中国独自規格「CBHD」でHD DVDが復活する……のか?山谷剛史の「アジアン・アイティー」(1/3 ページ)

» 2009年10月23日 16時40分 公開
[山谷剛史,ITmedia]

春秋の時代から変わらない覇権を争う中国気質

図らずも中国独自規格の次世代光ディスクプレーヤーがそろってしまった

 中国が開発した“青色レーザー的”次世代光ディスク規格に「CBHD」(China Blue High-definition Disc)というのがある。これは、中国向けのHD DVD(CH-DVD)が東芝のHD DVD撤退宣言とともにCBHDと改名(2008年3月)したものだ。そのため、CBHDのスペックは、1層15Gバイト、2層30Gバイトの容量(ただし、12センチディスクの場合)をはじめとしてHD DVDに準じている。ただ、中国独自コーデック「AVS」(Audio Video Coding Standard)をサポート対象に追加し、 著作権保護規格では「AACS」のほかに「Media Mark」や「DKAA」を採用するなど、中国独自色を強めると同時に、海賊版防止を強化している。

 過去に「EVD」なる中国で開発された赤色レーザーの次世代光ディスク規格が、同じように中国で次世代光ディスク規格の標準を目指した「HVD」「HDV」と足を引っ張りあいながら、打倒黒船(=Blu-ray Disc)を叫んだように、CBHDもまた「これからは赤色レーザーではなく青色レーザーの時代!」と、同じ中国生まれのEVD、HVD、HDVを批判しつつ、EVDからは「CBHDはEVDの技術を盗んでいる!」と批判されつつ、「舶来のBlu-ray Discは高い。国産のCBHDは安い。だから強みがある!」とBlu-ray Discを攻撃している。

 こういう、不毛ながらも激しい“ドロドロ”な戦いを繰り広げるCBHDについて、中国のメディアは積極的に報道していない。これは、さんざん取り上げて応援しながら、結局失敗してしまったEVDの苦い教訓の影響と思われる(筆者がEVDプレーヤーを購入したときのいきさつは、迷走する“EVD”を試しに購入してみた(前編)迷走する“EVD”を試しに購入してみた(後編)を参照のこと)。

一族で中秋節を祝い、国慶節は旅行で楽しむ

 2009年の日本では、5月の大型連休のほかに、9月末に「シルバーウィーク」などと呼ばれた秋の連休で盛り上がったと聞く。中国で“大型連休”というと、旧正月の「春節」と10月1日から始まる国慶節だ。旧正月の春節は中国の流通関係者にとって大きな商戦シーズンで、筆者もEVDや白物家電、そして、2009年はNebookを購入した(典型的な春節お買い物事情は、新禧新禧!中国の初売りで白物家電“+α”を入手せよで紹介している)。そして、秋の大型連休となる国慶節も春節に次ぐ一大商戦期なのだ。

 ただ、風習的におめでたい春節とは違い、国家的行事的にめでたいという理由だけで中国人民は散財しない。だから、家電量販店や電脳街、デパート、ショッピングセンターなどは、工夫を凝らしたセールを企画することで人民の物欲を刺激し、その努力が国家的な消費行動をうながしている。

 2009年は中華人民共和国建国60周年という節目の年であるのに加えて、2008年から法定休日になった中秋節とのコンボで8連休となる。国家行事的な国慶節と違い、中秋節は春節と並ぶ、風習的におめでたい3連休だ(日本でいうと春節が年末年始の休み、中秋節は盆休みのような感覚になる)。お得な“お土産”がきっと盛りだくさんに違いないっ!と信じ、この一大商戦期を狙ってさりげなく登場したCBHDを購入すべく、「蘇寧電器」(SUNING)に向かった。蘇寧電器は2009年にラオックスを買収したことで、日本でも知られるようになった大手中国家電量販チェーンだ。

 蘇寧電器も、そして、ライバルの国美電器(GOME)も、国慶節の期間中は、大きなディスプレイでキャンペーンをアピールする。2009年の国慶節では、一部の商品が特別価格で販売されていたほか、「購入総額が○○元を超えたら調理家電や割引券をプレゼント」といったキャンペーンを行っていた。筆者が買い物に行ったのは、8連休の後半にあたる日の昼間だったが、中国の商戦期にしては客が少なすぎる。客よりも店員(その正体は、新禧新禧!中国の初売りで白物家電“+α”を入手せよでも説明したように、メーカーから派遣された販売員だ)が明らかに多い。

 知り合いの中国人に「なんで、こんなに客がいないのか」と尋ねると、「中秋節には親戚一同が集まる習慣があって動くことができないから、みんな、中秋節が終わる8連休の後半に旅行に出ちゃうのさ」と説明してくれた。2009年の国慶節商戦期は、中秋節とつながったことが、かえってマイナス要因となったようだ。

中華人民共和国建国60周年という節目の年で一大キャンペーンを行う「蘇寧電器」(写真=左)と、負けじと、総力キャンペーンを行う「国美電器」(写真=右)

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