悪いことはよく知られている。
こうした原因調査に重宝するのがツールメニューの下に追加された「SysInspector」だ。SysInspectorはレジストリやスタートアップ、サービスなどのスナップショットを記録し、その差分を表示することができる。そのため、PCが不調になったときに以前とどこが変わったのかを調べることが可能だ。スケジューラに設定して定期的に記録することもできるので、最も面倒な「正常なときを記録しておく」ことは自動化してしまうといいだろう。
ESS4の迷惑メール対策機能は、メールソフトのAPIを利用して実現している。これによって一度判定を行ったメールの再判定や、判定結果の修正(学習)、フォルダへの自動振り分けなど、より高度な操作が可能になっている。ただしその半面、対応メールソフト以外では迷惑メール判定が行われない。セキュリティソフトによっては「非対応メールソフトでも迷惑メールの判定が可能、対応メールソフトであればさらに便利」というものもあるので、乗り換えを考えているユーザーは自分のメールソフトがサポートされているかどうかを確認しよう。
なお、ESS4でサポートされているメールソフトはマイクロソフトの4製品(Microsoft Outlook、Outlook Express、Windowsメール、Windows Live Mail)とMozilla Thunderbirdのみ。日本ではそれなりにユーザーがいると思われるEudoraやShuriken、Becky!、秀丸メールなどは対象外だ。これはESS4が採用している迷惑メール判定エンジン「MailShell」の仕様によるものだということだが、同じエンジンを採用しているMcAfeeとは対応メールソフトが異なる。
ちなみに、非対応メールソフトであってもウイルスチェックは行われるので、その点は心配しなくていい。キヤノンITソリューションズによると「経路上で迷惑メールの判定まで行うと負荷がかかるため、ウイルスチェックと迷惑メール判定は分けている。ESETのポリシーとしてまずはスムーズで万全なウイルスチェックを行うことに重点を置いている」ということだった。
ESS4を試用していて気になったのがヘルプの文言だ。基本的な内容は前バージョンのESS3に似ており、おそらく大部分は同じ原文と思われるが、ESS4では原文が修正された部分のみのアップデートではなく、すべて再翻訳されているようだ。もちろん、それ自体は悪いことではない。しかし全体的に質が下がったような印象を受ける。
例えばセキュリティソフトでは、ウイルスやワーム、トロイの木馬といったマルウェア、ネットワークを経由した攻撃など、すべてを表す言葉「Threat」の訳語として「脅威」を使うことが一般的だ。実際、ESS3のヘルプでは用語集の中に「脅威の種類」という項目があるのだが、ESS4ではこれが「侵入物の種類」に変わっている。そのほかにも、専門用語に疎い翻訳業者が訳したかのような日本語が散見された。
その一方でアプリケーション側の文言に大きな変化はない。そのため、ヘルプとアプリケーションで相違がある箇所も多く見受けられる。例えば「ThreatSense.Net早期警告システム」の詳細設定ダイアログには「不審なファイル」タブがあるが、ヘルプでは「疑わしいファイル」タブと書かれている。これでは単なる「文言のブレ」ではなく、記述の誤りになってしまう。
ヘルプの出来映えがソフトウェアの検出力や動作時の負荷になんら影響しないことは確かだ。しかし、ヘルプはユーザーインタフェースの一角をなすものでもある。特に海外メーカー製ソフトウェアの場合は、日本語翻訳の善し悪しによってローカリゼーションの質が印象づけられやすい。このあたりは是非オンラインアップデートでの対応を望みたいところだ。
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