TS-639Proで構成可能なRAIDの種類は、単独ディスク、RAID 0/1/5/6、JBODとなっており、基本的にはTS-409Proと同じだ。もちろん、搭載可能台数が増えた分、6台のHDDによるRAID 5や、RAID 6でホットスペアを使用することもできる。ただし、RAID 5+0のような「6台ならでは」の構成はできない。そのため、どのようなRAID構成で6台のHDDを取り回していくかは、今まで以上に工夫のしがいがあるところだ。
とはいえ、RAID 5で6台構成というのは少し勇気のいる選択だろう。そもそもRAID 5は構成ドライブのうちの1台がクラッシュしてもデータが保持される仕組みだ。同時に2台のHDDがクラッシュする可能性は低いと思われがちだが、実際には非常に高い確率で発生する。正確に言えば1台クラッシュした後、その復旧時にもう1台クラッシュしてしまうことが多い。故障したHDDを新しいものと交換し、リビルドを行えばディスク全域の激しいアクセスが長時間続くことになる。そのあいだに通常の利用を行えばディスクシークもさらに激しさを増す。リビルド作業は耐久試験にも似たハードなタスクなのだ。
さらに、RAID 5が負荷を均等に分散する仕組みであることや、パフォーマンスや効率の向上のために同一ベンダーのHDDを同時期に購入するケースが多いことから、同じような個体を同じような環境で同じように使い続ける場合は多く、クラッシュする時期が重なってもおかしくはない。むしろ、クラッシュまでいかなくともその寸前である可能性は高いということだ。
しかし、同時に2台のクラッシュに耐えられるRAID 6を4台のHDDで構成すると、利用効率は50%しかなく、以前のTS-409Proでは選択しづらかった。6台でRAID 6を構成すれば利用効率は67%、つまり、3台でRAID 5を構成するときと同程度になる。これは冗長性と利用効率という点からもTS-639にとってはバランスのとれた構成だろう。
なお、RAIDの容量拡張に対応しているのはRAID 1/5/6であることもTS-409と変わりない。新規にHDDを購入する場合、現時点では容量単価や総コストを考慮すると1テラバイトのドライブを選択することが一般的かもしれないが、将来的な拡張が視野に入っている場合は、その台数と構成も考えどころだ。TS-639ProでのRAID容量拡張はリビルドを数回繰り返すものであり、その処理はドライブにかなりの負荷をかけてしまう。
例えば、500Gバイト4本で構築したRAID5構成(利用可能容量1.5Tバイト)を1Tバイト4本(利用可能容量3Tバイト)に置き換える場合、
の計4回のリビルドが必要だ。場合によっては容量の異なるドライブで構成し、1台ごとに順次交換しながら容量を拡大していくという選択肢もあるだろう。なお、容量拡大ではなくディスク追加をサポートしているのはRAID 5のみであり、RAID 6ではサポートされていないので注意してほしい。
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