キーボードを外した後は、底面とキーボードの下にあるネジを一通り外すことで、パームレスト部と一体化したトップカバーが分離できる。トップカバーを外すと、ボディサイズいっぱいまで広がったマザーボードが現れる仕組みだ。
その内部構造は、正岡氏自身が「過去のVAIOノートに例がないくらい、シンプルな構造」と語るほど、すっきりとまとまっている。ネジの本数も通常のモデルの半分ほどしかないという。
VAIO type Pでは、トップカバーの下にマグネシウム合金製のフレームを挟んで剛性を確保し、マザーボードと各コネクタの基板を複数枚に分けたうえで、通常のリジット基板とフレキシブルケーブルを一体化したプリント基板も採用することで、小型・軽量化をとことん追求していたが、VAIO Wは側面のコネクタやカードスロットも1枚のマザーボードで提供している。トップカバー側に装着されるBluetoothモジュール搭載の基板と合わせて、たった2枚のボードで構成されているのだ。
こうして見比べると、VAIO WはVAIO type Pと比較して、内部設計をシンプルな設計としてコストを抑えているのがよく分かる。
マザーボードは自社で設計した8層タイプで、主要なチップやメモリスロット、コネクタ、カードスロット類はすべて表面に配置されている。2.5インチHDDを搭載する関係で、右側には大きな四角い穴が開けられており、発熱しやすいCPUとIntel 945GSE Expressは左上に位置し、ヒートシンクで放熱して左側面のファンで排気する構造だ。右上にはハーフサイズの無線LANモジュールが装着されたMini PCI Expressスロットを備えている。
Netbookの中にはファンレス設計のものもあるが、VAIO Wはファン付きのヒートシンクを搭載している。その理由について、木村氏は「Atom Z採用のVAIO type Pはファンレスだが、それより発熱量の大きいAtom N採用のVAIO Wではファンがあったほうが無難。ファンの搭載により、本体が熱くなりにくいなどのメリットもある」と語る。
VAIO W最大のウリともいえるのが、新採用のワイド液晶ディスプレイだ。サイズは10.1型ワイドとNetbook標準だが、1366×768ドットの高解像度表示が行える。Netbookで一般的な1024×600ドットや1024×576ドットと比較して、情報一覧性は非常に高い。
武上氏はVAIO Wで高解像度の液晶ディスプレイを採用した理由について、「開発時の液晶パネル選定でいくつか画面解像度の候補があったが、社内で縦解像度が600ドットでは狭いという意見が多かった。VAIO Wのユーザーシナリオであるインターネットコンテンツの見やすさを追求し、Netbookではいち早く1366×768ドットという高解像度を実現した」と説明する。
Netbookということで想像はしていたが、VAIO Wの内部構造はやはりシンプルさを追求したものだった。実際に分解した様子を比べてみると、細部に至るまで内部設計を作り込んだVAIO type Pとは、やはりコンセプトが違う製品ということが一目で分かる。
VAIO type PがNetbookでは実現できないワンランク上のモバイルPCを提案しているのに対し、VAIO Wはあくまでコストパフォーマンス重視のNetbookという範囲内で、デザインやディスプレイにこだわることにより、VAIOらしい付加価値を提供しているのだ。
こう書くと、VAIO Wを単なる廉価版VAIOノートのように思ってしまうかもしれないが、以前掲載したレビュー記事でも触れた通り、安価ながらデザイン性と使い勝手は高いレベルにある。もちろん、内部構造をシンプルにしたからといって、ボディがたわんだり、キーボードがぐらつくようなことはない。開発陣が語るように、確かにNetbookでも“VAIOクオリティ”が維持できていると感じられるのだ。これからNetbookを購入したいと考えているユーザーは、まずは店頭で一度実機に触れてみることを強くおすすめしたい。
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