ここからは、スペックアップしたVAIO Wの性能をチェックしていく。用意した機材は標準仕様のVAIO W(メモリ1Gバイト、HDD)、メモリのみ2GバイトにしたVAIO W、そして2GバイトメモリとSSDを搭載したVAIO Wの計3台だ。
まずは総合ベンチマークテストのPCMark05と、CrystalMark 2004R3(ひよひよ氏作)を実行し、システム全体のパフォーマンスをチェックしたところ、SSD搭載の構成とHDD搭載の構成では非常に大きな差が開いた。PCMark05のHDDスコアは約5.4倍もSSDのほうが速く、総合スコアでも約1.3倍の成績をたたき出した。CrystalMark 2004R3を見ても、HDDスコアで約2.5倍、総合スコアで約1.4倍もSSD搭載の構成が高速という結果になった。
一方、メモリを2Gバイトに増設しただけの構成では、予想通り、メモリのスコアが微増した程度で、ほとんどのテスト結果に違いが見られなかった。高速化を追求するならば、やはりデータストレージの換装が効果的といえる。
データストレージの性能差をより詳しく調べるため、PCMark05のHDD関連テストと「CrystalDiskMark 2.2」(ひよひよ氏作)も実行したところ、上記のテスト結果と同様、すべての項目でSSDがHDDを圧倒した。CrystalDiskMark 2.2のシーケンシャルリード/ライト、ランダムリード/ライトのすべてで、SSDがHDDを上回っている。特にランダムライトのスコアが2.5インチSSDにしては高く、パフォーマンスに定評があるX25-Mを搭載したことが生かされている。
ただし、SSD搭載のスコアは手放しで喜べるわけでもない。VAIO WをはじめとするNetbookのチップセットはIntel 945GSE Expressで、サウスブリッジの役割を担うICH7-MはSerial ATAインタフェースが3Gビット/秒の伝送に対応しておらず、旧世代の1.5Gビット/秒にとどまる。こうした事情もあってVAIO Wでは主にICH7-Mがボトルネックとなり、高速なSSDのパフォーマンスがフルに発揮できず、特にシーケンシャルリードの値が伸びていない。本来34ナノ版のX25-Mであれば、シーケンシャルリードで250Mバイト/秒以上のスコアを出してもおかしくないはずなのだ。
ちなみに今回入手したVAIO W(ソニーによれば、製品版と同等の試作機とのこと)は、BIOSにAHCIモードの設定がなく、OSがWindows XPということもあり、デバイスマネージャを見ても標準搭載のSerial ATA HDDがIDEモードで接続されていた。したがって、換装後のSSDでもAHCIモードを適用できず、IDEモードでの接続となっている。この辺りもパフォーマンスに多少影響していると予想される。
Windowsの各種動作にかかる時間も比較してみよう。今回はデフォルトの状態で、Windows XPの起動、休止状態への移行と復帰、シャットダウンの各動作にかかる時間を計測した。起動時間は電源ボタンを押してから「ようこそ」画面が出るまでの時間と、タスクトレイにすべてのアイコンが並びポインターの砂時計表示が消えるまでの時間の2段階で計測している。
これらの時間はバラツキがあるので、各計測は5回以上行い、その平均値を採用した。購入直後に近い状態でのテストなので、Windows XPのアップデートやソフトの追加などによって、各動作にかかる時間は大きく変わる点は注意してほしい。
結果はやはりSSD搭載の構成が全体的に高速だった。セットアップ直後の素に近い状態というのもあるが、起動時間は43秒程度、シャットダウンはわずか13秒程度しかかからず、HDD搭載の構成とは明確な差がある。休止状態への移行と復帰もSSDの恩恵で高速だ。
グラフには示していないが、SSD搭載の構成ではウィンドウの展開やアプリケーションの起動など、Windowsの動作が全体的に高速化されるのが体感できた。そもそもVAIO Wは標準構成でもWindowsの基本動作がストレスなく行えるのだが、SSD導入後はワンランク上の快適さが手に入る。
なお、今回VAIO Wに34ナノ版のX25-Mを搭載したところ、スタンバイから復帰できず、強制的に再起動してしまう問題が発生した。テスト結果にスタンバイの値を掲載していないのはそのためだ。34ナノ版のX25-MはBIOSでHDDパスワードを設定すると不具合が発生する問題により、現在は出荷が一時停止されている。後日公開予定のファームウェアアップデート後に再出荷される予定だが、今回生じたスタンバイから復帰できないトラブルの原因が34ナノ版のX25-Mにあるのか、あるいは試作機であるVAIO W側にあるのかまでは確認できなかった。
VAIO WやX25-Mに限らず、ノートPCのHDDをSSDに換装すると、スタンバイや休止状態など電源管理関連で不具合が発生するケースがたまにある点は覚えておきたい。
構成の違いによって、バッテリー駆動時間に変化があるのかも確認しておこう。バッテリー駆動時間の計測にはBBench 1.01(海人氏作)を用いた。BBenchの設定は、10秒ごとにキーボード入力、60秒ごとに無線LAN(IEEE802.11g)によるインターネット巡回(10サイト)を行うというものだ。
電源プランは「VAIO標準設定」、ワイヤレス通信機能はオン、ディスプレイの輝度は最大、音量は半分(ヘッドフォン装着)といった状態で、バッテリー満充電から残量がなくなり自動で休止状態に移行するまでの時間を計測した。
テスト結果は、SSD搭載の構成で数分だけ駆動時間が延びた。メモリ2GバイトとSSD搭載の構成で2時間50分、標準構成で2時間43分、メモリ2Gバイトの構成で2時間38分という結果だ。わずかな違いではあるが、SSDによる省電力化が確認できた。
次のページでは、ボディの発熱や動作音を検証する。
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