僧侶も気になる海賊版──バンコクのIT格差を“ヤワラー”で知る山谷剛史の「アジアン・アイティー」(1/2 ページ)

» 2009年07月28日 10時00分 公開
[山谷剛史,ITmedia]

 気楽に気軽に東南アジアを体験できる観光大国、そして、東南アジアやインドを行き来する人や物流のハブとして、日本人や韓国人や中国人といった東洋人と、欧米豪の西洋人、イスラエル、アラブといった中近東の人々が交わるタイ王国。東南アジアでは珍しい第2次世界大戦前からの独立国であるが、繰り返されるクーデターや軍事政権の樹立、市民団体による反政府運動など、従来から安定しない政情に加えて、1997年のアジア通貨危機、そして2008年からの世界的な金融危機などの影響で、富裕層のリゾート旅行も若い世代のバックパッカーも減少して観光業界は打撃を受けているという。

 しかし、それ以上に、輸出に大きく依存しているタイの経済活動も深刻なダメージを受けている。全世界的に景気が後退した2008年第4四半期のGDP速報値は、前年同期比マイナス4.3%とアジア通貨危機以来のマイナス成長を記録している。この影響で、海外企業の駐在員が減少していることが、首都バンコクで数多く存在する外国人向けビジネスに大きな影を落としている。このあたりの事情は中国の上海や広東省と同様だ。

 そのバンコクは、裕福な海外企業駐在員とその恩恵を受けている一部のタイ人富裕層向けのビジネスと、一般庶民のための商売が、見事なまでに懸け離れているという。この記事では、平均月収3万円をいう統計データをそのまま受け取ることができないバンコクのPC販売事情を紹介しよう。

タイの僧侶が選ぶノートPCとは

 バンコクのIT事情をチェックするためにまず訪れておきたいのが、タイで最大の電脳ビル「パンティッププラザ」だ。この、たった1棟のビルがバンコクにおけるIT関連製品の需要を一手に賄っているといっても過言ではない。パンティッププラザで販売されているハードウェア類は、PCやその周辺機器にデジカメ、プリンタが主体で、少ないながらも携帯電話も扱っている。

 数年前はデスクトップPCが主流だったが、バンコクでも2008年から2009年にかけてNetbookが入口近くの目立つコーナーで販売され、2スピンドルのノートPCも多く出荷されるようになった。ショップに聞いてみてもデスクトップPCを購入するのは少数派になっているそうだ。

バンコクの電脳需要を一手に支えているバンティッププラザ(写真=左)。パンティッププラザの上階にある大規模PCショップの「IT CITY」(写真=中央)。パンティッププラザにある別の大型ショップ「DATA IT」ではノートPCを積極的に展開している(写真=右)

 バンコクでも海賊版ソフトが幅を利かせている。そのショップの数は中国以上で「数え切れない」と表現が誇張でないほどだ。しかも、実に堂々と商いをしていたりする。日本人が海賊版ショップの横を通ればうっとうしいほどにアダルトビデオを勧めてくる。2001年から2006年までのタクシン前政権で、パンティッププラザの海賊版ソフトショップは一掃されたが、政権が変わったら元の海賊版天国に戻ってしまった。

パンティッププラザのフードコートでは、地元の人に密着した“普段着”の料理が食べられる(写真=左)。パンティッププラザでは修理屋も多数営業している(写真=中央)。タクシン政権が終わって、パンティッププラザでは海賊版ソフト販売店が堂々と営業するようになった(写真=右)

 2008年から始まった金融危機の影響か、もしくは、同じ2008年11月に起きた市民運動による国際空港閉鎖に代表されるような政情不安の影響か、外国人観光客は以前より少ない。バンコクで見かけた観光客は、数人規模の男性グループだったり、修学旅行の一群だったり、カップルだったりと、タイの若者が中心だった。僧侶が数人単位のグループで買い物しているのも、いつでもどこでも見かけた。タイの僧侶もデジタルガジェットがお気に入りのようだ。

パンティッププラザでノートPCを選ぶタイの僧侶(写真=左)。DELLのノートPCについて質問するタイの僧侶(写真=左)。タイの僧侶も海賊版は気になるようだ(写真=右)

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