VAIO史上、最薄最軽量モバイルノート「VAIO X」を徹底検証する(後編)3台のXを横並びで比較(5/5 ページ)

» 2009年10月12日 17時45分 公開
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特別に作った薄型軽量ファンの動作音は?

手前がVAIO Xの冷却ファン、奥が「VAIO T」の冷却ファン。VAIO Xの冷却ファンは極薄に作られている

 VAIO Xは内部に空冷用のスペースがほとんどない薄型軽量ボディを効果的に放熱するため、特別に作った薄型軽量ファンを内蔵している。ここでは、その動作音も調べてみよう。VAIO Xをデスクに置き、一定の距離から騒音計で騒音レベルを計測した。騒音計のマイクは、使用時におけるユーザーの耳の位置を想定し、ボディ中央から約30センチ離し、設置面から約50センチの高さに固定している。室温は約25〜26度、環境騒音は約28デシベル(A)となっており、周囲の雑音がほとんど聞こえない静かな部屋でテストした。

 騒音レベルの計測条件は発熱のテストと変わらない。VAIOの設定ではファン制御を3段階に調節できるが、デフォルトの「バランス」(3段階の中間)とした。Windows 7の起動から30分間アイドル状態で放置した場合と、システムに高い負荷がかかるPCMark05のCPUテストを30分間実行し続けた状態の2パターンで計測している。

動作時の騒音レベル

 計測結果は、左のグラフに示した通りだ。Atom Z540(1.86GHz)と64GバイトUltra ATA SSD搭載の構成、Atom Z540(1.86GHz)と128GバイトSerial ATA SSD搭載の構成はアイドル時にファンが一度も回転せず、環境騒音の28デシベルから騒音レベルが上がらなかった。一方、Atom Z550(2.0GHz)と256GバイトSerial ATA SSD搭載のハイエンドな構成では、アイドル時でもファンが低速回転することが多く、騒音レベルが少し上がっている。

 もっとも、ファンは常時回転せず、システムの負荷やボディの発熱に応じて、回転したり止まったりしていた。VAIO Xは駆動部のないSSDを全面的に採用していることもあり、ファンが回転していなければ、動画音はほぼ無音だ。Atom Z550(2.0GHz)と256GバイトSerial ATA SSD搭載の構成はファンが回転しやすいため、前ページで取り上げた発熱テストでは部分的にAtom Z540(1.86GHz)と128GバイトSerial ATA SSD搭載の構成より低温になっている。

 システムに高い負荷をかけた状態では、3台ともファンが高速回転し続けた。3台のうち動作音が最も大きかったAtom Z550(2.0GHz)と256GバイトSerial ATA SSD搭載の構成では、ファンの風切り音にブーンという小さな異音が混じることもあったが、これは試作機ゆえの個体差かもしれない。エアコンや家電が動作している室内では、VAIO X程度の動作音はかき消されてしまうが、静粛な環境でファンが高速回転すると、ファンの存在は確かに感じる。

あえてAtom Zを採用して、手に入れたものは非常に大きい

 2回に渡ってVAIO Xを検証してきたが、これまたVAIO Pに負けず劣らず非常に“尖った”仕様のモバイルノートPCに仕上がっている。製品を選ぶうえで、メリットとデメリットをよく理解する必要があるだろう。

 最も大きなメリットは、何といっても非常に優秀な携帯性だ。この点は実に満足度が高く、薄さ、軽さ、スタミナがこれほどハイレベルに融合したモバイルノートPCは他に類を見ない。薄い割に手に持つと、剛性がしっかりと保たれているのが分かるのも好印象だ。ボディの外装も美しく、ローズゴールドのVAIOロゴをはじめ、デザインにもプレミアム感があり、所有欲を満たしてくれるだろう。

 もう1つ優れているのは、薄型軽量ボディと使い勝手の両立だ。1366×768ドット表示の11.1型ワイド液晶ディスプレイは広色域かつ高輝度で発色がよく、ハーフグレア処理により見栄えのよさと映り込みの少なさも兼ね備えている。その表示品質は、Netbookと一線を画すどころか、数ある高額なCore 2 Duo搭載モバイルノートPCの中で見てもトップクラスだ。キーボードはストロークこそ浅いものの、主要キーで約17ミリと十分なキーピッチがあり、キーレイアウトも自然なので、長文の入力にも耐えうる。この点は、同じAtom Z搭載のVAIO Pより優れており、VAIO Pユーザーにも訴求できる部分になるだろう。

 一方、デメリットとなるのは、薄型軽量を実現するために採用したAtom ZとIntel SCH US15Wチップセットによるパフォーマンス不足だ。そもそもがMID/UMPC向けに作られたプラットフォームなので、この部分で妥協が求められるのは否めない。

 とはいえ、プリインストールOSがVistaより軽いWindows 7に移行したことが幸いし、OSの基本動作は十分実用できるレベルとなった。ハイパフォーマンスなモバイルノートPCを求めるユーザーには向かないが、Webブラウズやメール、出先での簡単な文書作成やプレゼンといった程度の作業であれば、“これなら使ってみたい”と思わせてくれるパフォーマンスがある。また、法人向けの代行インストールサービスでは、OSにWindows XP Professional(32ビット版Windows 7 Professionalダウングレード)を選択できることに、食指が動くユーザーもいるだろう(WiMAXは選択不可になる)。

 以上のメリットとデメリットをどう考えるかだが、パフォーマンスで優位に立つCLUVを含めたCore 2 DuoやデュアルコアCeleron搭載のモバイルノートPCでは、VAIO Xのウリである薄型軽量、ロングバッテリーライフ、使いやすい画面サイズとキーボードといった要素をすべて満たすことは不可能だろう。逆に、VAIO Xはパフォーマンスを少し妥協するだけで、そのほかの要素を満たすことができるのは非常に大きく、ここまで極限の作り込みがなされていれば、Atom Zの採用にも納得がいくというものだ。

 これまで「パフォーマンスはそこそこでいいから、もっと薄くて軽く、長時間のバッテリー駆動が行える実用的なモバイルノートPCが欲しい」と思っていたユーザーや、そうした願いを持ちながら納得できない重さのモバイルノートPCを持ち歩くしかなかったユーザーにとっては、VAIO Xがまさにジャストフィットするだろう。万人におすすめできるマシンではないが、こうした層にとってはまさに待望の1台であることは間違いない。

 価格は店頭向けの標準仕様モデルで11万円前後から、直販のVAIOオーナーメードモデルで8万9800円からとなっており、ボディの材質やVAIO X用に新たに作られたパーツ群、それらを組み合わせた細部に至るまでのこだわりまで考慮すると、かなり安価といえる。

 最後にVAIO Xの魅力は、実物に触れてみないことには十分伝わらないと思う。その薄さと軽さ、Windows 7の使い心地はぜひ店頭で体感して、それをバッグに入れて携帯しているところまで想像してほしい。そうすれば、VAIO Xが実現する“持ち運びの負担が極端に減った”新しいモバイルノートPCの世界の一端に触れられるはずだ。

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